アレクサンダー大王
劇場公開日:1982年3月20日
解説
牢につながれたひとりの盗賊が手下の導きで脱獄する。漆黒の森の中、白馬の傍らで兜をかぶるとき、彼は“アレクサンダー大王”となった……ある義賊が故郷の小さな村で独裁者へと変貌していく姿をギリシャ歌劇の姿を借りて描きながら、ファシズムの実像に迫りその危険性を告発する、アンゲロプロス監督の壮大な歴史劇。黒澤明監督が感嘆した黒いマントに注目のヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作。
1980年製作/208分/ギリシャ
原題:MEGALEXANDROS
配給:フランス映画社
スタッフ・キャスト
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2021年1月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
紀元前の英雄アレクサンダー大王を近代のギリシャに登場させて、真に平等で公平な社会の樹立という夢と、その夢の終焉が描かれている。
タイトルは「アレクサンダー大王」でも、描かれているのはアレクサンダー大王の人生や伝記ではない。義賊のカリスマという設定のアレクサンダー大王が、国民から搾取する利己的な国家に抵抗する共産主義やアナーキストの若者達と共闘して英雄になっていく様子が前半では描かれている。
しかし、後半は一転して、アレクサンダー大王が英雄から独裁者に変貌していく様子が描かれている。
本作の最大の見どころは完全に主題にあると思う。本作の主題は社会主義や共産主義の限界、または社会主義の理想と現実、希望と絶望。真に平等で公平な社会を実現させる為に行動した変革期の若者達。その大いなる夢や希望、そしてその先に待っていた絶望。支配者は変われど支配者達の変わらぬ暴力的な搾取。それらが淡々と描かれている。
社会運動が盛んだった公開当時の時代に、真に平等で公平な社会の実現など到底不可能であり叶わぬ夢にすぎないと、時代に先駆けて、悟り、絶望し、語り、表現した、作品でもあったとのこと。
理想と現実のギャップ = 英雄が独裁者へと変貌、分かち合いが奪い合いへと変貌、希望が絶望へと最も簡単に崩れていくその様子、それらをアンゲロプロス監督は前作「狩人」の流れを受け継ぐロングショットの長回しを効果的に多用して、極めて冷静に、淡々と、客観的に、ドキュメンタリーチックに、現実的に描写している。
社会主義の限界。机上の空論止まり。結局は理想論。もし革命が起きたとしても喜びは束の間。表面ヅラは違えど中身は同じ権力者達による巧妙な搾取の繰り返し。中国なんかを見てれば正にそう思う。社会主義の皮を被った独裁。共産主義の皮を被った独裁。結局待ち受けるのは国家による独占、権力者達による独占。形態や体系は違えど、国家や政治への不信感はどの国も同じ。日本も勿論。理想的な社会の樹立への絶望感。悔しさ。歯痒さ。もうこれ以上のどうしようもなさ。限界値。それらが炙り出された傑作だった。アンゲロプロス監督の政治的アプローチの巧みさ。その芸術力。またしても圧倒された。心からリスペクト。
2019年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
DVDで観たくなかったが映画館で中々やってくれないので観ました。
で独特の世界に浸って酔いしれました、でも評価は3点です。
この人の映画は点数評価出来ないと思います、つまりソクーロフやタルコフスキーやホドロフスキーの映画はその世界観に浸れるかどうかで、黒澤明やイーストウッドの映画とは別ジャンルだと思うんです。ですので3点はこれまで観てきたテオ・アンゲロプロス監督作品群の中で比べたらという意味です。旅芸人→狩人→当作品という製作順を知ってしまうと「あぁこれで共産主義なり社会主義のイデオロギーに見切りをつけたんだろうなぁ」と思ってしまいます、で再出発してまたたくさんのいい作品を作ってくれたんだなぁと。
2015年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ほとんど「必修課目履修」の姿勢で漫然と見ていたのだけれど、最後の15分が圧巻!カリスマの崩壊、復活の暗示、そして訪れた現代…アンゲロプロス作品にこういうスリルを感じたことは無かった気がする。