独立愚連隊

劇場公開日:

解説

終戦近い北支戦線を舞台に、弟の死因を究明にやって来た元鬼軍曹の活躍を描いた日本版西部劇。「ある日わたしは」の岡本喜八が助監督時代に書いた脚本を自ら監督した。撮影は「青春を賭けろ」の逢沢譲。

1959年製作/108分/日本
原題または英題:Desperado Outpost
配給:東宝
劇場公開日:1959年10月6日

ストーリー

第二次大戦も末期、北支戦線の山岳地帯で敵と対峙している日本軍に、独立愚連隊と呼ばれる小哨隊があった。正式には独立第九〇小哨だが、各隊のクズばかり集めて作った警備隊なので、この名称があった。独立愚連隊に行くには、敵の出没する危険な丘陵地帯を行かねばならない。この死地へ、新聞記者の腕章を巻き、戦闘帽に中国服姿の男が馬を走らせていた。大久保という元軍曹だが、愚連隊小哨長をしていた弟の死因を究明するために、入院中の北京の病院を脱走して来たのだ。従軍記者荒木となのっていた。彼には弟が交戦中に情婦と心中したという発表は信じられなかった。彼は生前弟が使用していた居室から、弟の死因となったピストルの弾を発見した。心中なら二発ですむわけだが、弾はいくつも壁にくいこんでいた。部屋で死んだのだから、敵ではなく部隊内の誰かが犯人だ。戦況はすでに破局に達していた。死んだ梨花の妹でヤン小紅という娘が現われた。荒木は、彼女から姉の形見だという紙片を見せてもらった。大久保見習士官が死ぬ直前に、部隊長宛に綴った意見具申書だった。橋本中尉の不正を列挙し、隊の軍規是正を望むものだった。橋本中尉は、自分の不正がばれるのを恐れて大久保を殺し、心中の汚名を着せたのだ。しかし、荒木の身許が橋本にバレた。荒木の北京時代の恋人で、今は将軍廟で慰安婦をしているトミが荒木を追って来た。そして彼女は将軍廟の橋本からかかって来た電話に出て、荒木の本名を口走ってしまったのだ。将軍廟に向うトミと荒木を乗せたトラックは「途中で敵の砲撃を受け、トミは死んだ。荒木も将軍廟に着くと営倉に投げこまれた。しかし、脱出して橋本を撃った。--敵の大軍が押し入った。しかし、荒木は不思議に死ななかった。彼は馬賊の群に投じ、はるか地平線の彼方に消えて行った。

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映画レビュー

4.0軍隊の権力の狭間で

2024年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

興奮

『西へ』を観てから観たので、『西へ』と同様の作品かと思いましたがさにあらず、より戦争の不条理さを感じさせる作品でした。基本の筋は勧善懲悪ですが、そこに戦争という暴力と権力が入り混じることによって話に深みが生じます。特に印象的なのは愚連隊の軍曹でした。部下に迷惑がかかるからと上官の不正を見ぬふりをしたり、一方で家族持ちの補充兵を後送してあげたり、しかし最後は「命令は守りたい」と言って死に急いだわけではありませんが結局死んでしまう、実に権力の間で生き残るためにありそうな、ある意味では賢く、まともな人間の姿かと思いました。

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FormosaMyu

5.0『映画監督 #岡本喜八 生誕100周年記念プロジェクト in #新...

2024年4月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

『映画監督 #岡本喜八 生誕100周年記念プロジェクト in #新文芸坐 vol. 2』

本日は『 #独立愚連隊 』『 #独立愚連隊西へ 』を鑑賞。
漢(おとこ)臭さでむせ返る痛快戦争ウエスタンですが、笑いのなかに悲哀と哀愁も詰まった大傑作ですね。

#佐藤允 さんがとにかく豪快でカッコいい。
#大林宣彦監督 『#転校生 』の一夫の父役など優しくて威厳のある父親イメージが強かったですが再認識です。

#セルジオレオーネ監督 『 #ドル3部作 』、国内でも #日活無国籍アクション に先駆けて、これほどのテンポも良い戦争ウエスタンを撮ったことは改めてリスペクトですね。

