街の灯(1974)

劇場公開日:

解説

チンピラがひょんなことから老人と美少女と連れだって、東京をふりだしに九州まで徒歩旅行を続けることになり、奇想天外な事件に次々と巻き込まれてしまう。堺正章松竹初主演作。脚本は梶浦政男、監督は脚本も執筆している「野良犬(1973)」の森崎東、撮影も同作の吉川憲一がそれぞれ担当。

1974年製作/91分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1974年4月27日

ストーリー

坂の下の千代松、通称・チョロ松。職業はアプローチ屋、つまりセックス仲介のインチキ稼業をしている若者である。チョロ松は、兄ちゃんと呼ぶ梅吉とコンビを組み、この稼業をしている。二人は、竹子が経営する赤ちょうちんの二階に住んでいるが、ここには向島の捨て児寺に捨てられた少年少女たちも一緒に暮しており、血縁なき者同志が一家を構成していた。さて、梅吉の十三年来のお得意さんである好色老人の栗田は、医者からあと三回と宣告された精力の数少ない一滴を、タレントの欅ヒロミに、と二人にアプローチを頼んだ。だが、二人の珍妙なアタックにもかかわらず話は進展せず、あわや作戦放棄という時に、ちょっと頭がおかしいが、ヒロミにうりふたつの美少女を発見、彼女を替え玉にしようと考えつく。ところが、この少女には頑固で妙に古めかしい老人がくっついており、二人は老人の故郷・九州まで徒歩旅行に出発してしまった。何とか道中の途中で少女を連れ戻そうと考えたチョロ松は、二人の後を追った。ところが、千代松の考え通りにはいかず、次々と珍妙な事件に巻き込まれてしまう。大船駅構内で赤ん坊を拾ったり、ヒッピーの三人組が加わったり、おかしな夫婦の喧嘩に巻き込まれたり、女子プロレス一行と一緒になったり……。それらすべての事件の収集者として不当な裁きを受けるのは、大抵、チョロ松だった。にもかかわらず、じわじわと奇妙な連帯感が生まれてくる。老人は、実はブラジル移民で、“緑あふれる”ふるさとと、初恋の人・お米婆さんに一目会うための、四十七年ぶりの帰国だったのだ。しかし、ふるさとは既に“緑あふれる”地ではなく、お米は恋敵の粟三郎と所帯を持っていた。かくて、すべての夢を見終った老人は、また一人ブラジルへ帰ろうとするが、すっかり彼になついてしまった少女も一緒に行きたいと泣きだしてしまった。チョロ松が少女にぞっこん惚れていることを知った老人は、二人を結婚させてブラジルへ連れて行こうと決心して、大胆にも銀行強盗を遂行した。駈け落ち風のチョロ松と少女が羽田を発とうとすると、梅吉とタレント失喪事件を追っていた警察が少女を発見。少女はその騒動のショックで頭が正常に戻ると、なんと本物の欅ヒロミだった。しかも、彼女はマネージャーに連れ去られた直後、交通事故で死んでしまった……。老人はブラジルへと強制送還……。変な夢を見ていたようなチョロ松の数日間。愛と友情と、かけがえのないものを突然に奪いとられた哀しみが、チョロ松の胸に湧きあがってきた。

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