任侠外伝 玄海灘

劇場公開日:

解説

玄海灘に巣喰う一匹狼のヤクザを主人公に、ヤクザ同士の抗争と屈折した性との葛藤を描く。脚本は「哥」の石堂淑朗、脚本・監督はこれが第一回監督作品の唐十郎、撮影は瀬川浩がそれぞれ担当。(ヨーロッパサイズ)

1976年製作/122分/日本
配給:ATG
劇場公開日:1976年5月29日

ストーリー

はるか朝鮮半島の黒い影が望める玄海灘。一匹狼を自認する近藤とその舎弟分の田口は、東京に本拠を持つ沢木組の代貸・沢木の指令を受け、密航して来た韓国の女達を中央に売りさばく仕事を請け負った。沢木がこの儲けの多い仕事を組員でもない近藤に任せているのには理由があった。--25年前、朝鮮戦争のさなかの昭和26年、当時学生だった沢木と近藤は、横浜で死体処理のアルバイトをしていたが、ふとしたきっかけで朝鮮へ行き、アメリカの軍属として釜山で働く事になった。二人は、アメリカ軍属という特権で、米国兵や韓国兵の認識票を手に入れ、暴虐の限りをつくした。そんなある日、沢木が女を締め殺し、死んだ女を近藤が犯した。怨みをこめた表情を残して横たわる女が、ぞっとする程美しかった。以来、近藤の脳裏にはその姿が焼きつき、女を抱く気になれなくなった。沢木と近藤は、そんな暗い秘密で結ばれていたのだった--。仕事は順調に進んでいた。沢木組の組員たちは、密航して来たた女を廃工場に集め、乱交パーティを始めた。その中に李孝順という美しい女がいた。田口は彼女がヤクザに襲われると何故か助けた。その行為は、自分が不能の為の腹いせなのか田口自身にも解らなかった。以来、二人は急速に接近した。ある日、李孝順が田口のアパートに訪れた。田口が部屋を留守にした時、近藤が戻って来た。近藤は李孝順が数年前の女と瓜二つなのに驚き、彼女に襲いかかった。一方、李孝順とともに密抗して来て、なにかと彼女につきまとう金田という男がいた。金田は近藤に復讐するためにやって来たのだ。金田は25年前のあの女の愛人で、李孝順こそがあの時の近藤の子供なのだ。女は仮死状態から一日後に息をふきかえし、十カ月後に鬼の子を産んだのだった。……二度目の蜜航の仕事が海上保安庁に発見され、失敗した。重傷を負った近藤の前に、金田が立ち塞がり、彼に全てを話した。青ざめる近簾……。一方、田口は今度の失敗で沢木の信用をすっかり落とした近藤を救おうと沢木の重要書類を奪うが、逆にますます沢木と近藤のヒビを広げる結果となった。やがて浜辺で沢木と近藤が決闘し、共に倒れた。これを崖の上から見ていた金田は、二人の死を見届け、自ら崖の上から飛び降りた。その頃、田口から重要書類を預っていたために殺され、ドブ川に浮かんでいた李孝順の屍を抱きしめながら、田口が慟哭していた……。

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