虹をつかむ男

劇場公開日:1996年12月28日

解説

渥美清の急逝に伴いシリーズ終了となった「男はつらいよ」に代わって松竹の正月番組をつとめた人情喜劇。映画を愛してやまぬ映画館主をめぐる人間模様を、数々の名画の断片を交えて描いた。監督は「学校II」の山田洋次。脚本は山田と朝間義隆の共同。撮影は「学校II」の長沼六男。「学校II」に続いて西田敏行と吉岡秀隆が主演したほか、「男はつらいよ」のレギュラー陣が顔を揃えている。またCG合成で寅さんにふんした渥美も一場面に登場し、本作も渥美に捧げられた。

1996年製作/120分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1996年12月28日

あらすじ

平山亮は就職試験に失敗して柴又の家を飛び出し、旅の果てに四国・徳島県の小さな町に辿り着いた。亮は白銀活男が経営する古ぼけた映画館・オデオン座でアルバイトとして働くことになる。活男はこの町で映画の灯を守り、映写技師の常さんや映画好きの町民たちと土曜名画劇場を催していたが、それはメンバーで幼なじみの未亡人・八重子に捧げるものでもあった。活男は八重子が開く喫茶店“カサブランカ”に毎日顔を出しては映画談議を繰り広げるが、彼女への想いだけは口にすることができないでいた。活男は巡回映画にも出かけ、小学生ひとりのために過疎分校を訪ねたり、上映時間について役場課長と言い合ったりしながら、名画を上映していく。初めは労働条件に不平を言っていた亮も、次第に活男の情熱に影響されていった。そんな時、八重子の父親が急死し、活男は八重子の口から、亡夫の同僚と結婚して大阪に行くことを聞かされる。八重子は活男の気持ちを知りつつ応えられないことを泣きながら告げるのだった。失意の活男は借金のかさむオデオン座を閉館すると宣言した。先代から活男のことを頼まれている常さんは、ひそかに貯めた貯金を提供すると、さらに屹然とした態度で再起を活男に迫る。結局、活男はピザ屋を併設して映画館を続けることになり、亮もまた活男の計らいで柴又に戻っていった。就職を考え直すという亮の手紙が活男の元に届けられるころ、オデオン座ではまた新たな若者が活男に雇われようとしていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5 オデオン座と寅次郎の面影

2025年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

癒される

 BSの録画を鑑賞しました。

 吉岡秀隆さんが扮する亮 の両親が『男はつらいよ』のメンバーで嬉しかったです。さらに、妹もいるではありませんか。亮 が寅さんの代わりに主役を務め、かっちゃん こと白銀活男(西田敏行)と W主人公 で物語が進行します。

 田舎の雰囲氣が 良い味を出していました。
 映画愛を感じる作品です。

 終盤は 寅さんの名場面集でした。
 ラスト、車寅次郎が実在しているような、幽霊のような描写があり 驚きました。

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Don-chan

4.0 もしかしたら、西田敏行さんを二代目寅さんにするための公開フィルムテストだったのかもしれません

2025年7月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

虹をつかむ男
1996年公開

あー面白かった
観て良かったと心底思いました
男はつらいよシリーズ50作を制覇して寅さんロスにお困りなら、まず本作をお勧めします

時系列にするとこうなるそうです
1996年8月4日
渥美清逝去
男はつらいよ第49作「男はつらいよ 寅次郎花へんろ」製作中止

同年9月26日 本作の製作発表

同年12月28日公開

つまり渥美清の死去を受けて僅か1ヶ月半で企画をゼロからスタートさせて3ヶ月で撮影を終えて、正月映画の寅さんの興行スケジュールに穴を空けないようにした作品です
なので、本来なら秋から寅さんの49作の撮影計画の仕掛を流用して
その作品に出演予定だった俳優がそのままスライドして出演しているようです

といことで本作はいわば、寅さんシリーズのエピローグという体をなしています
ラスト間近に男はつらいよ第一作が映画館で上映されるシーンがあります
渥美清さんの唄う主題歌が流れてそれがそのまま本作のエンドロールにシームレスになっていきます

そこに「敬愛する渥美清に、この映画を捧げる」とでます

主人公は西田敏行が演じる徳島県の田舎町で名画座を経営するかっちゃんの愛称で町のみんなから親しまれている50歳程の男
そこに東京は葛飾柴又の吉岡秀隆が演じる青年が親父と大喧嘩して家を飛び出して、その田舎町の名画座のオデオン座に雇われて、それから彼が目撃するオデオン座のいろいろなエピソードを描きます
だから寅次郎が柴又を飛び出して
啖呵売の兄貴に弟子入りして寅さんになるお話にすこし似ています

