死の棘

劇場公開日:

解説

別離の危機に瀕した夫婦の絆と家族の再生を描いた人間ドラマ。島尾敏雄原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は「伽耶子のために」の小栗康平、撮影は「帝都大戦」の安藤庄平がそれぞれ担当。

1990年製作/114分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1990年4月28日

ストーリー

ミホとトシオは結婚後10年の夫婦。第二次大戦末期の一九四四年、二人は奄美大島・加計呂麻島で出会った。トシオは海軍震洋特別攻撃隊の隊長として駐屯し、島の娘ミホと恋におちた。死を予告されている青年と出撃の時には自決して共に死のうと決意していた娘との、それは神話のような恋だった。しかし、発動命令がおりたまま敗戦を迎え、死への出発は訪れなかったのだ。そして現在、二人の子供の両親となったミホとトシオの間に破綻がくる。トシオの浮気が発覚したのだった。ミホは次第に精神の激しい発作に見舞われる。トシオはその狂態の中に、かつてのあの死の危機を垣間見る。それは、あらゆる意味での人間の危機であった。トシオはすべてを投げ出してミホに奉仕する。心を病むミホと二人の子を抱え、ある時は居を転じ、ある時は故郷の田舎に帰ろうと試み、様々な回復の手段を講じるトシオだったが、事態は好転せず、さらに浮気の相手・邦子の出現によって、心の病がくっきりし始めるのだった。トシオは二人の子をミホの故郷である南の島におくりミホと共に精神科の病院に入り、付き添って共に同じ日々を送る。社会と隔絶した病院を住み家とすることで、やがて二人にゆるやかな蘇りが訪れるのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第14回 日本アカデミー賞(1991年)

受賞

主演男優賞 岸部一徳
主演女優賞 松坂慶子

ノミネート

作品賞  
監督賞 小栗康平
脚本賞 小栗康平

第43回 カンヌ国際映画祭(1990年)

受賞

コンペティション部門
グランプリ 小栗康平
国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞 小栗康平

出品

コンペティション部門
出品作品 小栗康平
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映画レビュー

5.0本作には結末はありません 結末は本作を観たあなたが現実の夫婦生活の中でこれから作っていくのです

2023年2月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1990年4月公開
「泥の河」のように白黒作品ではなくカラーです

死の棘とは?

針のむしろのことです
いたたまれないほどにきつくなじなれます
修羅場が延々とつづきます

地獄というのはいまお前さんが落ち込んでいるところなんだ!

この地獄から逃れる為に、奇声を突然上げて衝動的に自殺しようとするほどに

ついには一時的にうつ状態になってしまうのです

これは夫の不倫で精神に異常を来たした妻のミホのことではありません
十年も続いた夫の裏切りに、彼女の胸には汲めども尽きぬ怒りがいつまでも湧きでて止まらないのです

こうして夫の不実をなじり続ける妻の執拗な攻撃に耐えきれなくなった夫のなれの果てなのです

これ実話です
原作者の島尾敏雄の実話ベースの小説を映画化したものです

舞台は東京江戸川区の小岩辺り
時代は1954年、昭和29年頃です

時折フラッシュバックされるのは、1944年昭和19年頃の敏雄が特攻隊の隊長として赴任していた奄美群島の加計呂麻島での思い出です

短い回想シーンで壕から一人で引き出す緑色のモーターボートは震洋という海軍版の特攻兵器です
いまその近くが島尾敏雄文学碑公園になっているそうです

この島は映画ファンならよくご存知のはず
寅さんシリーズ第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」の舞台です
ほら、あのリリーさんの家があった島です
その映画は1995年12月公開ですから、本作の5年後のことです
もしかしたら、本作のことが山田洋次監督の頭にあったのかもしれません
しかし、その映画では島尾敏雄のことは一切触れられていません

敏雄の勤めている学校は、文京区の都立向丘高等学校定時制です

終盤の精神病院は千葉県市川市の国府台(こうのだい)病院

ミホとの島での馴れ初めや、敏雄が出版社に持ち込む小説の内容のことには映画ではほんのすこし映像にでますが説明はなされません
原作を読んだ人が分かればよいこととされているのみです

本作では、ミホが精神に異常を来した原因はあくまでも敏雄の十年に及ぶ不倫であることに焦点をあてています

あまりに救いのないまま物語は精神病院での治療のシーンで唐突に終わります

すねに傷のある方、まさにこれからそうなりつつある方には本作の死の棘がグサグサと刺さったことだと思います

不倫したことがなくても、妻を放置している人は沢山あると思います

長い単身赴任生活で、連絡するのも億劫になり用事ができて数ヶ月ぶりに連絡したら「あなた、生きていたの?」なんて言われたことのある自分はまさに本作の予備軍でした

死の棘のすぐ近くまで行っていたのだと思います
修復には長い長い時間がかかりました

本作には結末はありません
結末は本作を観たあなたが現実の夫婦生活の中でこれから作っていくのです

二人の家のボロボロの塀が、新しい板塀に変わるシーンを挿入する演出はそういう意図であったと思います

それが本作のメッセージだったと思います

数々の映画賞を受賞して当然の作品であると思います

小栗康平監督の実力の凄さ
松坂慶子、岸部一徳の表現力の凄さ
ノックアウトされることと思います

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共感した! 4件)
あき240

3.0特攻隊でした

2022年12月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2022年12月4日
映画 #死の棘 (1990年)鑑賞

#島尾敏雄 の自伝的小説を #小栗康平 監督が映画化。夫の浮気をきっかけに妻の精神が錯乱

#松坂慶子 の体当たりの演技が注目されたようです

子どもにしてみりゃ迷惑な話でしかない夫婦の問題

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とし

4.5終戦から10年後の東京。夫の浮気が発覚し、妻の精神が破綻する。心の...

2020年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

終戦から10年後の東京。夫の浮気が発覚し、妻の精神が破綻する。心の底から改心を誓ったのに、妻はしつこく夫を責め立て、地獄のような状態に。二人は戦時中に出会い、死を覚悟しながら愛を誓った。そんな棘だらけの責苦も純粋な愛ゆえで、幸せの表現かもしれない。小栗康平監督の傑作。

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k.k.

5.0怒りの 矛先

2018年11月4日
Androidアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
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jarinkochie