日本女侠伝 侠客芸者

劇場公開日:

解説

「緋牡丹博徒 一宿一飯」の野上龍雄が脚本を書き、「おんな刺客卍」の山下耕作が監督したシリーズ第一作。撮影は「懲役三兄弟」の鈴木重平が担当した。

1969年製作/99分/日本
配給:東映
劇場公開日:1969年7月31日

あらすじ

石炭ブームにわく、明治末期の博多。馬賊芸者と評判高い信次は、男まさりの気っぷと度胸が人気のマトだった。そんな信次に惚れる鉱業会社々長の大須賀は、士地のやくざの親分万場安次郎と手を組み、九州一の炭坑主にのし上がろうとしていた。ある日、料亭に遊びに来た花田炭坑の作業員たちを迎えに来た納屋頭の島田清吉に会った信次は、好意を抱いた。一方花田炭坑をぜひとも手に入れようとする大須賀は、執拗に清吉を口説くが、先代に恩義を感じている清吉は、ガンとして聞き入れない。折から、坂田陸軍大臣歓迎の宴が炭坑主たちの手で開かれ、酒の飲めぬ清吉に代わって、信次は見事に盃を空け、黒田節を舞った。陸軍大臣を見送った後酔いつぶれた信次を清吉が介抱する。信次は信次に恥をかかされた大須賀は、若松港の仲仕組合長松本を買収し、花田炭坑の石炭積出しをストップさせた。しかし、清吉の誠意に負けた仲仕組合の若い事務員は、組合長の松本を無視して、積出しを約束した。大須賀は最後の手段として、万場組に命じて、花田炭坑にダイナマイトを仕掛け、三人の作業員が炭坑を守って死んだ。三人の通夜の晩、若松から帰った清吉は、色めく作業員たちをしずめ、必死に止める信次をもふりきって、単身大須賀邸へ向った。そして、万場を倒し、全身血みどろになった清吉は、最後の力をふり絞って、大須賀と差し違えた。大須賀邸に駆けつけた信次は運び出される清吉の亡骸を見る。今日もまた、盛大な宴会が始まる。鏡台の前で紅を塗りつつ大粒の涙を流す信次の姿があった…。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5「はい、惚れております」

2025年3月15日
iPhoneアプリから投稿

山下耕作のモンタージュは大胆かつ繊細だ。隣接するショットを映像的・意味的にピッタリ付合させることにはほとんど腐心せず、唐突な花火や舞踊によって暴力的に接続する。しかしそれらが破綻をもたらすどころか、映像にファンタスティックな速度を与えているように感じられるのは、職業監督としての衒いのない技術力があるからに他ならない。

ロングショット/クローズショットの使い分けに関しても文句なく素晴らしい。ロングショットの中でこまごまと動き回る藤純子や高倉健が不意にクローズショットで抜かれるとき、その落差がえもいわれぬ官能をもたらす。特に、藤純子演じる信次が落涙しながら紅を引くラストショットは非常に印象的だ。

明/暗に関しても同様のことがいえるだろう。金子信雄演じる大須賀が送り込んだ刺客と高倉健演じる島田が死闘を演じる明朝のシーンは、地面が石炭であることも相俟ってほとんど人物の区別がつかない。あるいは島田の炭鉱が大須賀の手先から襲撃されるシーンもまた、画面はほとんど真っ暗に近い。だからこそ、ラストシーンのカチコミで煌々たる灯りの中を縦横無尽に暴れ回る高倉健がより生き生きと映る。

主演が藤純子、それを手助けするのが高倉健、そして黒幕に金子信雄という取り合わせはこの時期の任侠映画においてはまさに完璧と評するに相応しい布陣だ。藤純子と高倉健が惹かれ合う過程にも説得力があった。一滴も酒が飲めない高倉の代わりに藤が巨大な盃を飲み干し啖呵を切り、無理が祟って倒れた彼女を高倉がそっと介抱する。この一連のシークエンスだけで二人が惹かれ合う理由がわかる。そして二人を否応なく引き裂く金子信雄の嫌味ったらしい哄笑。もう、何から何まで完璧だ。

山下耕作の任侠映画というと、かの三島由紀夫も絶賛した『博奕打ち 総長賭博』ばかりが槍玉に挙げられがちだが、本作はそれに匹敵するレベルで出来の良い映画だった。

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因果

4.0いよっ、待ってました!

2023年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

藤純子主演のヤクザ映画シリーズで、共演は高倉健、さすがに絵になる。
主人公(藤純子)は博多の芸者で、愛嬌も度胸も備えている。
石炭ブームに沸いていたが、悪い奴(金子信雄)が独占しようとする。
これに抵抗した炭鉱の頭(高倉健)だったが・・・。
藤純子には惚れ惚れしてしまい、もっと観ていたい気分になる。

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いやよセブン

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