東京裁判
劇場公開日:2019年8月3日
解説
「人間の條件」「切腹」の名匠・小林正樹監督が、戦後日本の進路を決定づけたともいえる極東軍事裁判・通称「東京裁判」の記録を、膨大な映像群からまとめあげた4時間37分におよぶ歴史的ドキュメンタリー。第2次世界大戦後の昭和23年、東京・市ヶ谷にある旧陸軍省参謀本部で「極東国際軍事裁判」、俗にいう「東京裁判」が開廷。その模様は、アメリカ国防総省(ペンタゴン)による第2次世界大戦の記録として撮影され、密かに保管されていた。50万フィートにも及んだ記録フィルムは25年後に解禁され、その中には、法廷の様子のみならず、ヨーロッパ戦線や日中戦争、太平洋戦争などの記録も収められていた。それらの膨大なフィルムを中心に、戦前のニュース映画や諸外国のフィルムも交え、小林監督のもと5年の歳月をかけて編集、製作。戦後世界の原点をひも解いていく。1983年製作・公開。2019年には、監督補佐・脚本の小笠原清らの監修のもとで修復された4Kデジタルリマスター版が公開される。
1983年製作/277分/日本
配給:太秦
日本初公開:1983年6月4日
スタッフ・キャスト
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2019年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
東京裁判の模様や、満州事変当時の満州の様子、溥儀の生前当時の映像や、大川周明の「奇行」など、貴重な映像資料のオンパレードでまさに歴史の記録として完成度が作品。あまりこういう言い方は好きではないけれど、この作品に関しては日本人は一度は観た方が良い。 東京裁判の、各国の思惑のぶつかり合いを克明に解き明かし、世界のうねりの中で日本人がどのような立ち位置に置かれ、どんな思惑で動いたのかを丹念にわかりやすく見せている。 この作品で主要な位置を占める東京裁判の記録映像は、アメリカ国防総省が撮影し、保管していたものだ。大変に貴重な記録であり、そこで何が争われていたのか、アメリカからやってきた弁護士たちは人権とアメリカの国益の板挟みになりながら奮闘していた姿、フィリピン人判事の憎悪、インドのパール判事の立ち位置や、ニュージーランド人の裁判長と米国側の確執など余すところなく魅せる。やはり記録とはものすごい重要なものだ。簡単に破棄していいものではないのだ。
勉強になりました。
重要な事です。
他の解釈を聞くまでは鵜呑みにはしません。
以上。
2022年8月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
何十年ぶりかの再見。(傑作ではないかもしれないが)労作である。
劇映画でも撮影した映像から何を取捨選択するかは悩ましいだろうが、本作では米軍の撮影した150時間ものフィルムとおよそ1万ページにわたる裁判速記録をマンションの作業場にこもって突き合わせ、さらにニュース素材なども収集して当時の歴史の流れを補強、編集するという気の遠くなるような作業の末、苦節5年かかって完成したという。4時間半という上映時間もいたしかたないと思われる。
被告らが絞死刑の宣告を受ける場面は緊迫する。日本では裁判の撮影は禁じられているので、(実際に傍聴席にいない限り)こんな場面を目撃することはまずない。しかし歴史の記録という意味では貴重だ。日本でも重要な裁判は一定の開示期間の制限を設けて映像記録を残してはどうか。
アメリカ人の弁護人が「彼らを裁くのであれば、広島、長崎に原爆を投下した者も裁かなければならない」と動議を述べるところが白眉。この裁判の核心を突いている。
佐藤慶のナレーションは重厚だが、石坂浩二ぐらいのフラットな調子の方がかえって効果的だったような気がする。
2022年2月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
まさに偉業です
もしも本作が作られなかったならば、この記録をこのように網羅的にまとめた映像作品は存在しないままになっていたのです
1983年公開の作品です
なぜ戦後40年近く経って作られたのでしょうか?
