たそがれ酒場
劇場公開日:1955年6月19日
解説
新人灘千造が脚本を書き「血槍富士」の内田吐夢が監督に「緋牡丹記」の西垣六郎が撮影にあたる。音楽は「33号車応答なし」の芥川也寸志。出演者は映画初出演の音楽家小野比呂志と同じく声楽家の宮原卓也、「月に飛ぶ雁」の小杉勇、「花のゆくえ」の津島恵子、「美わしき歳月」の野添ひとみ、「母の曲」の宇津井健、「狼」の東野英治郎のほかに多々良純、加東大介、高田稔、有馬是馬など。
1955年製作/94分/日本
原題または英題:Twilight Saloon
劇場公開日:1955年6月19日
ストーリー
サラリーマンや学生、作業員の憩の場所「たそがれ酒場」。専属ピアニスト江藤釿也の伴奏で健一が唄っている。江藤は三十余年前歌劇界の花形だったが、愛弟子と妻が彼にそむいたので刃傷沙汰を起し、楽壇から姿を消した人だった。酒場で先生と呼ばれる梅田茂一郎はかつて戦記物で名を成した画伯だが、今はパチンコでかせいで暮している。通称小判鮫の汲島鉄夫は何時も梅田に焼酎を飲ませてもらう。競輪で穴を当てて得意になっている岐部と元隊長鬼塚大佐は、傍の卓子でサルトルを論じている大学の講師と学生達が気に入らない。地廻りの愚連隊森本は酒場に働く娘野口ユキのことで恋人鱒見とわたりをつけに来るが、鱒見にナイフで強迫されユキから手を引くと誓う。鱒見は大阪へ高飛びするからと、ユキへの伝言を梅田に頼んで立去る。鱒見の後を追おうとしたユキは、日雇い作業員をしている母親が怪我をしたと知らせに来た妹弓子を見つける。梅田はマネージャー谷口からユキの給料を前借りしてやる。新日本歌劇団の中小路竜介は健一の唄を聞き歌劇団加入を勧めるが江藤は何故か反対する。酒場随一の出し物エミー・ローザの踊りが始まると一人で飲んでいた多賀がエミーに斬りつける。多賀はエミーの元のパトロンである。梅田は毎朝新聞の山口の似顔を描いて金を借り、ユミの前借りを払う。中小路が江藤のかつての弟子と知り、健一は江藤の苦悩を思い煩悶する。ピアノを弾く江藤と唄う健一、それに聞き入る梅田の眼に涙が光っている。明日江藤は健一を新日本歌劇団につれて行くのである。