元祿美少年記

劇場公開日:

解説

「悪太郎売出す」の八尋不二の脚本を「王将一代」の伊藤大輔が監督、「青銅の基督」の長岡博之が撮影を担当した。主なる出演者は「若き日の千葉周作」の中村賀津雄、石黒達也、「太陽は日々新たなり」の片山明彦、「続・この世の花 第4・5部」の淡路恵子、雪代敬子、「絵島生島」の柳永二郎など。

1955年製作/107分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1955年12月21日

あらすじ

元禄十六年二月四日、水野家で切腹の順番を待つ矢頭右衛門七の回想。主君浅野内匠頭が殿中で吉良上野介に斬りつけたという報が赤穂に来た頃、矢頭右衛門七は十六であった。復讐を決意した家老大石内蔵助は同志を集めたが、右衛門七の父長助は病弱であり軽輩のためにその仲間に入れてもらえなかった。長助は自殺した。大石は長助の遺書を読み、遂に右衛門七を同志に加えることにした。母と供に江戸に向う右衛門七は道中でお茶の師匠山岡宗入とその姪しのを知った。しのは右衛門七にほのかな恋心をいだくようになった。赤穂浪士の中には軽輩が三人いた。年配の寺坂吉右衛門、矢頭右衛門七、その友人の佐野正平である。同志の人々はこの三人を何かにつけて冷い目で見た。正平はそれが辛くてともすると皆と一緒に死ぬのが馬鹿らしく思われてくるのであった。江戸に出て来たしのは吉良の邸に奉公することになった。吉良の附人の一人新見弥七郎はしのと結婚したがっていたが、しのの心には右衛門七の面影が宿っていた。しのの口から十二月十四日の茶会のことをきいた右衛門七は大石に知らせた。討入の日が決定した。その頃正平は病気の娼婦と親しくなり、人間らしく生きることを望んで同志に加わるのを止めてしまった。討入の夜、逃げ廻る吉良上野介の行方を浪士に知らせたためにしのは弥七郎に斬られた。右衛門七は弥七郎を斬った。回想から覚めた右衛門七に切腹の順番が廻って来た。水野邸の門外でひそかに右衛門七を見送るのは傷の癒えたしのであった。しのの打つ鼓の音で右衛門七はしのの生きていたのを知った。彼はしのに愛されているのを自覚したが、その時は死ぬ時であった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5砂は良いが...

2025年4月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

序盤の入りは圧巻。砂庭の見せ方は『雨月物語』と双璧。
切腹の順番を知らせる侍の緊迫した歩みが燦々と照らされた廊下を過ぎ、少年が切腹前に見る枯山水の玉砂が故郷の塩田の広大な砂紋へ。そこに浅野の訃報の知らせが届く。

恋心、身分差別ゆえの葛藤、討ち入りと直前の離脱...うぅーん。脚本の詰めが甘く風呂敷を広げ過ぎた印象。討ち入りから離脱した侍に関するエピソードは全部いらないんじゃないかな。あと、正式な活動員になれない理由が身分差って今の感覚からすると安易過ぎだし、その前提条件に納得させられる画面作りがされていなかったり...良いシーンが幾つもあるだけ惜しい。伊藤大輔は一流になりきれなかった監督、という感じを強く受ける。

切腹する庭にも砂紋があった。鼓が響く中、故郷の塩風を纏って死んだのだろうか。

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