竜馬暗殺

劇場公開日:

解説

幕末という動乱期を背景に、暗殺された坂本竜馬の死をめぐって、その真実、その背後にある無名戦士たちの生と死、青春の栄光と孤独、繁栄と悲惨を描く。脚本は清水邦夫と「空、みたか?」の田村泰志、監督は「日本の悪霊」の黒木和雄、撮影は「日本妖怪伝 サトリ」の田村正毅がそれぞれ担当。

1974年製作/118分/日本
原題または英題:The Assassination of Ryoma
配給:ATG
劇場公開日:1974年8月3日

ストーリー

慶応三年十一月十三日。氷雨の下、京の街並を走り抜けていく男がいた。海援隊の常宿“酢屋”から“近江屋”の土蔵へ身を移す、坂本竜馬である。新しい時代を求めて、抗争と内紛の絶えなかったこの頃、身の危険を感じての竜馬の逃亡だったが、佐幕派の密偵がこれを見逃すはずがなかった。佐幕派はもちろん、大政奉還後の権力のせめぎあいから、勤皇派からもさえ竜馬は“危険な思想家”として狙われていた。しかし近江屋へ移った竜馬は意外なほど悠然とかまえていた。竜馬はすぐ隣の質屋に囲われている幡と知り合い、急速に接近した。だが、幡の許に通っている男が、新撰組隊士・富田三郎であることは知る由もなかった。そんな竜馬を狙わざるを得ない立場に追い込まれたのは、かつての同志、陸援隊々長・中岡慎太郎である。竜馬への友情を棄てきれない慎太郎は、竜馬を自分以外の男の手にはかけさせない、と決心していた。その慎太郎には近江屋の娘・妙という恋人がいた。妙は竜馬のかつての恋人である。一方、竜馬を狙う薩摩藩士・中村半次郎配下のテロリストで右太という瀬戸内の漁村から出奔した少年がいた。右太は幡の弟であった。十一月十四日。集団舞踏“ええじゃないか”を待つ町人や百姓たちをよそに、竜馬を狙う右太、慎太郎、そして幕府の密偵たち。狙われていることを知りながら慎太郎への友情を棄てきれない竜馬は、慎太郎に会うために女装して“ええじゃないか”の群にまぎれ込んだ。一方、幡は痴話喧嘩のはずみで、富田を殺害していた。その頃、“権力”は慎太郎をも抹殺することを決意していた。十一月十五日。この日、土蔵から近江屋の二階に移った竜馬と慎太郎は、何者かの手にかかって暗殺された。竜馬と慎太郎を殺し、右太をも葬り去ったのは、一体何者だったのか。“竜馬暗殺”を目撃した唯一の証人、幡は、折から叶屋になだれこんだ“ええじゃないか”にまぎれ込んで、二度と姿を現わすことがなかった……。

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映画レビュー

3.5黒木和雄監督が描いた竜馬暗殺までの3日間

2022年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

初見は学生時代の名画座=池袋・文芸地下(1981年4月5日)だったので、41年ぶりに観た。
今回観たのは、司馬遼太郎の長編小説「竜馬がゆく(全8巻)」を再び読了したので、「黒木和雄監督は竜馬の暗殺事件をどのように描いたのか?」が気になって再見。

この映画は、竜馬が暗殺される日までの3日間(慶応3年11月13日~15日)を描いているが、竜馬が潜伏していた近江屋の土蔵が窓から出入りできたり、土蔵の向かいの女の部屋に出入りできたり…と変わった描き方に見えた。
また、竜馬と一緒に暗殺された中岡慎太郎が竜馬を殺そうとしていたのは、司馬遼太郎の原作とは全く異なる。
また、「ええじゃないか」の騒動も交えて描かれているが、確かに時代的には合致するものの、本当に竜馬が女装して「ええじゃないか」に参加したのかは不明。

まぁ、そもそも竜馬暗殺自体の一部が明確になったのは、竜馬暗殺の下手人(数人)のうちの男が維新後の死ぬ間際に告白したことなどから犯人の一部が判明したものの、謎に包まれた暗殺事件だったので、竜馬が暗殺されたという事実以外の枝葉エピソードは、黒木和雄監督が独自に生み出した物語。

