いつか読書する日

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

ひとりの男性を30年以上にわたって思い続ける女性の恋を描いたラブストーリー。朝は牛乳配達、昼はスーパーで働く50歳の独身女性・大葉美奈子。毎夜の読書を楽しみに、単調ながらも穏やかな毎日を過ごしている。一方、同じ街の市役所に勤める高梨槐多は、末期がんで余命わずかな妻・容子を自宅で看病している。実は美奈子と高梨は高校時代に交際していたが、ある事情から疎遠になったのだった。それから30年、ふたりは互いへの思いをずっと胸の奥に閉じ込めてきたが、ふとしたことで容子がその事実を知ってしまう。主人公・美奈子を田中裕子、高梨を岸部一徳、高梨の妻・容子を仁科亜季子がそれぞれ好演。監督は「独立少年合唱団」の緒方明。

2004年製作/127分/日本
配給:スローラーナー
劇場公開日:2005年6月11日

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映画レビュー

5.0美しさと不思議な魅力を感じる、主人公と映画。

2025年6月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

幸せ

驚く

癒される

大場美奈子(田中裕子)は、朝から身体を動かし、時に階段を駆け上がり、瓶入り牛乳の配達をする。
牛乳配達の仕事は気に入っている様子。
その後、自転車で次の仕事場まで移動。
職場はスーパーで、レジを担当している。

観ていて思い出したのだけれど、公開当時の約20年前に、観たいと思いながら観ていない作品だった。
あれから20年、環境が変わり、年齢が主人公に近くなった今、初めて観た。
感想というか、20年前の自分より、今の自分の方が、この映画を楽しめたと思う。

田中裕子、岸辺一徳、仁科亜季子、他の方々も素晴らしく、懐かしさも感じた。

映像や表現が好きな感じで、話の展開に色々と驚くけれども、幾つもの印象的な場面が記憶に残る。

誰にどう思われようと、自分がしたいと思うことを、したい様にして、生きて行けたら幸せだと思う。

ふと、題名の「いつか読書する日」は、どういう理由でつけられたのかと思う。
主人公の大場美奈子は、本が好きで家の本棚には沢山の本が並べられ、いつでも読むことが出来るのに、いつかとはどうしてだろう。
それと、主人公がスーパーの同僚に、クタクタになるほど動いて、布団に入れば、何も考えずに寝られると言っていたが、そういった理由で寝てしまうから、いつかなのだろうか。

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naomi

3.5だからね 奥さんとはできるだけ長く一緒にいたいんですよ

2025年6月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

オリジナル作品ですが、もし原作かあったなら短編だったでしょう
内容は薄いんですが、しみじみくる話ですね
日本的な情景に溶け込む人を観る映画です
だって、一言で済んでしまう話ですから

だから時間が余るので、ボケ老人の話やらを盛らないといけなくなる

ただ、バッドエンドにする理由はなんでかなあ?
観客を悲しませて、観たあと、何を得ればいいんだろう
そりゃあ、話としては劇的な方が面白いんだろうけれど・・・
人生かけての忍ぶ恋ですよ
幸せになって欲しいじゃないですか
それを共有してこそ、観てよかったなあと思うんですよ
あえて逆にして涙を流させたいんかな
愛が無い作品だわ

現実は・・・
おわかりのように、みんな、いつか死ぬんですよ
この世は泡沫のようなものですのに
だからね
奥さんとはできるだけ長く一緒にいたいんですよ
向こうはそう思ってないだろうけれど
永遠の片想い

20年前の作品なので、亡くなった左右田一平さんが懐かしかった
江口のりこが出ていてびっくり
このテの薄い顔は年齢がわかりにくい
今とぜんぜん変わりませんねえ

最後に
ジュリーの嫁さんやのに、恋人がサリーって(笑)
まあ、沢田研二に公務員は似合わんか

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nakaji

5.0今は叶えられない望みでも・・

2025年5月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

後回しにしている
私の人生の大きな望みについて、
今は叶えられない望みでも
それが《いつの日かのための》支えになってくれている事がある。

認知症の介護とか、がんの看護とか、児童保護司とか、
そして、きょう一日を精一杯生きるための、日銭を稼ぐパートとか・・
優先すべき事柄の山に私たちの日常は埋もれている。
どれが本当の自分の夢であったのか、埋もれて分からなくなっている。

・ ・

「なぜ働いていると本がよめなくなるのか」三宅香帆著
この本は実にヒットをして、“読めない本についての本”を世のサラリーマンたちが競って購入する変わった現象が起こった。そのこと自体が、ちょっとした皮肉でもあるのだけれど。そして

