霧の子午線
劇場公開日:1996年1月20日
解説
強い友情で結ばれたふたりの女性の愛と死をめぐる葛藤を描いたドラマ。監督は「きけ、わだつみの声(1995)」の出目昌伸。原作は高樹のぶ子の同名小説で、脚本を「寒椿」の那須真知子が手掛けた。撮影は「日本一短い「母」への手紙」の木村大作。主演はこれが初共演となった岩下志麻と吉永小百合の二大女優で、ふたりの間をゆさぶる男に「J・MOVIE・WARS」の中の一話「ワイルドサイド」の玉置浩二がふんしている。主題歌を中島みゆきが歌ったのも話題となった。
1996年製作/106分/日本
配給:東映
劇場公開日:1996年1月20日
ストーリー
クローン病という難病に犯されたちぎり絵師の沢田八重は、二度目の手術を受けた2年後、東京から函館へ引っ越した。八重を出迎えたのは大学時代からの親友で学園闘争をともに闘った、「函館日報」の記者・鳥飼希代子だった。彼女には文化部の後輩である高尾耕介という年下の恋人がいた。しかし、耕介はちぎり絵を出版する八重を取材した日、彼女と肉体関係を持ってしまう。手術の醜い傷がもとで恋人と別れていた八重は、希代子に後ろめたさを感じながらも、自分を愛してくれる耕介に気持ちを寄せていった。ふたりの関係に感づいた希代子は、八重の命がそのことで燃え続けてくれるのならという思いから、咎める気持ちを押さえていた。ある日、八重にひそかな憧れを抱いていた希代子のひとり息子の光夫は、耕介が八重の家から出て来るところを目撃する。光夫は八重に思いのたけをぶつけたが、彼女に手術の傷を見せられて愕然とする。その晩、八重は光夫に彼の本当の父親のことを話した。学生時代、八重の恋人だった淡路新一郎は、次第に希代子にも恋情を抱くようになり、彼女と肌を重ねてしまった。八重はそれを咎めず、3人で奇妙な生活を始めるが、そんな関係に耐え兼ねた新一郎はふたりを残して外国へ身を隠してしまったのだ。その後、希代子が妊娠していることが分かり、そうして生まれたのが光夫だった。新一郎がノルウェーのベンゲルンに住んでいることを知った希代子は彼のもとを訪ね、八重も心配して希代子の後を追った。ふたりはそれぞれの思いを語り合い、ダンスを踊るが、突然に八重が倒れ、そのまま帰らぬ人となった。親友を失った希代子はベンゲルンの湖に向かって、八重の名前を何度も叫んでいた。