その場所に女ありて

劇場公開日:

解説

新人升田商二と「黒い画集 寒流」の鈴木英夫が共同で脚本を書き鈴木英夫が監督したサラリーマンドラマの異色篇。撮影もコンビの逢沢譲。パースペクタ立体音響。

1962年製作/94分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1962年1月28日

ストーリー

矢田律子は西銀広告の社員。周囲には男勝りのタイピスト祐子、広告拾いのミツ子、社員相手に金貸しをする久江、男遍歴をくり返す有子などがいる。最近低調な難波製薬が発売する新薬の広告費をめぐって広告会社の暗闘が始まった。西銀広告のライバル大通広告も必死。律子は、年下の男に入れあげ金を無心する姉実代に金を渡した後、難波製薬の広告予算を探る。そこで大通広告の強敵坂井を知る。二人は複雑な表情で見合った。律子は難波製薬の部長から新薬広告の予算を知った。西銀の製作室には熱が入ってきた。そんなところへ律子の同僚坪内に電話がきた。坂井はひそかに大物の製作者を探していた。律子は、その坂井とバーで会った。帰途、彼女はデザイナーの倉井と会った。スカルノ目薬のデザインでグランプリ日新賞をねらう倉井は律子に激しく売りこんだ。一方、西銀と大通の裏面工作はつづけられ西銀は難波の係長を抱きこみ、大通の坂井は坪内の寝返りを承諾させる。律子は難波の宣伝課長、坂井らとの麻雀の帰り、坂井の胸に抱かれた。彼女は自分の女を取り戻した。新薬の広告企画は、西銀も大通もパスした。それは両方とも坪内のアイデアが入っていた。後で、このことを律子は知った。律子は坂井に敗れたのだ。律子は辞表を出すという坪内に、次ぎの仕事まで預かっておく、といった。そんな律子の前にミツ子の死が待っていた。ミツ子は貢いでいた病気の男に捨てられたのだ。そして倉井はグランプリ日新賞をとった。激しい仕事の渦にもまれ、なお裏切られる律子。しかし、彼女は、女一人、強く生きていこうと思った。そこへ坂井から、もう一度会いたいと電話がかかってきた。律子は、街で合ったら、またお酒でも飲みましょうと、さりげなく断った。律子の心はすでに坪内との次ぎの仕事、宣伝費六千万円のクリームの宣伝広告に傾いていた。女一人茨の道を切開いていこうという固い決意を秘める律子の顔は厳しかった。

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映画レビュー

5.0カラーワイド画面で煌びやかに見える銀座と広告業界の悲哀

2022年1月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

銀座の大手広告代理店の営業をしている女性サラリーマンの仕事をシリアスな女性目線できちんと描いた業界物。

西銀座広告社の27歳になる営業職の司葉子が、大きな広告契約の為に、奔走するが、対抗する大東広告の宝田明に互いに惹かれながらも、裏切りに近い仕打ちを受ける。

当時の広告代理店業界をかなりきちんと描いた作品で、それ以外にキャリアウーマン物のとしても、とても先鋭的で興味深い。

しかし登場する多くの男達は、自分勝手で女に寄生するクズか小ずるい連中ばかりで、何処で彼女達を卑下している。
女達もそれを知りながら、ある人は流され、ある人は一人で生きて行こうとする。少しずつ失われてゆく若さに焦りながら。

この作品の女性達は目尻の小ジワを気にしたり、年下の夫の為に化粧したり、27歳で当時は、お局扱いで見合いを勧められたり。
男達に混ざって麻雀に励んだり。
男と同じ仕事をこなしているが、結局のところ性(女)を求められる。

ちなみに彼女が自分の給与は20歳8千円で7年目27歳2万5千円と呟くところも興味深い。

1962年当時の女性の立場が非常に分かるが、なんだか、60年近く経った今もあまり状況が変わってないと感じる。

印象的シーンは沢山あるが、何回か登場する銀座の会社の屋上が、周りのビル少なさもあり、摩天楼ぽい景観なのが、彼女達の満たされない心情とマッチして印象的。左に見える和光やデパートのアドバルーン、バッテングセンター?みたいなモノが見えたり、道で宝田と会話する場面で当時のヤマト運輸のお馴染みのカラーリングのトラックが走っているのが珍しい。

今日的な女性の仕事についての問題提起もあり評判どうりの傑作だった。

鈴木英夫監督の演出もキレがあり今回見た2本ともに脚本も書いているのも作家性が高いと感じる。

上映されたプリントについて
色を落としたオープニングから若干退色したプリントだか悪くない。

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