白い巨塔(1966)

劇場公開日:

解説

昭和三十八年から山崎豊子が「サンデー毎日」に連載した同名小説を、「大菩薩峠(1966)」の橋本忍が脚色、「氷点」の山本薩夫が監督した。撮影は「雁(1966)」の宗川信夫。

1966年製作/149分/日本
原題:The Great White Tower/The Ivory Tower
配給:大映

ストーリー

浪速大学医学部では、明年定年退官となる東教授の後任をめぐって、色々な前工作が行なわれていた。東の教え子財前五郎は最有力候補と目されていたが、東は五郎の傲慢不遜な人柄を嫌っていた。貧しい家庭に生まれた五郎は人一倍名誉欲が強く、苦学して医学部を卒業した後、裕福な開業医財前又一の婿養子となり、その財力を利用して、助教授の地位を手にしたのである。最も五郎は食道外科に関しては若いながら権威者であり、癌の手術をさせると見事な腕前を示した。五郎は日頃から教授と助教授の間には大きな差があることを実感していたから、教授候補者として入念な事前工作を進めていた。その中で、医学部長鵜飼に高価な絵を贈って味方にしたことは成功だった。一方、東は自分の派閥を拡張したいという含みで、東の出身校東都大学系列である金沢大学医学部の菊川教授を、後任教授に推薦した。その上娘の佐枝子と結婚させて、退官後の地位を確保しようという思惑もあった。こうして、教授選の日までに、財前、菊川、それに、基礎医学グループや整形外科の野坂教授の推す葛西という三人の候補者が推薦された。そんなある日、五郎は、同期生である里見助教授の依頼で胃癌患者佐々木庸平を手術した。しかし、五郎は、術後に庸平が苦しむ原因を探ろうともしなかった。教授選に気をとられていたのである。庸平は間もなく死んだ。やがて教授選の日、様々な思惑をもって投票が行なわれたが、結局、五郎と菊川が日を改めて決選投票を行うことになった。そうなると、財前又一の金力を背景にもつ五郎が断然有利である。買収、脅迫、あらゆる手段を用いて五郎は教授の地位を手にしたのだった。ところが、間もなく、佐々木庸平の遺族が、五郎に対して誤診の訴訟を起した。これはマスコミの注目するところとなったが、医学界の権威を守ろうとする大学側の証人は、五郎を無罪にしてしまった。そして純粋に医学上の立場から五郎に不利な証言をした里見は、大学を去らねばならなかった。今や、財前五郎の前に敵はなく、白い巨塔の中を自信たっぷりに闊歩している。

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映画レビュー

5.0橋本忍の技量に感服した

2022年1月1日
PCから投稿

原作を読もうと本を購入したのだが100ページくらいで断念した。説明が長すぎストーリーが面白くなさすぎた。あの分厚い小説を全部読んで面白いとこだけをギュッと凝縮し取捨選択してエンターテインメントなシナリオにまとめあげたのは見事だ。ほぼ得票工作の話なのだが非常に面白い。脚本家の技量が特に優れていると感じるのは主人公がどっからどう見ても感情移入できないタイプの男だという点だろう。普通こういう主人公だと観客はいやになって興味を失ってしまう。ところがこの作品ではそういう奴を描いておきながら見るものを惹きつけてしまった。脚本家、橋本忍のやはり世界一の脚本家だ・・いや脚色家かな。
演出は脚本に沿っており脇役が変に目立つことを避けるようにしている。エロもバイオレンスもなく会話だけの映画なのに見ごたえのあるものに仕上げたのは監督の力であろう。すべてが成功した作品だと思う。原作のファンにとっては物足りない部分はあっただろうが原作を読んでない私からすると文句の言いようのない傑作だ。
ついでに書いておくと手塚治虫の傑作、「きりひと讃歌」はこの作品に似ているという評価を受けている。実は私はそれが気になってこの作品を映画で見てみたのだ。確かに主たるテーマは同じだと思った。この映画のこういうところをもっとを膨らましてデフォルメして描けば更にもっと面白くなるのに・・・というのが「きりひと讃歌」では描かれている。そして結末もまた異なっている。それもまた漫画の歴史に残るような傑作なのでこれを見て面白かった人は「きりひと讃歌」もぜひ読まれたい。

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タンバラライ

5.0関西人な田宮二郎の大阪弁

2021年12月18日
PCから投稿

大阪弁を話す田宮二郎が見たくて観賞。2時間半の長編だが見応え充分。日本映画でここまで見せてくれるのは素晴らしい。原作者が大阪人で大阪を舞台にした映画で主演俳優は大阪人、 そして出演者も関西勢、こんな基本的な事がちゃんとできてる映画も珍しい。2000年リメイク版としてフジテレビ系でOAされた唐沢寿明版がきっかけだが、 田宮二郎の方が長身の為か良く見える。田宮二郎の身長が180cmというのも驚き。 当時としてはかなりの長身だろう。モノクロは残念だが完成度の高い映画だな。

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HILO

4.0山崎豊子と田宮二郎

2021年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

知的

隔世の感のある医療現場。1966年の平均余命は68歳。さもありなん。
ドクターXも現代の技術の上で成り立ってるのが良く分かる。
怖いのは人間のドロドロ心理が変わってないこと。そしてコロナ騒ぎを見るような業界の利権が最後の決め手という情けなさ。そして大名行列は続く。
山崎豊子なのでそのドロドロが社会批判にうまく繋がる。今ならターゲットが狭くなるけど池井戸さんか。
個人的には曽我廼家明蝶の又一のイメージが強い。映画版(1966)もTVで見てたと思うが年代的に理解できてなかったんだろう。そのあとのTVドラマ(1978)の印象が強かった。唐沢版の時も同年代の中では明蝶の又一の大阪弁とえげつなさを口真似して盛り上がった。TVドラマ(1978)やらんかな。

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HigeKobo

4.02時間では限界があるか。

2021年7月9日
iPhoneアプリから投稿

田宮版財前の白い巨塔。田宮版ドラマを観てないから正確ではないかもしれないが、唐沢寿明の財前と比べると、圧倒的に唐沢財前がよく感じてしまった。

今作は、なにわ感はよく出ているものの、もはや主人公たちが医者である必要すらあまりなく、単純に社内政治の映画になってしまっているのが残念。もちろん原作知らず、この映画だけみれば、クオリティの高さには度肝を抜かれるかもしれない。

しかし、あの長編の原作を知っているほど、愛人のタンパクさ、財前の医者としての魅力の皆無、里見の薄っぺらさなどが、この映画だけだと気になってしまうし、他にも焦点の当たらない人物、出てさえいない人物に思いを馳せてしまう感じ。

唐沢財前は全てにスポットをあて、描ききっている名作なんだなあと改めて感じてしまう。ただ、やはり本当の比較は、田宮版ドラマを全て観た後にこそできるのであろうが。

財前又一のキャラは、今も昔も本当に愛すべきキャラで本当に大好きだ。

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やべっち
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