喜劇 各駅停車
劇場公開日:1965年9月18日
解説
清水寥人原作“機関士ナポレオンの退職”を、「戦場にながれる歌」の松山善三が脚色、「勇者のみ」の井上和男が監督した喜劇。撮影は「喜劇 駅前金融」の岡崎宏三。
1965年製作/94分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1965年9月18日
ストーリー
ナポレオンを尊敬し、同僚からナポ源と呼ばれるベテラン機関士寺山源吉は、五十五歳の退職ま近い男。同僚の助士丸山咲平は貨物列車に乗っているが、目下、いつも桐生駅で会う客車に乗っているかわいこちゃんに夢中。だが、機関車の番組変更で、それも近く会えなくなる。翌日発表になった交番表は源吉と咲平の名が仲よく並んでいた。ベテラン助士咲平に源吉の退職を説得してほしいという菊岡助役の希望があったからだ。その夜源吉の退職後機関士を務めるために転勤してきた大田に誘われ、きみの経営するおでん屋“万両”に来た咲平は、きみから源吉の意外な側面を知らされた。それは戦時中、源吉の助士をしていたきみの亭主が、敵の艦載機に撃たれて死んだ後、子供をかかえてとほうにくれるきみを励まし、息子を東京の大学にやり、きみが商売を出来るのも源吉の援助があったからだというのだ。その夜咲平は胃けいれんを起し、国鉄病院にかつぎ込まれたが、病室に入って来た看護婦を見て気絶してしまった。その看護婦こそ、あこがれのかわいこちゃんだからである。翌日、源吉と同じ機関車に乗った咲平は身体の不快さをがまんしながら、貨車から離れようとしなかった。源吉は咲平の責任感の強さに心うたれた。咲平もがんこだが人情味のある源吉に次第に好意を抱いた。そんなある日、病院にゆき、遅れた源吉の代りに、菊岡助役が大田を乗せようとするところへ、かけつけた源吉は大田をひきずり降ろして、列車を発車させた。そして咲平に「人間は引きぎわが大切だ、ナポレオンにも間違いはあった……」と辞める決心を告白した。その夜咲平はかわいこちゃんから手紙を受けとり、喫茶店に出かけたが、そこには彼女の恋人が一緒にいた。機関士を辞める淋しさで焼酎を飲んだ源吉が、恋に破れウィスキーをがぶ飲みして鉄道自殺をくわだてる咲平にけつまずいた。源吉は、女にふられたといって、死ぬ気になる腑抜ぬけ野郎を轢いちゃあ、国鉄の名折れだと咲平につかみかかった。咲平は一本気な源吉の胸にすがって、思いきりないた。子供のいない源吉夫婦は咲平を自分の子として、家に置くことにした。鉄道生活を支えた妻美子の顔は明るかった。