大虐殺(1960)

劇場公開日:

解説

「競艶お役者変化」の内田弘三の脚本を、「明治大帝と乃木将軍」の小森白が監督したもので、甘粕事件を描いたもの。「危険な誘惑」の岡戸嘉外が撮影した。

1960年製作/94分/日本
原題または英題:Beyond the Hills
配給:新東宝
劇場公開日:1960年1月30日

ストーリー

大正十二年九月一日、未曽有の大地震が関東地方を襲い、多くの被災者を出した。かねて社会主義の一掃を企てていた軍部は、この機を活用して目的を達成しようと図った。社会主義者、朝鮮人数百名を検束し殺害、遂には左翼の巨頭大杉栄が甘粕大尉によって殺された。--先輩の和久田に紹介され、大杉の同志になることを許された古川は、これを知ると、新聞誌者・高松、その妹で恋人の京子の言も入れず、軍部打倒のために立ち上った。銀行を襲って資金を調達した。戒厳司令官の福田大将を暗殺することに決まった。爆弾は同志の青地がダイナマイトを加工して作ることになった。計画が実行されることになったが、陸軍省の会議が予定より一時間遅れたため、この計画は未遂に終った。やがて大震災一周年が来た。福田大将の記念講演会が行われることになり、一味は今度こそと策を練った。しかし、また失敗に終った。次の機会--陸軍巨頭会議が陸軍省で開催されることになったのだ。彼らは準備にとりかかった。しかし、古川が事件を起し、死刑台に登ることを恐れた京子の密告によって古川のアジトが警視庁の手入れを受けた。そして、警備員に捕えられた。護送車に押しこまれながら古川は絶叫した。“亀戸、荒川の虐殺事件はなぜ処罰を受けないのだ!なぜ皆この不合理に怒らないのだ!俺たちが死刑になっても後に続く者は必ず出る!軍閥が亡びる日は必ず来る!”と。

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映画レビュー

3.5扱う題材の重さに対してあまりにも行き当たりばったりな展開と演出か...

2022年10月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 とにかく、冒頭15分の朝鮮人虐殺の場面があまりにも明け透けで圧倒されます。大震災による不安からの流言飛語を容易く信じ込んだ民衆と、それを宥めるという目的のためになんの深謀遠慮も無く軍部が朝鮮系の人々を捕縛して銃殺し、その銃声と悲鳴が問題になると今度はトラックに乗せて河原で開放すると見せかけてまたしても銃殺と火を放っての証拠隠滅…。  肉の焦げる匂いに鼻を摘む現場の軍部高官の描写が示すように、センセーショナルな内容をただ興行収入の一点目標ゆえに採用した当時の新東宝の製作方針が想起され、ただただ啞然です。  その後はようやく地獄絵図から移行しての天知さん演じる若き無政府主義者古川の悪戦苦闘劇ですが、同志を無残に殺されて己の一方的なヒロイズムで思考を単純化・先鋭化させ、想い人をはじめとした人間関係を整理し、女を買って恐怖を紛らわせつつ決心を決め、勝ち目の無い絶望的な闘いに身を投じる・・・つまりは相手とするところが違うだけで、まるでヤクザの鉄砲玉そのものです。  新文芸坐トークショーではテロの軍資金集めのための銀行家襲撃の様子のチープさや、終盤の陸軍省襲撃シークエンスでの見張りの薄さにツッコミを入れてそのへんの緩さを楽しみ処に挙げられておりましたが、出自や経緯は違えど暴力装置に頼る輩が辿る道は同じ、という真理が端的に顕れているところは、本作の真面目に評価すべき点かとも思いました。

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O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)