「『なぜ働いていると本がよめなくなるのか』を、なぜ働いていると読めなくなるのか」と
延々と三面鏡のようにボヤいた友人がいた。

田中裕子・・
いつかは夢を叶えたいとぼんやりと思っていて
それが叶わずに、
きょうも牛乳配達やレジ打ちをやっている人たちって、田中裕子ならずとも、
(それがモデルケースとしては表には出ておらずとも)、
あの彼女の姿は我々人間の生き様の、生ナマの象徴なのではないだろうか。
すなわち

自転車を漕いで牛乳を配りーの、文字通りの“自転車操業”やりーの毎日であるならば
運転しながらの読書とかもちろん無理なのだし、その他にも両立はしない背負っている秘めた想いなど、その実現は、今は、諦めるしかないと知っている。
それは土台が無理だからだ。

相当のインテリの知人がいるのだが、一時期、彼は土方仕事の日雇い労働をやっていた。そして自身に起こった変化を興味深く僕に分析・解説してくれた、
「人はあそこまで疲弊すればスポーツ新聞がやっとやっとで、活字生活からは離れてしまうものだよ」。
彼がどんな見事な書庫を有していてもである。

「タコが言うのよ」
「恋は遠い日の花火ではない」
お酒のCMでは、ほろ酔いで目を奪った田中裕子さん。
「天城越え」では着物と美素肌。
40年前のYouTubeが未だにこれだけもてはやされていて、絶大なる女優の魅力は不動だ。

急転直下のラスト、

今こそが夢を叶える時だと、点滴スタンドを押して、冷たい夜明けの玄関を、裸足で出て行った
仁科亜季子の笑顔が
貴い。

今こそが夢を叶える時だと、
泳げないのに泳いでみた男槐多の快挙が美しい。

顔を、その存在を見せずにここまで抑制して、
坂道を登る足音と、吐息と、ガラス瓶の音だけで行き来したひとりの女に手渡された奇跡のメモ。

田舎町の本屋の、棚の前で出会った高校生男女の
ついに永年の希望を叶えた物語。

「人生を全うした」。
「したかった事をぜんぶした」。
槐多と美奈子と容子の
メモと 作文と 小説の、勝利の物語だ。

・・・・・・・・・・・・・・

[追記]

◆渡辺美佐子がナレーションを語っていたが、彼女が劇中で書いていた「あの小説」が
この五十女=大葉美奈子の実写化ドラマの台本になっていたのかも知れないと気付くと
「自分の本」をば私たちは自分で読みながら、今日も、この日を生きていたのだなぁと、想いが及んでゆくのだ。
不思議な感覚だ。

◆みんな死んでしまって、ぽつねんと部屋に戻った美奈子と共に、鑑賞者の我々も彼女の部屋に居るようなエンディング。
彼女の生の軌跡である愛蔵本を眺め、ひとりの女の歴史の頁をめくって見せてくれるような、静かなカットだ。
画面をPAUSEして、その書棚の一冊一冊の背表紙を辿るのも
鑑賞の最後の作業として、佳い時を持てた。

◆本作、今回は配信で鑑賞したのだが、合間に (いつもはとっても邪魔なのだが)、挟まれる広告には、ティファニー・ハードウェアのコマーシャルが流れていた。
いまをときめく「アノーラ」=マイキー・マディソンだ。彼女が素顔で登場してくれたのは、期せずしてのボーナス。
本作と、そしてあのアノーラと。
この女たちの藻掻きのドラマが、相乗作用していて面白かった所以。
それは
愛とか、憧れとか、その気持ちの置きどころとか、想いの量とか。

解説やメイキングも見てみたいのでDVDも借りてみた。
以下、

【追記:DVD鑑賞 2025.5.25.】
・しみったれていない美奈子のコート。
・池辺晋一郎の音楽が、この映画は悲劇ではないのだと告げる。
・原作の小説なしに!ここまでの優れた原案と脚本を仕上げた緒方監督と青木研次氏の驚くべき力。

誰にこの映画を薦めようかと思い巡らす。

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きりん

4.0う~ん・・・これもまたコメントしにくい作品である。

2025年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

何とも言えないじんわりじんわり田中裕子と言う女優が染みてくる映画。そうこれも田中裕子なのである。世の中には女優の美しさを際立たせる映画は山ほどあるが、女優のきらめきを隠そう隠そうとする映画と言った方がよいだろうか・・・それでも光漏れてくる輝きは憧れや惹かれとは異なり、まさに見るものが浴びるかのような形で思い知らされる。おそらく脚本家の眼差しがその作為の根底だからなのだろう。今回も当てはまる感情対象アイコン無し。

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mark108hello