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■大場(主人公):朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジ打ち。若いころから読書趣味。たまにおばの家で晩酌。「私だって恋愛のひとつやふたつあります」その上で「足りないんですよね、私の気持ちの大きさが」。高梨との不完全燃焼な恋を塗り替えるような出会いはなくて、その未練から高梨の暮らす街(自身の地元)で働き続ける。自転車通勤の大場と、バス通勤の高梨。追い越したり追い抜いたり、同じ時を生きているのにすれ違う2人のメタファー。牛乳配達が生きがい=高梨との唯一の接点。他人にとっては地味な生活、些細なこと。でも自分にとっては生きる意味。冒頭の作文「私はこの街が大好き」の「街」とは、大場にとって高梨への想い(感情を置き去りにしたまま生き続けた時間)のことなんじゃないかな。最後に街を一望して笑顔の大場が見ていたものは、この街で生まれ完結した自分の恋(自分の人生が、嘘ではなかったという全体像)の全容なのではないか。知られてはならないけれど、知っていてほしい。そして相手が自分をどう思っているのか、知りたい。その押し込めた夢が、最後に成就した。
■高梨:「若い頃にさ、絶対平凡に生きてやるって決めたんだよ。必死になってそうしてきたんだ。邪魔なんだあの人」妻(容子)から大場への想いについて指摘された時の台詞。自身は公務員、美しい妻と裕福な家庭を作った。父と大場母の不倫中の事故死により、感情を封印(感情のままに行動すると破滅するという経験を学習)。本心(大場を好きなまま)に蓋をして社会規範に忠実に生き、自身の役割を全うした。妻の死後、大場が訪ねてきた時も、その仮面を死守しようとしたが、嘘の理由(水泳で溺れかけたとき笑われた)を言って大場に背を向けられたとき、二度と会えなく(解り合う機会を損失)なる恐怖が勝り、剥き出しの本心で大場に迫った。
■容子:高梨の妻。病気で寝たきり。何不自由ない人生の中で、違和感をひとつだけ抱いてきた。誠実に尽くしてくれるが、常に夫の心はここにあらず。一方で、毎朝の牛乳が届くときの、夫の僅かな動揺を静かに観察していた。ヘルパーさんの言葉「2人は同級生」で点と点が繋がる感覚を得た。一口飲んで流し捨てる牛乳の、注文を続ける理由。この街で暮らし続ける本当の理由。夫の心の中に自分が存在しなかったこと、自分の存在が夫の人生の歯車(パーツ)に過ぎなかったことを受け止めた上で、大場と夫の双方に「自分の死後、出会い直すところから始めてみては」と提案する強さ。容子の夢は「夫の幸せ」で、夫の幸せのキーは大場だということ。
■おば:大場の親戚兼友人。晩酌しガールズトーク。「2人とも長生きしてね。生きてると色んなことが分かってきて、楽しいから」と言うけど、泣いている。おじの認知症発症により、図らずともおじの過去や本心を目の当たりにしたこと、変わらずには生きていけないこと、いつかお互いに死ぬこと。生きるということは、それらと直面することだと思った。
■おじ:大場の親戚。元英文学者。今は引退して認知症。時の感覚がなく、精神は過去に逆行している。たびたび妻(おば)を見失い、街を徘徊。カレー少年とは彼のこと。
■大場母:大場17歳時、高梨父と不倫関係。デート中、交通事故で死亡。
■大場父:死亡