竜馬を演じた原田芳雄は確かに迫力あったが、実際に残されている坂本竜馬の写真(数枚)と比べてしまうとチョット違うかな…という気もする。
また、司馬遼太郎「竜馬がゆく」には登場しなかった松田優作が演じた男も意味不明の感あり。

司馬遼太郎が描いた「竜馬がゆく」は、新聞記者時代を含めて日本全国あちこちを取材して、現地を見て、史料を読んだりしながら構築した物語であり、不明な部分が明確になった根拠も記載されているので、個人的にはあの小説に描かれた竜馬はかなり忠実だと思っている。

<映倫No.18090>

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たいちぃ

2.5私にはヒットしなかった。

2021年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原田芳雄、松田優作、石橋蓮司、桃井かおりの出演、しかも幕末とあって楽しみにしていたが、のんべんだらりのトーンが続き、物足りなかった。
レビューを見ると評価されている人も多いので、いろいろな見方があるのだろうと思う。
広島国際映画祭2021@映像文化ライブラリー

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M.Joe

3.5バカ殿が3人

2020年11月8日
iPhoneアプリから投稿

石橋蓮司が原田芳雄に抱きつき幸せそうに寝ている。この絵はちょっと…爆笑せざるを得ない。まだ若かりし2人、すでに幅が広いなぁと感心させられる。そこに野犬のような松田優作が絡んでくる。
喜劇では決してない。タイトルの通り国運を左右すべき時の重要人物による高度な政治的駆引きを示す。解釈は特異であるが異様に説得力がある。過去に見たいずれの作品の龍馬と慎太郎より、活きた2人がここにいる。

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Kj

3.5内ゲバをテーマにしているのは明か

2019年10月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

まことにATGらしい映画です

スマホアプリにいろんなフィルターがあります
もし戦前の白黒映画フィルターというものがあったらこのような映像になるのでしょう
その狙いは二つだと思います

ひとつ目はドキュメンタリータッチを追求する
原田芳雄の風体は歴史本に見る竜馬本人の写真そのものぐらい似て見えます

二つ目は戦前の白黒映画と同じ画質で、現代的な演出や現代的な俳優達を撮ってみせることで、同じ地平で比較してなんら劣るものではない
むしろこの実力を正しく評価してくれという野心的なものなのだろうと思います

確かに原田芳雄、松田優作、石橋蓮司、桃井かおり等クセのある役者達が活躍をみせて、戦前の名優達に負けるものではないことを証明していると思います
彼等のその後の活躍がそれを裏付けてもいます

演出も時代劇のお約束的なものは排され、現実的な表現を追求されています
これもまた時代劇の革新であったと思います
竜馬暗殺シーンの迫真性は印象に残るものです

そしてこの時代の青春映画と同様に政治的な意味合いも持たされていると思います
それは内ゲバをテーマにしているのは明かでしょう
70年安保闘争と学園紛争の敗退後、彼らは路線闘争に明け暮れ、仲間内の殺しあいに迄になっていたのです
本作公開時は、連合赤軍の山岳キャンプ事件の後も、大学校内だけでなく、町中の路上で突然鉄パイプによる襲撃事件が続発していたのです

本作の志士達の争いはまさにその暗喩になっています

序盤の京の町中で刀を鉄パイプのように上に向けて集団で一人の侍を襲撃するシーンは内ゲバのシーンそのものです

つまり本作はその内ゲバに対してそれを続けて良いのかという疑問を突きつけるものであり、その情熱を肯定的に描くものでもあります

内ゲバは2000年代に入ってもなお発生しています
団塊左翼老人達はいまもなお、本作のような幕末の斬り合いの中に生きているのかも知れません

そして1961年の今村昌平監督の豚と軍艦と同じく国民を豚に見立てるモチーフが登場します
また、ええじゃないかを無知蒙昧でムードに流されて意味も分からず騒ぐだけの存在として描き、彼らの政治闘争への理解を示さない国民への蔑視の視線を向けています
この姿勢である限り国民が彼らの思想運動への理解も賛同や協調など望むべくもないことを露呈しているのです

21世紀に生きる私達から見れば、まさに本作の映像のような古色蒼然とした信じられない世界です
本作を見る意義と意味はこのことを留意してみる事なのだと思います

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あき240

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