ゴルゴ13(1973)のレビュー・感想・評価
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ケン13
説明不要。さいとう・たかをの長寿名作コミック。
映像化としては1971年に初めてTVアニメ化されたが(今となっては幻の作品らしい)、映画化は本作が初。しかも実写。1973年の作品。
しかしさいとう・たかをは映画化に乗り気ではなく、諦めさせようと「オール海外ロケ」「主演は高倉健」と無茶な条件。
ところが東映がその条件を全て呑み、本当に映画化となったそうな。
『ゴルゴ13』は1983年の劇場アニメかOVAくらいしか見てないが、仕事の範囲はワールドワイドだし、モデルは高倉健と言われているから、ある意味理想通りの映画化。
某国秘密警察から国際犯罪組織のボスの暗殺を依頼されたゴルゴ13。
素顔は分からず、有力な情報はイラン国内に潜伏のみ。
ゴルゴはテヘランに入り、照準を定めていく…。
全編イラン・ロケ。異国ムードは充分。
キャストもイラン人。全て日本語に吹替られており、山田康雄や富田耕生らベテラン。
何だか午後のロードショーで70年代の洋画アクションを吹替で見てるようは感じ。
原作コミックやアニメの一話分を100分に伸ばした感じで、テンポの悪さや間延び感が否めない。
一応スナイパー・アクション、捕まり拷問や人質を取られてのピンチ、ヘリからの襲撃などアクションは盛り込んであるものの、どうも全体的に締まりが悪く、スリルにも欠ける。
アニメ版で見たハードさやハードボイルド感も感じられず。
健さんのゴルゴもスナイパーと言うよりアウトローな感じ。
ファンからは黒歴史なんて言われ、さいとう・たかをも不満を示しているそうだが、健さんは海外ロケとクールな役を楽しみ、我々も貴重な“ケン13”を見れただけでも、まあ良しとしよう。
黒歴史扱いであるのはなぜなのでしょうか? 本作の意義とは、なになのでしょうか?
言わずもがなの、さいとうたかおの超有名劇画の映画化です
原作の劇画は1968年11月から、半世紀以上に渡り今も連載中
さいとうたかお本人は、2021年9月24日に永眠なされました
連載は「自分抜きでも続いていってほしい」との本人の遺志に沿ってスタッフが続けておられるそうです
もともと分業体制で製作されていた作品ゆえそれが可能なのでしょう
内容は説明不要です
先の副総理にして財務大臣という国家の重要ポジションを長年務められた方も愛読者というのですから、それ程濃い内容であると言うことです
和製フレデリック・フォーサイスというべき情報量があります
全国のどのコンビニでもマンガの棚を見れば、単行本が何冊も並んでいるはず
どこの散髪屋の待合い席にも必ず置いてあります
これほどの人気劇画ですから、映像化は何度もなされています
実写映画は、本作を入れて2本
劇場版アニメは1本
OVAは1本
テレビアニメも2本
1971年と2008年
1971年版は最初の映像化作品でした
但し動かないスチールアニメというものだったそうです
さすがにこれは知りません
ということで、本作はその次の映像化作品で実質的に最初の映像化作品と言えます
原作者のさいとうたかお本人は映像化には乗る気がなかったそうです
断る口実として、高倉健主演、オール海外ロケを条件としたのに、東映がその条件を丸呑みしたので断れなくなり本作の製作が行われたのです
東映の期待の大きさが伺えます
従来の任侠映画はマンネリに陥りフォーマットとしての寿命が尽きようとしていると誰もが感じていました
たまたま「仁義なき戦い」が当たり実録ヤクザ映画に形を変えて延命されたのです
でもそこに高倉健の居場所は無かったのです
「仁義なき戦い」は、1973年1月13日の公開でした
新年第二弾作品
こちらは日の出のように人気シリーズとなって行きます
一方、本作は同じ年の暮れの1973年12月29日公開
正月映画ですから大ヒット間違いなしと考えていたのです
目論見通り行けばシリーズ化も考えていたことでしょう
ところが本作はなんというか黒歴史扱いなのです
理由は観れば分かります
高倉健のビジュアルは、一見なるほどゴルゴ13です
納得性があります
さいとうたかおが、断る口実として大スターNo.1の彼の名前を出したにせよ、原作のイメージはやはり高倉健だったに違いないのです
しかし、映画にしてみるとどうか?