1952年の日本占領が終わってから25年が経過して、米国政府の日本占領関係資料が公開されたのが1977年頃だと思われます
これを緻密な映画を撮る事で有名な小林正樹監督が東京裁判に関する映像資料を調査して記録映画としてまとめるには5年もの歳月が必要であったから1983年の公開なのです
50万フィートものフィルムに目を通して編集されたといいます
400フィートで約11分ですので、約230時間もの映像を、目を皿のように観て英文の文書記録と照らし合わせ、日本側の記録と突き合わせて編集するのです
気の遠くなる膨大な作業と、猛烈な集中力、関連資料の読み込みと解釈の知的作業の積み重ねです
もはや想像を絶するものです
それがこの4時間半の記録映画なのです
東京裁判はご存知の通り極東国際軍事裁判のこと
改めてまとめるとこういうものでした
敗戦国日本を、戦勝国である連合軍参加各国が、戦争を起こした首謀者を特定し、戦争犯罪人としてその責任を裁くというもの
1946年4月29日起訴、5月3日開廷、1948年2月16日に結審、判決と刑の言い渡しは同年11月12日
場所は市ヶ谷の旧陸軍省(1937年まで陸軍士官学校)の大講堂
戦犯の逮捕は終戦直後の1945年9月11日から始まり100名以上が逮捕された
被告は起訴された28名
罪状は平和に対する罪
具体的には「侵略戦争を起こす共同謀議を1928年1月1日から1945年9月2日にかけて行った」というもの
および通常の戦争犯罪行為、人道に対する罪の三件
一審制の軍事裁判
判事は11ヶ国の連合国各1名で構成
裁判長はオーストラリアのウィリアム・ウェッブ
主席検察官はアメリカのジョセフ・キーナン以下各連合国の検察官
弁護団は日本人弁護団数名、アメリカ人弁護団21名
判決言い渡しは1948年11月4日から12日
公判中の病死2人と病気による訴追免除された1人を除く残り25人全員が有罪
絞首刑7人、終身刑16人、有期禁固刑2人
以上が事実です
本作はこの裁判自体の映像だけでなく、戦争に至るまでの記録映像、およびドイツの戦前と戦中の状況、敗戦後のニュルンベルク裁判についても関連するものとして、全体の三分の一程度の分量で含まれています
その範囲は起訴内容に基づいて1928年の張作霖爆殺事件から説き起こされます
東京裁判は、左右どちらか側からも批判を受けるものだと思います
右からは戦勝国による不当な報復裁判であると
左からは天皇の戦争責任を不起訴とした不徹底な裁判であると
小林正樹監督は、あくまで客観的に編集して構成され、ナレーションもまたその方針によってあくまでも客観的でなものです
死刑の光景も含まれていますが、感情に訴えかけるようなものは一切排除されています
裁判記録も弁護団の主張の鋭さも大きく取り扱われています
もし監督の意志があるとしたなら、なぜあのような日本人だけで300万人、連合国の犠牲者はその10倍に及ぶ犠牲者をだす戦争が起きたのか?
誰が起こしたのか?
誰に責任があるのか?
素直に知りたい、それが監督の意志です
右翼的な視点でも、左翼的な視点でも無く、政治的な思惑も一切無く作られています
一次資料を丹念に洗い、本当のところはどうなのか
それを誰からの影響を受けずに、自分の頭で考えたい
それだけのものです
だから私達観客もまた、あの悲惨な戦争についての原因と責任について自らの頭で、教条的にこうだと決めつけるのではなく、時系列にそって1928年から説き起こされる破滅への道を裁判記録と、当時のニュース映像とともに考察する事ができるのです
だから右からも左からも攻撃される映画であるかも知れません
政治的な洗脳ツールとして利用出来ないからでしょう
だからこそ私達観客は、逆に洗脳を解く機会になる4時間半になると思います
今年は2022年
日本が占領を解かれ再独立して、ちょうど70年の節目の年になります
サンフランシスコ平和条約が発効したのは、1952年4月28日のこと
今年のその主権回復の日は何か式典があるのかは寡聞して知りません
2013年には、当時の天皇皇后両陛下御臨席で式典がなされたとの記録があります
しかし、この70年間本当に日本は主権を回復していたのかどうか?
ふと、そんなことまで考えてしまいます
東京裁判で本当に裁かれていたのは、日本国民全員ではなかったか?
その判決は結果的に無期懲役であったのではと考えてしまうのです
そういえば聖書のバビロン補囚も70年でした
すみません、オカルトですね
それでも70年の節目に日本が式典を行えば、キリスト教国の人なら何かを感じるのかも知れません
戦後生まれ、まして平成や令和の生まれの日本人にまで、これからも戦争責任が永久無限にあるなんてことはナンセンスだと思います
真の主権回復の日がいよいよ訪れるのかも知れません
ウクライナで戦争が今日明日にもはじまりそうな雲行きです
欧州だけでなく、台湾も、北朝鮮もきな臭い昨今です
戦争は何故今にも起きそうなのか?
誰に責任があるのか?
21世紀の「東京裁判」は、ウクライナの首都キエフで?
いやモスクワで?
そして北京で?台北で?平壌で?ソウルで?
そのどこかで開かれるのかも知れません
誰も戦争を止められないものなのでしょうか?