血槍富士

劇場公開日:

解説

中国抑留から帰還した内由吐夢の第一回作品である。故井上金太郎の原作から「近松物語」の八尋不二、「酔いどれ囃子」の民門敏雄が脚色、「越後獅子祭り やくざ若衆」の三村伸太郎が脚本を書いた。企画マキノ、玉木の他、企画協力として溝口、小津、清水、伊藤が賛助した。撮影は「新諸国物語 紅孔雀」の吉田貞次。出演者は、「隼の魔王」の片岡千恵蔵、喜多川千鶴、田代百合子、島田照夫、「浮雲」の加東大介、片岡の子息植木基晴、息女千恵。

1955年製作/94分/日本
原題または英題:On the Trail
配給:東映
劇場公開日:1955年2月27日

ストーリー

仲間稼業の権八は東海道を、若様酒匂小十郎の槍持ちをつとめて、供の源太と江戸へ向った。同じ道を旅する一行は、小間物商人の伝次、身売りにゆく田舎娘おたねと老爺の与茂作、あんまの藪の市、巡礼、旅芸人のおすみ母子、挙動不審の藤三郎という男、最後に権八の槍に見とれた浮浪児の次郎等である。折柄、街道には大泥棒風の六右衛門詮議の触れ書が廻っているが、権八はそれ所ではない。朗らかで気立てが優しいが、酒乱癖のある若様を守って旅を終るのが主命である。供の源太が酒好きなので気が気ではない。一行は袋井に一宿したが、藤三郎が大金を持っているのに目をつけた伝次は、さては大泥棒とつけ廻すが、隣室で藪の市に肩を揉ませている巡礼こそ大泥棒六右衛門なのである。その夜、おすみの使を受けて権八も悪い気がせず外へ出ると、その隙に小十郎は源太を連れて酒を飲み始めたが、駈けつけた権八に制せられ事なきを得た。また旅が始まったが、大井川の近くで何処かの馬鹿殿様が始めた野立ての為通行止になり、大井川を前に長逗留となった。隙を狙って六右衛門は馬鹿殿の路銀を盗んだが、うっかりして顔を見知られた次郎に発見され、来合わせた権八の槍に怖気が出て簡単に縛についた。与茂作が女衒久兵衛におたねを渡して帰ろうとすると藤三郎に引留められた。五年前預けた娘を引取る為、稼ぎ貯めた金を持って来たのだが、娘は亡くなっていたのだ。小十郎は、素朴な人々を見て武士の世界に嫌気がさし、又源太と居酒屋に入った。権八の駈けつけた時は遅く、小十郎と源太は酔いどれ武士の手に無惨な最期を遂げていた。数日後、骨箱を抱えて国元へ出立する権八の悲しい姿が見られた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0内田吐夢監督こそ真の映画監督だったのです

2023年1月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

いやー面白かったあ~!
するするとあっという間に映画に引き込まれて気がつけばもうお仕舞い
エンドマークにパチパチと拍手したくなく見事な映画です
コミカルシーンに沢山笑って
ちょいホロリのシーンもありーの
終盤の大活劇もありーの
大満足の作品です
これほど面白い映画はそうそうないでしょう
日本映画の至宝のひとつです

監督は内田吐夢
映画界に入ったのは1920年、22歳のこと
松竹映画の発足は1921年ですから日本映画の黎明期から映画界にいた人物です
1926年には日活に入社、翌1927年には監督に昇進しています
なにしろ入江たか子をスカウトしたのはこの人なのです

本作の企画協力に名前のある小津安二郎監督は5歳年下、溝口健二、伊藤大輔とは同い年です

その後色々あって1941年に満州に渡り満映という映画会社に在籍するのですが、監督として映画を撮っていないので食客みたいなものと思われます

終戦後、帰国せず満州に残留して、満映の残した機材を中国共産党に引き継ぎ、そのまま現地で映画に関わろうとしたものの結局、1953年10月に帰国します
満州に渡ってから12年のこと
敗戦から8年もあとのことです
翌、1954年には東映に入社します
これはマキノ光雄らの満州映画時代のOBからの声かけによるものでしょう

本作は1955年2月公開
内田吐夢監督の戦後第1作です
実質的な戦前の最後の作品1939年の「土」からは16年ものブランクでした

原作は井上金太郎
この人は内田吐夢監督の3つ年下で、映画黎明期に内田吐夢とは俳優仲間だった人
脚本の三村伸太郎、脚色の八尋不二のふたりも1920年代からの監督の仲間てです

つまり腕ききの監督の復帰に、当時の仲間が総掛かりで結集していたというわけです

演出の半端ない見事さは惚れ惚れするほどです

内田吐夢監督は戦前では左翼的傾向の映画をいくつも撮ったそうです
また傑作で大ヒットした「土」は農村をただただリアリズムに撮っているようで、そこには社会主義的な視線があるように感じられる作品でした
それ故に、その内田吐夢監督が共産主義中国に自ら望んで残留して8年後に帰国したからには、帰国第一作はさぞかし共産主義的なメッセージの強い作品になるであろうと勝手に期待する向きもあったそうです

ところが本作ですから、随分バッシングを受けたそうです

終盤の「海ゆかば」の音楽は、旧海軍の葬送曲です
なぜ軍歌をながすのか!とか

勝手に期待して裏切られたもないものです

不幸な行きがかりの末に、大勢の人が死んでしまった
その鎮魂にこれほど相応しい音楽は無いそれだけのことです
大衆が求め共感できるものを提供してこそ、真の映画監督です

内田吐夢監督こそ真の映画監督だったのです

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あき240

4.5血染めの長槍

2021年9月15日
iPhoneアプリから投稿
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因果

3.5絵に描いたような富士山

2017年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

興奮

昭和30年製作の東映作品で、監督は内田吐夢。
東海道を旅するいろんな人たちの人情ドラマが展開、ほのぼのして終わりかと思いきや・・・。
武士階級の救いがたさがよく出ている。

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いやよセブン

4.5馬鹿な上司持つとつらい感じ?

2009年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

楽しい

タイトルは「血槍富士」なんですが、あの富士山は・・・。身分差別も背景にあるわけですが、アルコールはトラブルの元ですね。松平が悪役なのは珍しいような。最後の立ち回りは、心の表現なんでしょうね。槍の使い方は意外と実戦的なように思いました。

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さくII