上映後のトークショーでは、#佐藤允さんのご子息である映画監督の #佐藤闘介 さん、喜八プロダクションのプロデューサー #前田伸一郎 さん、監督作「クラユカバ」の #塚原重義 監督が登壇。貴重なエピソードトークを拝聴しつつ、佐藤允さんの貴重なインタビュー映像も観れて大満足でございました。

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矢萩久登

5.0戦争映画+西部劇‼️

2024年2月19日
スマートフォンから投稿

泣ける

楽しい

興奮

ようやく敗戦の混乱が収まった1959年、戦争映画といえば残虐非道な軍国主義や反ヒューマニズム、特攻隊の美学などを強調した作品が多かった中、それらを鼻で笑うような、掟破りの作品をブッ放してしまった岡本喜八監督の痛快作ですね‼️不謹慎かもしれませんが、ブッ飛んでて楽しくて、ゴキゲンにさせてくれる作品‼️ホント、大好きな作品です‼️終戦近い北支戦線、各部隊の落ちこぼれダメ兵隊ばかりを集めた通称 "独立愚連隊" がつくられる。この "独立愚連隊" へ弟の死因を調べに、従軍記者の荒木という男がやって来るが・・・。岡本喜八監督は西部劇ファンでもあり、ガン・マニアでもあったらしいので、中国大陸での戦闘が西部劇のパロディっぽく演出されており、この落ちこぼれ部隊が敵の大部隊をバッタバッタとなぎ倒す大奮闘ぶりが、豪快な笑いと、佐藤優さんの軽快な音楽に乗せてテンポ良く描かれているわけです‼️ハードボイルドにキメた主人公、佐藤允さんもホントにカッコいい‼️ただそれだけではなく、戦闘で負傷した後遺症で頭がオカシクなってしまった我が憧れ三船さん演じる兵隊の描写や、雪村いづみさん演じる慰安婦の悲劇など、ちゃんと戦争の愚劣さや、悪はイカンと謳い上げるニヒリズムがこれでもかと感じられる‼️要は完璧な戦争映画、反戦映画なわけです‼️この作品を岡本喜八監督の最高作とは思わないけど、我々映画ファンにとって岡本喜八監督と言えば "愚連隊" モノであり、"暗黒街" モノが、いの一番に思い浮かぶんですよね‼️

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活動写真愛好家

4.5人文の反撃

2022年2月13日
iPhoneアプリから投稿

反戦コメディと形容してしまえばそれまでだが、時折アクチュアルなホンネが垣間見えるのがよかった。主人公の荒木は太平洋戦争末期の戦場を、確かな経験と豊かな発想力で快刀乱麻を断つかのように切り抜けていく。薄ら笑いで上司に逆らったり、敢えて地獄の独立愚連隊を志願したり、どこか戦争を小馬鹿にしている節がある。

しかしそれは彼なりの精神療法であり、実際は彼もまた不条理な戦火に投げ込まれた一介の個人に過ぎない。道中で出会った19歳の志願兵に彼が「死んじゃいかんぞ」と忠告するシーンがあるが、このときの彼の表情の真剣さたるや。皮肉という精神療法、そしてそれを介して記述される『独立愚連隊』という映画すら貫通してしまう戦争のリアリズム。

戦争映画の体裁は取りつつも、そこへミステリや恋愛といった諸要素が過不足なく取り入れられていたのもよかった。なぜ荒木はある男女の戦死処理について疑念を抱くのか?裏で糸を引いているのは誰か?荒木とトミの恋の行く末は?そもそも荒木は何者なのか?

諸々の系列がこうして四方八方に展開されていくのだが、最終的には戦争という緊張感によってうまく束ねられていくのだから見事なものだ。本当の戦争においては、戦争が人間を使役するが、フィクションでは人間が戦争を使役することができる。映画内に巻き起こる諸問題をいっぺんに片付けるデウス・エクス・マキナとして戦争を引き起こすことさえできる。それはある意味で、軍事に対する人文の鮮やかなる反撃だ。

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因果