上意討ち 拝領妻始末
劇場公開日:1967年5月27日
解説
「怪談」の小林正樹監督が三船敏郎と初タッグを組み、1967年・第28回ベネチア国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した時代劇。同監督作「切腹」の原作小説「異聞浪人記」で知られる滝口康彦の短編小説「拝領妻始末」をもとに橋本忍が脚色を手がけ、武家社会の非人間性を描く。会津松平藩馬廻り役の笹原伊三郎は、主君・松平正容の側室いちを長男・与五郎の妻に拝領するよう命じられる。息子の幸福な結婚を願う伊三郎は断ろうとするが、藩命に背くことはできず受け入れることに。望んだ結婚ではなかったものの、与五郎といちの間には愛情が芽生え、子どもにも恵まれる。しかし正容の嫡子が急死したことから、新たな世継ぎとなった菊千代の生母であるいちを大奥へ返上するよう命令が下される。
1967年製作/128分/日本
配給:東宝
スタッフ・キャスト
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2022年1月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
惚れ惚れするようなとはこれのこと
するすると淀みなく展開される物語
無駄というものが一切ありません
余計なシーンもカットもセリフもまるでないのです
そんなものはすべて削ぎ落とされています
例えるなら体脂肪率一桁ぐらい
贅肉は一切ないのです
あるのは筋肉たる監督の演出と、その支配下の演技のみ
漫然と撮っているようなものはワンカットも存在しないのです
全編に緊張感がみなぎっており、集中力が途切れるシーンもまた皆無なのです
なので、私達観客の映画体験は濃密なものになるのです
圧倒的な映画体験です
冒頭の試し切りのシーンが、ラストシーンを予告しているなど構成の妙も鮮やかなこと
映画の面白さ、演出の巧みさ、演技の的確さ
テーマの気高さ
それでいて時代劇としての娯楽性もまた高くあるのです
何もかも文句のつけようがありません
直接的に関わった皆が死ぬ凄惨な結末
しかしそれでも二人に愛があったから新しい命が残されたのです
怨みをその子に託すのではなく、本当の愛を得ろと言い残す伊三郎の台詞
そこに巨大な感動があります
現代人の方が、江戸時代の侍よりがんじがらめになって生きているかもしれません
本作が製作された55年前も21世紀でも変わらぬ普遍性を持っているのです
小林正樹監督、橋本忍脚本
恐るべき傑作です
星5つでは足りません
2019年11月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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DVDで鑑賞。
原作は未読です。
藩主の理不尽な要求に憤慨し、愛を守るために封建社会に果敢に挑んでいった父子の戦いを描いた格調高き時代劇大作。
馬廻役の伊三郎(三船敏郎)は、藩主から息子・与五郎(加藤剛)の嫁にいち(司葉子)を拝領することとなりました。家督を与五郎に譲って隠居した伊三郎は、息子といちの仲睦まじい様子を暖かく見守る日々を過ごしていました。
しかし、江戸屋敷にいたお世継ぎが急逝したことで状況は一変。いちが藩主との間に設けた男児がお世継ぎ候補となったことで、突然城に呼び戻されることに…
「何を今さら」と突っぱねる伊三郎と与五郎。例え家を潰してしまうことになろうと、いちを守り抜くと覚悟を決めたふたりは、決戦に向けての準備をするのでした…
当時の厳格な封建社会において、本作のようなことは果たして起こり得たのか?―と云う疑問は頭をもたげたものの、こう云う出来事があって欲しいと思いました。
愛のために上意に逆らい、尚且つ最後の瞬間まで武士としての誇りを持って戦おうとした父子の姿に、胸が強く締めつけられました。理不尽なものは理不尽だと声を上げ、大切なものを守ろうとした勇気に感服しました。
一旦はいちを城に返そうとした与五郎でしたが、それを引き留めた伊三郎の言葉にグッと来ました。養子としてこの家に入って来て以来、鬼嫁の尻に敷かれながら己のことよりも家のために生きて来た彼は、与五郎といちの互いを想い合う気持ちにほだされ、今回の行動を決意したのでした…
クライマックス、幕府に藩主の横暴を通報するため、江戸へ行こうとする伊三郎の前に、親友の帯刀(仲代達矢)が立ちはだかりました。ふたりとも剣の達人であり、その腕を競い合って来たライバル同士。ふたりが繰り広げる殺陣は手に汗握ると共に、観ていてとても辛くなりました…
悲劇的な結末が待っていることは予想出来ていましたが、いざその瞬間が訪れると、やるせない気持ちになりました。
※修正(2022/01/20)
2016年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
これぞ時代劇という面白さ。
主人公である養子の三船敏郎の息子、加藤剛に殿様の側女、司葉子を娶れと指示がある。
主人公は剣の達人で、同じく腕の立つ友人、仲代達矢からは気をつけろと言われる。
結局、娶ることになるが、この嫁は優しくてとても出来た嫁でみんな喜ぶ。
殿様の跡継ぎである長男が急死、嫁が生んだ次男が跡継ぎになり・・・。
三船敏郎のかっこよさはほれぼれするが、司葉子の凛々しさも思わず掛け声を掛けたくなる出来。
チャンバラはラストだけだが、それまでは役者で見せてくれる。
三船が息子夫婦に真の愛をみつけ、「男」を取り戻し、決死の形相で徹底的に意志を貫く様に圧巻された。
本人が言にあったように、それぞれの立場があり、周りの者にとっては迷惑になることも承知の上の覚悟というのがすごい。
当事者の息子さんは一度気圧され屈指かけたりで、後半になるほど主導権が親父に移り影が薄くなっていくけれども、三船の長い身狭な生活、特にあの奥さんの尻に敷かれていた鬱憤が大噴火したようで、壮絶な生き様、死に様であった。
市原悦子のおっぱいは正直困惑した。