家庭教師(1987)
劇場公開日:1987年11月21日
解説
福島に住む型破りな家庭教師の生活を、教え子の少女や母親との交流を中心に描く。渡辺文樹の第一回監督作品で、製作・原作・脚本・撮影・音楽・編集・主演と八役に挑んでいる。撮影は「BU・SU」の小林達比古が共同で担当。
1987年製作/95分/日本
劇場公開日:1987年11月21日
ストーリー
東北のある町に住む渡辺文太朗は30代で未だ独身。家庭教師をしながら生計を立てていた。だが、この売れっ子の家庭教師の生活ぶりはいっぷう変わっていた。彼の抱えている生徒は登校拒否や家庭内暴力など問題児や落ちこぼればかり数十人。あまりの忙しさに仕事が深夜におよぶこともしばしば。午前一時になろうが自転車で各家庭を回り、眠っている子供をたたき起こして勉強を教えることもある。また、教え方も厳しく怠け者には否応なく鉄拳が飛ぶ。女の子だからといって遠慮はない。ある家庭の女生徒は、登校拒否児だった。なんとか学校へ行かせようと、朝、渡辺がやって来る。はじめのうちは部屋の外から声をかけるが、しまいには反応がないのに怒り出し、フトンをはいで引っぱり出す。いやがる生徒を乱暴に階段下まで連れていき、泣き叫けぼうがパジャマがはだけようがおかまいなしだ。ある男子生徒は自分が教えに来たにもかかわらず、友だちと遊んでばかりでなかなか勉強しようとしないので、庭で取っ組み合いの喧嘩になった。だが、渡辺は決して教育者ぶったくそ真面目な男ではなかった。教師である前に人間であり、男であったのである。女生徒相手に恋をすれば、教え子の母親相手に不倫もした。バイタリティあふれる渡辺は家庭教師の合い間、自主映画を製作したりもしている。夏休み直前のある日、中学2年の少々ツッパった少女が母親に連れられて、渡辺のところへやって来た。名前は加藤恵美といい、やはり登校拒否児だった。おまけに男遊びが普通の女の子よりも激しかった。しかし、その美しい顔立ちとハッキリ自分の意見を言える恵美に渡辺は興味をもった。日ごろつき合ううちに、彼は恵美には重要な意味をもつ過去の体験が存在することを知った。彼女は小学生のころ、車に乗った若い男に連れ去られレイプされたことがあったのだ。その過酷な体験が彼女の性格や行動に大きな影を落としていたのは確かだった。恵美がツッパるようになったのもそれからだった。ある日の昼さがり、町のホテルで過ごした渡辺と恵美はごく自然に結ばれた。やがてそれは親に発覚して渡辺は教師としての責任を問われるが、反省する様子はない。まるでこれも人間同士の健全なコミュニケーションだと言わんばかりである。警察の取り調べに対しても彼は自分の正当性を主張したが、やはり淫行の罪は免がれなかった。しかし、それでも彼の家庭教師としての信用は揺らぐことなく、いまでも彼は東北のある町でその仕事を続けている。