緋牡丹博徒 お命戴きます

劇場公開日:

解説

上州周辺を舞台に、不正を働く軍の上層部とヤクザを相手に、緋牡丹お竜の活躍を描く。シリーズ第七作目。脚本は「現代やくざ 盃返します」の大和久守正と「すいばれ一家 男になりたい」の鈴木則文の共同執筆。監督は、前作「緋牡丹博徒 お竜参上」の加藤泰。撮影は「関東テキヤ一家 喧嘩火祭り」のわし尾元也がそれぞれ担当。

1971年製作/93分/日本
配給:東映
劇場公開日:1971年6月1日

ストーリー

九州熊本の矢野組々長矢野竜子こと緋牡丹お竜は、渡世修業の旅の途中、上州伊香保の久保田組の賭場で、胴をつとめる親分の実弟猪之助のイカサマの一件で危機に直面したが、武州熊谷結城組々長結城菊太郎によって難をまぬがれた。そして、両家の手打ちは、大前田の二代目英次郎の仲裁で行われ猪之助は破門された。しばらくして、お竜は父の法要のため、一時九州に帰る事になったが、高崎観音建造の勧進賭博の日までに再び来る事を約して結城と別れた。お竜は、結城に渡世の付き合い以上の想いを寄せ始めていたのだった。その頃、熊谷在に軍部御用の兵器工場ができ、周辺の百姓はその公害のために苦んでいた。結城は、百姓の暴動を未然に防ごうと、工場に交渉して用水堀造成のため保障金を出させようとした。この工場の運搬関係の仕事を仕切っていた富岡組々長は、何かと反目する結城を消そうと計った。富岡は、工場長の大村や軍の監督官畑中大尉と結託、工場本社からでていた保障金を着服していたのだった。富岡は、言葉巧みに猪之助をあやつり結城を殺した。百姓に対する圧力は激しさを加え、急を聞いてかけつけたお竜は、陸軍大臣に直訴すべく料亭の席にまで押しかけるのだが、そこで偶然にも熊坂虎吉と同席していた陸軍大臣に現状を直訴した。お竜の働きで悪業の露見を恐れた富岡と畑中は、結城の三代目を襲名した貞次を殺し、罪を彼一人に被せようとした。菊太郎の初七日の日--。寺の本堂一杯の百姓衆に大村の横領を吹聴している富岡、畑中へ黒い喪服に仕込み笛を抱いたお竜が乗り込んだ。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0手癖で作った感が強い

2023年6月8日
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前作『お竜参上』に引き続き加藤泰が監督ということで期待して鑑賞したが、いや、お前これ、完全に手癖だけで作っとるやないかい!

『お竜参上』にはあれだけ漲っていたエロスと緊張感はほとんど感じられず、形骸化した技法ばかりが悪目立ちしていた。障子や襖といった日本家屋の構造をふんだんに活かしたショットは散見されるものの、それらが総体として一つの流れを作り上げているという感じがしない。

ただ、鶴田浩二演じる親方の通夜シーンの長回しは見事なものだった。フィックスだけでここまで立体的かつダイナミックな運動を撮ることができるというのはやはりすごい。その後の画面が暗転してお竜だけにスポットが当たるという演出も、少々やりすぎの感はあるものの美しかった。

ラストはかなり酷い。敵の首魁を殺し終えたお竜。そこへ彼女を母のように慕うガキが似顔絵を持って笑顔で現れる。しかしこの一連のくだり、あまりにも唐突であり、また唐突さに必然性がない。そもそも組の存続を賭けた殺し合いが今まさに繰り広げられている最中に、似顔絵を抱えて笑顔でウロチョロするようなガキがいるだろうか。あまりにもガキを舐めすぎなんじゃないか。色鉛筆を買い与えたという伏線を回収するのに躍起になるあまり、演出では誤魔化し切れない論理的破綻が生じてしまっている。

素晴らしいショットはところどころみられるだけにいっそう悔しい出来の一作だった。

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