上意討ち 拝領妻始末のレビュー・感想・評価
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三船敏郎、かっこいいーーーーー!
サラリーマン化した武士の悲哀物語?と最初は思ったがとんでもない。次世代へ繋いでゆく壮大な家族愛・夫婦愛、そして友情物語。婿に入ったが故の苦しくも辛い20年を耐えた夫(三船敏郎)、言葉も態度もきつい妻、そんな両親を見て優しく素直に育った長男(加藤剛)、ちょっと愚かな次男。自分の意志も気持ちもことごとく無視され悲しみをこらえて生きてきた若く賢く優しい娘(司葉子)。美しいがゆえに大奥に入り30才も年上の殿様の妻になり男子を生むも追い出され格下の武家に拝領される。姑はグダグダと文句をいうが、舅(三船敏郎)も夫となる長男(加藤剛)も、妻の市(いち:司葉子)を大切にし市も家に馴染み娘もできる。
ところが!話したくてあらすじを書きたくなりますが、私の技量では到底無理です。
とにかく平和な後期江戸時代、剣の達人といっても殆ど意味なく活躍のしどころもなく無為な日々を送り、上の立場の人間の言うことには唯々諾々、親戚抱えている本家として我慢を強いられる、人間関係ストレスいっぱいで今のサラリーマンと全く同じ心境で日々を過ごしていた三船敏郎。唯一心が通じているのは同じく剣の達人の仲代達矢。そんな三船敏郎が生きるか死ぬか切腹かという際に「今が一番生きている気持ちだ」ときっぱり言うかっこよさ!
本当に見てよかった映画です。内容がギッシリ詰まっていて、女性(姑、娘、母親、大奥、普通の武家の嫁、当家の主の妻)からの視点、男性(夫、父親、舅、祖父、長男、次男、お役目、友人、当家の主)からの視点が豊かに丁寧に描かれています。映像としては多用される顔の大アップがあらゆる感情を的確に捉えていました。
音楽は武満徹。尺八の音色が自然ながら現代音楽風でしゃしゃり出ずよかったです。そして勉強もしました。畳を全て裏返しにするのは、闘いの際、血糊で足が滑るのを避けるため!知らなかった!時代劇は色んなことを教えてくれます。「孫連れ狼」にもなる三船敏郎ですが、時代劇の三船敏郎をこんなにかっこいいと思ったのは初めてでした!
上映時間128分ですが長いとは全く感じません。それ程中味が濃厚で意味があり素晴らしい脚本と演出なんだと思いました。三船敏郎、加藤剛、司葉子、仲代達矢の四名が最高でした!
二大巨頭ゴージャス
面白かった。
先に言うのはそれでも同じ監督の『切腹』にはかなわないなあと思ってしまったからである。
ぐいぐい引っ張っていく感じが比べると弱いなあと。
三船プロ製作なので三船があくまでかっこ良くいるのはもうはずせないのでしょうけども。
うろ覚えだが三船は黒澤監督に「おまえは細やかな演技なんぞできないのだから
豪快に動けばいいのだ」と言われたのではなかったか。
それは当たってる気がする。
どうしても抑えた演技、人物だと何かうまくない。
地の底から響く声みたいな仲代達也に印象的に負けちゃってる。
それでも基本がハイレベルなので☆多いです。
斬りあいがあるだろうから足元がすべらないように畳をおこすなんて描写を他の映画では私知らないな。板張りに直に正座とか、細かなこだわり、すごいです。
小林正樹監督、橋本忍脚本 恐るべき傑作です 星5つでは足りません
惚れ惚れするようなとはこれのこと
するすると淀みなく展開される物語
無駄というものが一切ありません
余計なシーンもカットもセリフもまるでないのです
そんなものはすべて削ぎ落とされています
例えるなら体脂肪率一桁ぐらい
贅肉は一切ないのです
あるのは筋肉たる監督の演出と、その支配下の演技のみ
漫然と撮っているようなものはワンカットも存在しないのです
全編に緊張感がみなぎっており、集中力が途切れるシーンもまた皆無なのです
なので、私達観客の映画体験は濃密なものになるのです
圧倒的な映画体験です
冒頭の試し切りのシーンが、ラストシーンを予告しているなど構成の妙も鮮やかなこと
映画の面白さ、演出の巧みさ、演技の的確さ
テーマの気高さ
それでいて時代劇としての娯楽性もまた高くあるのです
何もかも文句のつけようがありません
直接的に関わった皆が死ぬ凄惨な結末
しかしそれでも二人に愛があったから新しい命が残されたのです
怨みをその子に託すのではなく、本当の愛を得ろと言い残す伊三郎の台詞
そこに巨大な感動があります
現代人の方が、江戸時代の侍よりがんじがらめになって生きているかもしれません
本作が製作された55年前も21世紀でも変わらぬ普遍性を持っているのです
小林正樹監督、橋本忍脚本
恐るべき傑作です
星5つでは足りません
封建社会対尊き愛
DVDで鑑賞。
原作は未読。
藩主の理不尽な要求に憤慨し、愛を守るために封建社会に果敢に挑んだ父子の戦いを描く、格調高き時代劇大作。
当時の厳格な封建社会において、本作のようなことが果たして起こり得たのか。そんな疑問が頭をもたげたものの、あの時代だからこそ、こう云う出来事があって欲しいと思いました。
愛のために上意に逆らい、最後の瞬間まで武士としての誇りを持って戦おうとした父子の姿と、理不尽なものは理不尽だと声を上げ、大切なものを守ろうとした勇気に感服しました。
一旦は上意に従って、いちを城に返そうとした与五郎でしたが、それを引き留めた伊三郎の言葉に、グッと来ました。
クライマックス、幕府に藩主の横暴を通報するため、決死の覚悟で江戸に向かう伊三郎の前に立ちはだかる親友の帯刀。
両者は剣の達人であり、腕を競い合ったライバル。ふたりが繰り広げる殺陣は手に汗握ると共に、とても辛かったです。
悲劇的な結末が待っていることは予想出来ていましたが、いざその時が訪れるとなったらやるせない気持ちになりました。
※修正(2024/04/09)
三船が息子夫婦に真の愛をみつけ、「男」を取り戻し、決死の形相で徹底...
三船が息子夫婦に真の愛をみつけ、「男」を取り戻し、決死の形相で徹底的に意志を貫く様に圧巻された。
本人が言にあったように、それぞれの立場があり、周りの者にとっては迷惑になることも承知の上の覚悟というのがすごい。
当事者の息子さんは一度気圧され屈指かけたりで、後半になるほど主導権が親父に移り影が薄くなっていくけれども、三船の長い身狭な生活、特にあの奥さんの尻に敷かれていた鬱憤が大噴火したようで、壮絶な生き様、死に様であった。
市原悦子のおっぱいは正直困惑した。
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