西田敏行の演技は釣りバカ日誌のハマちゃんのギャグ風味を抑えて、渥美清さんの雰囲気に極力寄せようとしていると感じられます
観ていて、このまま寅さん二代目を襲名してもいいのでは?と思えてきます
かっちゃんの性格は基本的に寅さんと同じです
調子が良くてお人好し、女性に対しては好意を示す事ができません
違うのは映画館主だけに映画にやけに詳しく映画愛に溢れています
寅さんのアリア
寅さんファンなら良くご存知の立て板に水のごとく独特の口調で一人語りをぶって一同が固唾をのんで聞きほれる名物シーンです
寅さんのアリアならぬ、かっちゃんのアリアが本作では登場します
「ニュー・シネマ・パラダイス」
「鞍馬天狗・天狗廻状」
「野菊の如き君なりき」
特に「かくも長き不在」は長く語られあたかも一本観たような気になるほどです

いい映画とは?
身につまされる映画だ

という会話があります

「かくも長き不在」をせっかく上映しても、つまらないと言ったり
寝てしまう男客、ジーンと刺さっているマドンナとの対比も良いジーンでした
田舎町がまるでパリの裏通りのように素敵に見えました

このあと、雨に唄えばの再現シーンがあります

このようにこのほかにも沢山の映画の名前やエピソードや一場面が挿入されたりして映画愛に溢れた作品になっています
いくらいい映画であっても、それを上映する人達がいるから、多くの人々に観て貰えるとの台詞が幾度か語られます
マドンナ役は田中裕子さん
1982年の第30作「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」から14年後です
本来なら製作中止になった第49作のマドンナの予定だったそうです
主人公のかっちゃんといい感じになるのですが結局寅さんと同じように、かっちゃんのあと一押しが足らず彼女を逃してしまいます
この辺りのシーンは寅さんの映画を観ているような錯覚に陥るほどです

もしかしたら、西田敏行さんを二代目寅さんにするための公開フィルムテストだったのかもしれません
彼は釣りバカ日誌シリーズの看板俳優ですからそれは無理です
それでも、それを望むお客さんの声が圧倒的にあったならもしかしたらということもありえたのかもしれません
結局、寅さんシリーズに二代目は無く、釣りバカ日誌はこのあとも10年以上続きます
2019年には寅さんシリーズも50作が正式な最終作として完結しました
そして西田敏行さんも昨年2024年10月にお亡くなりになりました
全ては過去の事になりました

タイトルの虹をつかむ男とは、1950年の同名の映画からの由来だそうです

とは言え虹とは、困難な状況の後、良いことが訪れる前兆、または神聖なメッセージを伝える存在ですから、西田敏行さんがそうなるかもという願いが込められていたのかも知れません

蛇足
徳島県光町はお遍路で有名なお寺がある町だそうです
オデオン座はセットではなく、徳島県美馬市脇町にある脇町劇場として実在しているそうです
本作を記念して美馬市指定有形文化財となり一般公開されているそうです

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あき240

2.5 監督の私的映画と言っても良いのでは

2025年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

単純

 山田洋次監督が天国へ行った渥美清さんに捧げた映画のようですが、正直言ってあまり面白くは無かった。

 山田洋次監督モノでは民子さんシリーズが好きな自分には少し合っていなかったようです。本作は少しバカで直情的な男がドタバタと行動する内容なので、寅さんシリーズが好きな人であれば楽しめるのかもしれません。

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クネーゴ

3.5 満男と浜ちゃんと寅さん

2024年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

幸せ

 就職に失敗し葛飾柴又を出て旅に出た平山売は、徳島の小さい映画館オデオン座で働くことに。経営する白銀活男、映写技師の常さんや喫茶店の八重子さんら、周囲の人々となじんでいく。活男は、八重子にほのかな想いを抱いているが。
 西田敏行の追悼放送で観賞。作品自体は、渥美清の追悼でした。様々な映画の話が挿入され、これは好きな映画を語る監督冥利に尽きるな、と感じました。「ニューシネマパラダイス」はまたいつか観よう。いろいろな作品を情感たっぷりに語る、「活ちゃんの話のほうがよっぽど」面白いというのは分かる気がします。常さんの横で、田中邦衛のものまねをする活ちゃんが笑えます。最後に新しく採用された新人役が上島竜平で、当時であれば西田敏行と似てるからと笑えますが、今見ると泣けてくる。

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sironabe

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