夕暮まで

劇場公開日:

解説

一緒に寝ても、体を開こうとしない若い女と、中年の作家の関係を描く吉行淳之介の同名の小説の映画化で、脚本は浜地一郎と田辺泰志の共同執筆、監督は「原子力戦争 Lost Love」の黒木和雄、撮影は鈴木達夫がそれぞれ担当。

1980年製作/110分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1980年9月20日

ストーリー

小説家の佐々は、みえ子の誘いで若い人達のパーティに出向き、そこで、杉子と祐子という美しい若い女性を紹介される。杉子に興味を抱いた佐々に「あの子ヴァージンよ。まっ白いウェディングドレスを着て結婚式をあげたいというのが口癖」と祐子が囁いた。「杉子は食いしん坊」という祐子の言葉に、佐々は杉子を食事に誘った。こうして二人はつき合うようになった。パーティの帰り、佐々は杉子を高級レストランに連れていった。それ以来、土曜の夜は、高級寿司屋、フランス料理屋、中華料理屋と二人の食べ歩きが続く。食事のあと、佐々は杉子をラブホテルに連れ込むが、彼女は決して身をまかそうとしない。二人のつきあいは一年経っても変らず、杉子は依然処女で、佐々はこんな関係を楽しんでいた。しかし、杉子には岡田というガソリンスタンドで働く男友達がいた。その岡田が、突然、姿を消した。佐々は杉子のかすかな変化に影の男がいることを察知していた。ある日、杉子はあっさり体を開いた。杉子は処女ではなかった。影の男が彼女をうばったのだろうか。数日後、祐子から佐々に電話が入った。杉子がガス自殺をはかり、未遂に終った。祐子は杉子を連れて、数日間、旅行に出ると云う。暫くして、旅行から帰った祐子から「杉子が佐々に会いたがっている」と電話が入った。佐々は、二人のつき合いも、ここらで幕を引く時だろうと思った。いつものホテルのロビーで二人は会い、いつものように鳥料理屋に行った。杉子の食欲は相変らず旺盛であった。食後、佐々は杉子を車で送った。ここで別れよう、と佐々は杉子をうながしたが、杉子は降りようとしない。降ろしたら奥さんに電話するわ。江守杉子が死にましたって。佐々はドアのロックをはずした。杉子は動かない。彼女の頬に一筋の涙が光っていた。

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映画レビュー

5.0黒木和雄の作品としてはあまり語られる機会の少ないけど桃井かおり目当てで鑑賞

2020年8月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

一緒に寝ても、体を開こうとしない若い女と、中年の作家の関係を描く吉行淳之介の同名の小説の映画化。ソフト化されておらず桃井かおり目当てで鑑賞。

今回の上映プリントの状態は、退色して全面にマゼンタ浮きが目立つセピア感が強いので、意図的に写し出される踏切や埠頭などの赤い電球の発光なども判り難い。しかしキズは少なめでコマ飛びも殆ど無い。

吉行淳之介の小説「夕暮まで」が原作で、中年作家(作者の投影)伊丹十三と愛人(パパ活に近い)となる桃井かおりとの肉体関係を巡る話しだか、女性が関係を拒み続けて平行線を辿る。

冒頭から二人で地方と思われる海辺に逃避行風に現れそこから駆け出して、過去に巡る。
出会いと数度にわたる交際が語られるが、洒落たレストランや高級料理店での食事までで性交渉に至らずにお互いの感情に変化が無い

アワビのアップやローション代わりのオイルなどの露骨な描写など全編通してメタファー的に二人の食事を扱っている。多分、食通で様々な薀蓄ある伊丹十三がアドバイスしてる可能性も。そういえば後年の伊丹監督作「タンポポ」も食べ物巡る薀蓄話だ。

伊丹十三扮する作家の佐々は、妻と一人娘と共に緑に囲まれた洋館に住み、複数の愛人がいる、絵に描いたような人物を、ダンディな佇まいで無理なく演じてる。

佐々が関係を持とうする杉子を桃井かおりが、気怠そうに演じているが、風間杜夫の旅青年との交流と突然の別れで、現状の自分に戸惑いを覚えていく様にも感じるが、劇中で殆ど彼女の私生活が語られることは無く、何処に住んでいるのかもあやふやで、捉えどころが無い。

冒頭の海辺での駆け出しも二人の距離感の表れなのかも知れないが、繋がりが弱いと思う。
そういえば、この時の杉子の服装は、キャリアOL女性のようなスーツと利発で落ち着いて雰囲気の髪型で、大人びている。

佐々が運転するホンダアコードが、角目ライトの後期型で、割と珍しい印象。伊丹十三本人は、外車だと思うが、本田技研協賛なので。

問題なのは、映画自体が何を描きたいのか焦点が定まらない印象で、佐々と杉子の複数ある逢瀬でも艶や色香が弱くて、ある種の官能的見せ場とはならずに、佐々とバイク青年とのエピソードも捉えどころが無い若者の象徴なのかと思うがあまり迫っては来ない。

黒木和雄作品としては、あまり語られない作品で正直今一つな出来だが、40年前の背景や生活風俗などを垣間見れる古い映画ならではの楽しみもあるので女優陣も含めて見所あり。

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