さらばラバウル
劇場公開日:1954年2月10日
解説
「太平洋の鷲」につづく東宝の戦争もの。スタッフは「太平洋の鷲」と大体同じ顔ぶれで、これに脚本の木村武(赤線基地)、西島大(花の中の娘たち)が新しく加わっている。「女心はひと筋に」の池部良、岡田茉莉子、「赤線基地」の三國連太郎、根岸明美、「続思春期」の久保明などが出演。
1954年製作/105分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1954年2月10日
ストーリー
太平洋戦争も末期に近い頃、ラバウル駐在の航空隊長若林大尉は、撃墜王の武名もさることながら、部下に対して極端に厳しい鬼隊長の名で鳴らしていた。出撃毎に激減してゆく機数、かえらぬ戦友たち。隊内の空気は日ごとにすさび、やたらに厳格な若林への反感がつのる。野口中尉の恋人、原住民の娘キムは彼らの愛を許さない若林をオニと呼んだ。戦闘は激化の一途をたどり、味方機をつぎつぎと食う敵の猛者トーマス・ハイン機と若林機--彼我の撃墜王はしばしば渡りあった。ある日の空戦で若林は首尾よく相手を撃墜し、落下傘でとび降りたハイン中尉は捕虜となったが、やがて脱走する。野口中尉の不時着を知った若林は単機救援に向い、敵弾に傷つきながらも野口を救いだしたが、ラバウルに帰投したときにはすでに野口は屍であった。「あなたは“オニ”ではなかった」と若林に言残し、キムは野口の後を追って死んだ。戦局はますます悪化、ついにラバウル航空隊はトラック基地に引揚げることとなった。四十機の残存機が北へむかって飛び去ったあと、若林は破損した愛機を整備し直してラバウル最後の一機を完成する。若林に思慕を寄せていた看護婦小松すみ子が、内地に帰ることになり、彼に電話をかけてくる。「どうか生きていて下さい。お大事に」。--謹厳一方の若林の胸は、はじめてときめいた。が、彼女の乗る輸送船が港もはなれぬうち、警報と共に突込んできた敵二機、うち一機は“黄色い蛇”のマークもあざやかなハイン機である。間髪を入れず飛びあがった若林は、輸送船を攻撃中の一機をまず墜し、ついではげしい一騎討ちの末めざすハイン機を海中に叩き込んだ。しかし急造の愛機は尾翼がけしとび、若林もまた海中に墜落する。輸送船の甲板では、すみ子が「あの人じゃないわ」と祈るようにつぶやいていた。