いつか読書する日

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劇場公開日:

解説

ひとりの男性を30年以上にわたって思い続ける女性の恋を描いたラブストーリー。朝は牛乳配達、昼はスーパーで働く50歳の独身女性・大葉美奈子。毎夜の読書を楽しみに、単調ながらも穏やかな毎日を過ごしている。一方、同じ街の市役所に勤める高梨槐多は、末期がんで余命わずかな妻・容子を自宅で看病している。実は美奈子と高梨は高校時代に交際していたが、ある事情から疎遠になったのだった。それから30年、ふたりは互いへの思いをずっと胸の奥に閉じ込めてきたが、ふとしたことで容子がその事実を知ってしまう。主人公・美奈子を田中裕子、高梨を岸部一徳、高梨の妻・容子を仁科亜季子がそれぞれ好演。監督は「独立少年合唱団」の緒方明。

2004年製作/127分/日本
配給:スローラーナー
劇場公開日:2005年6月11日

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映画レビュー

4.5必ず訪れる人生のタイミング

2024年7月21日
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鑑賞方法:VOD

2005年の作品
俳優陣が皆若い。
「いつか読書する日」
このタイトルにはいったいどんな意味があるのだろう?
物語の最後に皆川おばちゃんが美奈子に問いかける。
「これからどうするつもり?」
「これから、本でも読みます」
その「本」とは、おばちゃんが描いた小説なのではないだろうか?
自分の人生が描かれた本を老後になって読む。
自分の人生を振り返る。
自分の人生を、もう一度見つめてみる。
それが一体どういったものだったのか、小説を読みながら考えてみたい。
それはある意味、人生の終焉を表しているかのようだ。
高梨陽子も夫のカイタに言う。
「男と女の関係がすべてよ」
この作品は、
人生とはつまり男女関係がすべてであるという概念に則り作られたものなのだろう。
さて、
なぜ、カイタは最後に死ななければならなかったのだろう?
妻の陽子が望んだとおりに彼は行動した。
同時にしばらくの間気にかけてきたネグレクトの児童への想い。
彼は自分が成した決断が正しかったのかどうか迷うところがあった。
カイタがした児童の母に対する行為は、子供にとっては由々しきことだった。
子供のいなかったカイトにはそのことがよくわからなかったのだろう。
子供にとっては、どんな親も絶対的存在だ。
それを理解した上に、行政執行の決断が為される必要がある。
彼はそれを理解していなかっただけだろう。
このひとつのことが罰、または因果となって水難事故を招いたのだろうか?
2005年 平成17年 この時代はまだ昭和的な思想が色濃く感じる。
同時にタイトルに仕組まれた難解さがこの時代の新しさなのかもしれない。
あれから30年
当時起きた出来事 お互いの両親の事故死
それは大きな出来事だったが、カイタと美奈子の認識は違っていた。
カイタはプールの授業でおぼれそうになっていて、それを見ていた美奈子が笑っていると思った。死ぬと思った。
だから、カイタは美奈子を避け始めたのだ。なんて薄情な女だ
美奈子はそんな出来事など覚えてもいなかった。
このくだらないすれ違い。
きっとほとんどの人がこのような経験をしていると思われる。
カイタは笑顔で死んだ。
それはカイタが自分自身のすべてに決着をつけたからだろう。
これこそがカイタが死ぬ理由だろう。
「美奈子の長い恋は終焉した」
また、
冒頭、美奈子が作文コンクールで優勝したことが発表される。
「未来の私からの手紙」 15歳の私へ
自分が未来に立ち、当時15歳だった頃の自分に宛てた手紙
しかしわずか2年後に母が死ぬ。カイタの父と一緒に。
この出来事は美奈子の人生観を大きく変えたはずなのに、美奈子はすでに決めてしまっていた自分の歩く道を変更しなかった。
噂などすぐ広がってしまうこの町に留まり続けたのだ。
「変わらない」と決める
それこそが30年彼女を孤独にさせたのだろう。
陽子から言われなければ、ケイタとの関係もなかったはずだ。
「自分の気持ちを殺すのは、周囲の気持ちも殺すことになる」
そして、ケイタの気持ちを受け入れることができた。
でも、あまりにも短く終わってしまう。
このあたりが昭和色を濃く感じてしまう。
美奈子が毎晩聞いているラジオに、ある日とうとう投稿してしまう。
彼女の想いはもう処理できなくなっていたのだろう。
それを聞く陽子 ラジオというのはすでに時代の流れの中へ消えそうになっている。
陽子の心理もまた特別だ。
死を前に考えることは、自分のことではない。
「平凡」を決めた夫の生き方に疑問を持った。
市役所への就職はそれが理由だろう。
しかし児童課での仕事に向き合う選択をした。
同時に、彼にもタイミングが来たのだろう。
すべてにタイミングがある。
美奈子が誰もいなきなった高梨家に毎朝牛乳を届けるのは、お供え物だからだろう。
町の一番高い場所から町を見下ろす。
30年間の決着をつけた清々しさ。
人生遅すぎることなど何もない。
最後は、ゆっくり読書でもすればそれでいいのかもしれない。

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R41

2.5親のせいで変わった人生

2024年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

田中裕子扮する大場美奈子は、中三の時作文コンクールで一等になった事があった。
そういやあ牛乳配達なんて仕事もあったね。地味だけど朝早いし50歳の美奈子には大変だ。
病人役だったけど久しぶりに仁科亜紀子観たな。ちょっと不思議な展開だね。ベテラン俳優揃いなのに脈絡がない感じだ。何気ない生活密着ドラマかな。亡くなる妻に心配されても困るよね。いい大人なんだからさ。親のせいで人生変わったのかもしれないけどさ。不器用なふたりだな。評価が高かったから観たのに残念だね。

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重

4.0私には好きな人がいます。

2024年6月18日
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マサシ

4.0【”50代男女の長年に亙る、秘めたる恋物語。”静的で、端正な映像で人間性の善性を表しつつ、二人の時を超えた関係性の変遷を描いた作品。2020年代に入り、このような作品の上映は少なくなりました。】

2023年10月16日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

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NOBU