火まつり

劇場公開日:

解説

海洋公園建設で揺れる海と山に挟まれた小さな街を舞台に、嵐の山の中で神の啓示を受けた木こりの姿を描く。芥川賞作家・中上健次がはじめて映画の脚本を執筆、監督は「さらば愛しき大地」の柳町光男、撮影は「逆噴射家族」の田村正毅がそれぞれ担当。

1985年製作/125分/日本
原題または英題:Fire Festival
配給:シネセゾン
劇場公開日:1985年5月25日

ストーリー

前は海、後ろは山に挟まれた紀州・熊野の小さなその町は、海洋公園の建設が予定され、その利権で揺れている。町の人々は木こりと漁師で構成されているが、この両者はほとんど接触をもたない。木こりの達男は、自分を慕う青年・良太を連れ、漁師のトシオと付き合ったり、神の入江で泳いだり、榊で罠を作るなど、タブーをことごとく破る乱暴者だ。達男には妻と二人の子供がいるが、町に幼なじみの基視子が現われ交際がはじまる。達男の奔放な生き方に町の人々は顔をしかめているとき、海に重油が撒かれ、養殖のハマチが死んだ。みんな達男がやったと思っている。基視子は姉のスナックを手伝うことになり、土地ブローカーの山川をはじめ、町の若い男たちが彼女に付きまといだし、年寄りたちは他所者の彼女を冷ややかに見ていた。やがて基視子は山川から金をだまし取り、借金で人手に渡りかけていた新宮のスナックを取り戻した。達男、トシオ、良太たちは基視子の店に遊びに行く。暫くして達男たちは山に入った。晴れていた空は急に雲り、やがて激しい嵐が襲ってきた。良太や仲間たちは下山するが、達男はひとり残った。雲の流れ、木々の揺れる音、川のせせらぎの音の中で、達男は何か超自然的なものを感じる。山の神の声を聞いたのかもしれない。山は晴れ、達男は下山する。数日後、年に一度の“火まつり”が行なわれ、達男は暴れまくった。達男の家で、公園建設による土地問題について親族会議が開かれることになった。火まつり以来、穏やかだった達男は、猟銃を用意すると、母、妻、姉、子供たちを次々と射ち殺し、自分の口に銃口を入れると、足で引き金を引いた。静寂な町に銃声が響きわたる。その夕方、二木島の入江はタ陽で金色に染められ、撒かれた重油の中にハマチが浮いていた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第9回 日本アカデミー賞(1986年)

受賞

音楽賞 武満徹

ノミネート

主演男優賞 北大路欣也

第38回 カンヌ国際映画祭(1985年)

出品

ある視点部門
出品作品 柳町光男
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映画レビュー

2.0ラストは衝撃

2024年6月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

難しい

ラストは衝撃です。しかし、犯人はそんなにヤバい奴には思えなかったので唐突な感じがありました。 重油の件は謎が残った。 ワイルドな北大路欣也の尻が見られます。 森下愛子は美しい。 川上麻衣子はちょい役。 安岡はリキヤだった。

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ガレ

5.0神話の世界はこうして現代文明の社会に飲み込まれて消えて行くのです

2023年7月11日
Androidアプリから投稿

なんだか皆目分からない でも、確かに今、ものすごい傑作を観たという感動があるのです それも日本映画のオールタイムベストのリストに入っているのは当然だと納得できるほどのものです 舞台は三重県の熊野地方の二木島という漁港のある町 熊野地方は日本一雨量が多い地域なので林業が大変盛んな地域です 熊野川の上流で伐採した大木を、いかだにして下流に運ぶことで有名です 劇中でも触れられる神武東征神話の地でもあります 日向から来た神武天皇はこの熊野に上陸して大和に入りそこで即位されたという神話です 熊野大社、那智の滝もこの地域にあります そしてこの地域は、東京からの所要時間が今でも日本一掛かるところだそうです 北海道や沖縄の方が飛行機でここより近いのです つまりそれだけ現代文明の社会から日本で一番遠い土地だと言うことなのです 時代はどうやら1979年頃のようです 紀勢本線が全線開通したのは1959年7月のこと 全線開通の祝賀式典は主人公が中学生の頃の20年前の記憶のシーンだったと思われます 主人公は漁師ではなく、林業で働く30代半ばの男です 物語は初夏から始まり、梅雨、夏、クリスマス、そして桜のシーズンで終わります 物語はあるようなないようなもの 田舎の漁村と林業の仕事の日常です しかしラストでとんでもない大事件が突然起こり、そして終わります 本作は特にネタバレすべき作品ではないと思います その終盤の大事件の衝撃をいきなりくらうべきだと思います 私たち観客は、2時間かけて東京から一番遠い田舎の退屈な日常を主人公と体験していきます そうすることで、私たちは主人公がなぜそのような大事件を起こしたのか意味不明であっても、何故だかそれが不思議でもない気になってしまうのです 神話の世界と現代文明社会の相克 そんな風に書くと陳腐ですが、何かそのようなものがテーマだと思えます だから主人公は盛んに女性神である自然との性的な行為を行うのです 終盤の「火まつり」は、劇中では時系列から冬のことのようでしたが、これは8月にこの地方にある紀和の火まつりをモチーフにしたもののようです タイトルの「火まつり」とは、このことのようで、実はラストの大事件のことを指していると思います とすると、火まつりのシーンも、実は冬ではなく夏の記憶が大事件の前に時系列を変えて主人公の脳裏で再生されたことを表現していたのかも知れません その大事件は1980年に起きた実話をモチーフにしているそうです ラストシーン 熊野灘に昇る朝日を紀州犬4匹と見つめる男は何者? 神武天皇の東征を表現したシーンなのでしょう 日の本と向きあう男性神 白い4匹の犬は日本の四州の島の意味なのだと思います 神話の世界はこうして現代文明の社会に飲み込まれて消えて行く それがこのラストシーンの意味であり、本作のテーマだったのだと思います

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あき240

2.0山男と海男

2021年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公(北大路欣也)は林業に従事、海岸沿いに住んでいた。 性格は乱暴だが神がかっているところがあった。 海岸の開発話が持ち上がり、主人公の家が該当したが、一人だけ反対し、近所は迷惑そう。 日本の社会に置き換えると背筋が凍る。

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いやよセブン