これが不思議なことに違うのです
高倉健はゴルゴ13ではないのです
ゴルゴ13はコスモポリタンです
たまたま日本にルーツを持つだけの男
なのに高倉健は日本人にしか見えません
ドメスティックなのです
数カ国語を自在に操れるようにはとても見えないのです
ふとした時に見せる表情は任侠映画の健さんそのままなのです
ゴルゴ13はスーツが似合う胸板の厚みと肩の筋肉がなければならないのに、彼はスーツより着流しが似合う体型なのです
筋肉質でも種類の違う肉付きなのです
高倉健のゴルゴ13は米を主食にして味噌汁を飲んでいるように見えるのです
ステーキを好んで食べて、ブランデーを嗜むようには全く見えないのです
高倉健本人も、演じてみて違うなと思ったに違いないでしょう
オール海外ロケはイランでした
イラン側の俳優の演技は素人に毛がはえた程度
それでも外国である空気はでています
問題は彼らではありません
問題は日本から派遣された撮影スタッフです
撮影隊は日本で撮る陣容そのままなのです
せっかくイランで撮っているのにまったく海外らしさがでていません
照明も、カメラも、監督の演出も昭和の貧乏臭い日本の感覚なのです
テヘランで撮影しているのに、国内のセットにしか見えないのです
もったいない限りです
絵になるイランの古代遺跡や、果てしない砂漠の地平線にもあまり関心がないのです
それでももし、宮川一夫とか、木村大作の撮影ならこんな事にならなかったはず
これらをスタイリッシュに映像に切り取ることができれば、それが本編の撮影や演出にまで波及していったはずなのにと悔しく思います
小石の多いイランの砂漠でのアクションシーンは、まるで特撮ものでよく使う国内の採石場で撮ったかのような塩梅なのです
監督の演出もしかり
イラン側俳優の演技についても、日本の感覚で芝居をさせているからあのような体たらくになったのです
せっかくのオール海外ロケをどう活かすのか?
国際的なアクション映画にどう仕上げるのか?
どのような要素や工夫が必要なのか?
そのような高邁な志など、どこにもみえないのです
そもそも監督がゴルゴ13の本質とは何かとか、デューク東郷とはどういう人間なのかといった掘り下げた考察を全くしていないのは明白です
単に仕事としてしか撮っていないのです
がっかりです
情けないたらありゃしない
それが黒歴史の正体です
こうして高倉健主演のゴルゴ13はこれ一作で終わったのです
しかし、本作が導火線になったのでしょうか
1975年、本作と同じ佐藤純弥監督、高倉健主演で名作「新幹線大爆破」が撮られるのです
高倉健もヤクザ俳優から役柄が広がって、その後の活躍はご存知の通りです
それだけが救いです
本作の意義はそこにあるのかも知れません
マックスボアは鳥が好き
何といってもイランの全面協力の映画という点が印象に残る。そしてオール吹替だ。狙撃のターゲットとなるのは犯罪シンジゲートのボス・マックスボアなのだが、身内以外は誰もその顔を知らない。狙撃者に狙われていると知ったマックスボアは3人の凄腕の殺し屋を呼び寄せ、ゴルゴ13を抹殺しようとするが・・・
映画としては国際的なのにやはり日本風アクション。これが高倉健でなければ見る気もおきない作品だった。オール吹替にはびっくりさせられたが、妻を誘拐されたアマン警部の声優が山田康夫、シンジゲートのボスが富田耕生というしぶいキャスティングなのでかなり満足。見ているうちにアマン警部がルパン三世の顔に見えてくるから不思議だ・・・
健さんゴルゴは捕まって拷問されたりもするが、ここから脱出する手段も見どころのひとつ。この肉体美の描き方なんて『燃えよドラゴン』まで思い出してしまう。ゴルゴダの丘というイメージも描いていたし、イスファハンの建造物もよかった。で、女が殺されてもいいのか?というスリリングな展開では、さすがゴルゴ13らしい冷徹さを見せてくれる。でも、中盤のカーチェイスやラストの展開が残念。執念みたいなものを感じるけど、不自然すぎた・・・
ゴルゴ13:あなたは私に背中を見せている【邦画名言名セリフ】
【ゴルゴ13:個人評価=★★★★】
★★★★★:今すぐ観るべき‥人生を生きる為の何かを教えてくれる貴重な映画
★★★★:早めに観るべき‥観る人だれにでも何かを与えてくれる大事な映画
★★★:まあ観ても良し‥観る人によっては全く意味を持たない普通の映画
★★:観なくても良し‥単に時間だけを浪費してしまう可能性が高い映画
★:観てはいけない‥観た後に非常に残念な気持ちを感じてしまう映画
【ゴルゴ13:おすすめポイント(個人評価理由)】
1.元々健さんがモデルだったと言わしめる劇場版は故高倉健しかいない!!!
2.射撃シーンは当時の映像技術的には秀悦!!
3.日本とイラン合作で日本人が全くでないのがいいなあ!
【ゴルゴ13:名言名セリフとその場面】
・「あなたは私に背中を見せている」
→ホテルのシーンで、女が高倉健に発する名言名セリフ。
「不器用」な男の器用なスナイパー談
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