劇場公開日 1961年10月29日

「小津監督の数少ないカラー作品であり上品コメディー」小早川家の秋 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0小津監督の数少ないカラー作品であり上品コメディー

2024年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

「午前10時の映画祭14」にて鑑賞

小津作品と言えばモノクロのイメージが強かったのですが
私の認識不足でこの作品はカラー映画!
映画が始まった時、あっ、カラーなんだ!(苦笑)

画面に最初に出てくるのは中年時代の森繁久弥。
それだけで、小津っぽくな〜〜い(笑)

京都の伏見のとある古い造り酒屋と京の町屋を舞台に、
その家族の中で起こる悲喜交々を
絶妙なテンポの中に程よいスパイスの効いた会話で
非常に上品に描いたコメディーに
私には観えましたね。

小津安二郎〜〜どうよ〜〜〜??

みたいな人には観やすい映画だと思います。

で、月に8回ほど映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては

古い造り酒屋のご隠居さんを演じる
当時の中村鴈治郎さんが良い味でね、
造り酒屋を切り盛りする娘夫婦が
お父さん最近、何だかお出かけが多いわね〜
と怪しんで、こっそり使用人に後を付けさせてみると
ご隠居さん、ちゃんとそれを察知して途中で逆に
「おまいさん、こんなところで何してるんや!」
と、煙に巻こうとする。

このシーンが結構笑える。

それでもナンヤカンヤで
ご隠居さんのお出掛け先を探ってみたら
昔馴染みの浮気相手と偶然再会して
焼け木杭(やけぼっくい)に火がついたらしい。

それを察知した娘は、亡くなった母親がいつも
浮気されて辛い思いをしていたのを覚えているので
事あるごとにご隠居さん(父親)にチクチクと
嫌味を言って、それにまたご隠居さんもちょっと意地になり
「出ていくで!!」「出ていくからな!!」
玄関先で叫んだりしてる。(笑)

そんな話が伏見の造り酒屋の古い日本家屋や
京都の町屋を舞台に繰り広げられ
日本家屋の何気ない美しさが伝わってきます。

映画のタイトルは「秋」になってるのだけど
物語は「夏」の話。
だからずっと蝉の声が画面に流れ、登場人物は
扇子や団扇をずっとパタパタしてます。

今と違って夏の暑さをしのぐための
京町屋の風通しの良い感じが伝わってきます。
昔は風が気持ちよかったのでしょうね。

最後「夏」が終わって小早川家に「秋が来た時」に
この映画は終わって行きます。

時代の波に飲まれそうな古い造り酒屋。
家族の思惑より、自分の本心を優先する
家族の中で一番年下の娘。
何かを変えるのでは無く、
そのままの状況を受け入れようとする、
厳密に言えば家族とは血が繋がっていない嫁。
憎まれ口を叩くことで、悲しみを紛らわそうとする
親戚の振る舞い。

それぞれの立場で、「小早川家の秋」を迎える。

色々と余韻を感じる映画でした。

星のナターシャnova
トミーさんのコメント
2024年6月22日

共感ありがとうございます。
言い合いやしどろもどろも、現在は「なっ!」とか無言・・で片付けられてる印象ですが、昔の台本にはそこからの台詞が有り凄いなぁと思いますね。

トミー
トミーさんのコメント
2024年6月21日

ケイトウの花も夏らしかったですね。
ガールズトークありチャウチャウあり、今観ても楽しく面白い作品でした。

トミー