岡本喜八回顧上映。岡本みね子が語る「どうしても見てほしい1作」
2006年11月17日 12:00

「彼に任せると、何をやらかすかわかんないから……」と映画会社からは煙たがられていた喜八監督だが、そのフィルモグラフィーを紐解くと、戦争映画から軽快なアクション、ミュージカル、時代劇、そして洒脱なコメディまで、多岐に渡るジャンルを縦横無尽に駆けめぐった「鬼才」の姿が見えてくる。今回はその中の「独立愚連隊」(59)、「江分利満氏の優雅な生活」(63)、「日本のいちばん長い日」(67)など、喜八監督を語るには欠かせない3作品を含む、初期から中期にかけての傑作12作品を上映。監督夫人であり、68年以来プロデューサーとして監督と二人三脚で映画を製作してきた岡本みね子に話を聞いた。
「生きている間にやってくれていたらと思うけど、この特集上映は本当に嬉しい……」と語る夫人だが、戦後邦画界を代表する「反骨」の映画作家とともに共闘するは大変だったようだ。「会社側から依頼されたいわゆる大作は、自分で納得しない限り、絶対に撮りませんでした。会社は『コレを撮れば、次のも撮らせてやる』と言ってくるので、私も1本ぐらいやったら?と話したこともあるけれど、『そういうものじゃない。(会社の要求をのんで)作ってしまったら、次にいけなくなるんだ。そして最終的には流されていくだけだ』と頑として拒んでいました。出来の良い作品を撮ろうと思って映画を撮るのではなく、その時々の思いの強い作品を選んでいたと思いますね」
今回どうしても見てほしい1作は「江分利満氏の優雅な生活」とのこと。「常日頃から『お客さんが嫌がるものをみせてはいけない』と言っていた監督が、戦中派の気持ちを描かなければいけないということで、初めて、『お客さんが怒って帰るまでグダグダやってやろう』と腹を据えて撮った作品。彼のフィルモグラフィーで唯一、お客さんへの配慮よりも自分の戦中派としての心情を押し出した映画なんです」
今回上映される12作品は、来年2月に開催される第57回ベルリン国際映画祭でも特集上映されることが決定。ヨーロッパで初めて喜八映画が「発見」されることになる。第7回東京フィルメックス「岡本喜八 日本映画のダンディズム」は11月17日から26日まで東京・京橋の国立フィルムセンターで開催される。
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