地球交響曲 ガイアシンフォニー 第三番

劇場公開日:

解説

母なる星・地球(ガイア)に生きる生命の素晴らしさを謳いあげたドキュメンタリーの第3弾。今回は写真家・星野道夫、宇宙物理学者のフリーマン・ダイソン、外洋カヌー航海者のナイノア・トンプソンをフィーチャーした内容である。監督は前2作に引き続き龍村仁。スーパー16ミリからのブローアップ。

1997年製作/150分/日本
配給:オンザロード
劇場公開日:1997年10月10日

ストーリー

「死があるということは、とても幸運なことだと思います。次の世代に生きる場所を明け渡すことができるからです」と、宇宙物理学者のフリーマン・ダイソンは、21年前に息子のジョージと和解を果たした想い出の島、カナダのハンソン島を訪れ、ガイアについて語った。人間はガイアの大きな生命の一部分でしかない。しかし、生命には根本的に環境の変化に柔軟に適応して多様化しようとする傾向がある。そして、人類には宇宙に移住して多様化する力があるのだと。「数千年前の記憶が、僕たちの魂を復活させた」と語るナイノア・トンプソンは、伝統に基づいて復元された古代のカヌーを駆って、星を読むことだけで5000キロ離れたタヒチへ航海に出た。彼はこの無謀とも言える航海に挑戦することで、ハワイの先住民に虐げられてきた自分たちの文化を誇りに思う気持ちを甦らせることに成功した。彼らの先祖は数千年前、自然界のサインだけを頼りにポリネシアからやってきた。自然とつながった生活を営んでいた先祖たちの力を思うと、目新しいものを追うのではなく、過去とのつながりを取り戻すことが新しい文化を作り出すのだと、トンプソンは考える。写真家・星野道夫は、今回の撮影で最も重要な出演者のひとりとして名前があがっていたが、1996年8月8日、カムチャッカで熊に襲われて死亡してしまった。突然の訃報にショックを禁じ得ないスタッフは、星野のエッセイに登場する人たちを訪ね、インタビューを取るために訪れたアラスカで、不思議な縁で結ばれた人々との“運命”を目の当たりにする。それはまるで、星野道夫の魂が導く旅のようでもあった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0自然と生きるってこういうことなのね

2018年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

友人に勧められて鑑賞。 涙が止まらなかった。と、同時に自然に圧倒されました。命が自然に溶け込んでいくような気がしました。 予告だけをみると、”魂”の永遠性が強調されすぎて、ちょっと宗教がかった危ない映画にも見えますが、多様性によってつながれていくもの、過去と未来をつなくもの等、三者三様の話が紡ぎだされます。 「”死”は敗北ではない。”死”は終わりではない」というキャッチコピーが、しみじみとゆっくり体の中に沈殿して、昇華してゆきます。  監督ご自身が、ガイア(地球)の声を追いかけるだけではなく、この第3番では、星野氏の魂を追っているような映画。だから、ダイソン氏の話の中に「…『死』があるということは、とても幸運なことだと思います。次の世代に生きる場を明け渡すことができるからです。(それが進化を生む)…」というのが出てきたのかな。元々の持論でもあるようですが。 星野道夫氏(写真家)編:  「…アラスカの自然の中で熊が一番すごいのは何かっていうと一撃で人間を倒せる…」「熊がどこかにいて、もしかしたら自分がやられるかも知れないという感覚は、いろんなことに敏感な気持ちにさせてくれるんです」とおっしゃっていた星野氏が熊に襲われて命を落とされる。なんという事実。それを奥様を始め親しかった方が、それぞれに受け止め、その世界観を紡いでいらっしゃいます。突然の別れに、自分なりの答えを見つけ出そうとしています。「ワタリガラス」の神話を追っていた星野氏に思いを馳せながら。  星野道夫氏の写真は絵本とかで見ていました。透明感がありながら存在感がある彼の写真は、彼の魂が映し出されていたのだろうな。自然に溶け込んで、アラスカの動物たちが彼がいることに気がつかなかったこともあるそうな。そんな彼の命は自然によって断たれ、自然に帰る。自然と共に生きると言うことはこういうことなんだよね。自然に襲われる危険性と対峙しながらの生活を受け入れるその強さ。決して、レジャー化された、管理された自然ではないことを認識したうえで踏み込む世界。  彼の友人や奥様の話でウルウルしそうになった時に、よちよち歩きの星野氏の遺児の姿が映り、号泣。彼の魂が風や大地に溶け込んでいるのと同時に、”子孫”という形で繋がっていくのだなあと心に染みました。 フリーマン・ダイソン氏(理論物理学者)編:  息子さんのジョ―ジ氏(カヌーイスト)、ポール・スポング氏(オルカの音声を研究する海洋生物学者)も一緒に出演されています。オルカの声とトーテムポールが心に残ります。  「…生命には、根本的に、多様化しようとする傾向があります。環境の変化に柔軟に適応して多様化するのです。…」だとしたら、今、大きな変革の時?自分と違う感覚は、自分が受け入れてもらえなさそうで、つい、自分の感覚にしがみつきそうになるけれど、自分自身を多様化する、多様化を受け入れるって。変化を恐れないで。言うは易し、行うは難し。 ナイノア・トンプソン氏(タヒチからハワイまで古代遠洋航海カヌーで航行した方)編:  フラって祈りの踊りだったのねと改めて荘厳な気持ちに包まれます。  「…全く目の使えない状況が時として生じるのです。例えば、厚い雲に覆われた夜です。波だけでも見えればそれによって方角を知ることもできますが、それすらできない闇夜があります。そんな時に頼れるのは、海との関係で生まれる自分の身体内感覚だけなのです。…」そんな身体感覚を磨き上げる。簡単なことではないけれど、憧れます。自分だけではない。周りと自分の感覚。それなくては何も生まれない。 自然に甘えれば、一歩間違えば死に直結するのだけれど、なぜか空・海・空気・大地に見守られている気がして、おごそかな気持ちになりました。 ああ、そうか。最近、山を、海を黙って眺める。自分を山や海に預け、対峙したくなるのはこういうことだったのね。原点回帰。 空を見れば、どちらに進めばいいのか、星が教えてくれるような気がして、時々空を見上げてしまいます。 挑戦する勇気が欲しくなる時、いろいろと身につけてしまった錆を落としたくなるとき、思いだす映画です。

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とみいじょん