ガス人間第一号のレビュー・感想・評価
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久々に見たら
使われてるBGMがウルトラQと同じだったのか…と独り言が出た。
当然本作品の方が先に作られているから、此方の方がウルトラQの雛形になったと言える。
しかしながら、特撮と言う括りで見るのではなくもっと渋い人間的魅力が色濃く出ている。
ガス化の演出で特撮の合成部分は良いと思うが、ガス化前に銃で撃たれても「うっ!」程度でその後も問題なさそうだったり、鉄格子を抜ける時にゴム製になったり、服だけになったり当時の技術では頑張っているものの「うん…まぁね…こんなもんだよね」と言葉が出てしまう。これを当時の大人たちはどんな目で観たのか?ちょいと気にはなる。
ガス化した強さは凄いのだけれど、ラストは切ない。
SF調の近松もの
「美女と液体人間」を観なおしたので変身3部作を観ることにしました、本作は第3弾。
打って変わって和ティストの悲恋物。ヒロインは凋落した日本舞踊の家元で和製ヘップバーンの異名を持つ八千草さん、宝塚出身だから踊りは出来なくはないのだろうが日本舞踊は難しかったのだろうか、面を付けての情念の創作舞踊。一方の男役はマッドサイエンティストの実験台にされ図らずも変身能力を身に着けたしがない独身男、犯罪を犯してまで入れあげるのが悲運の家元という構図。いきなり高級外車を買ったりするから目を付けられる、所詮住む世界が違うのだから無理筋の恋、結局は男の一途さにほだされての道行と近松物とSFを合体した奇妙な和ティストに仕上がった。東宝さんらしい外国市場も視野に入れて練られた企画なのだろう、前二作よりはまともなドラマになりました。
ウルトラQ の原形は本作で完成した
本作の白眉は、なんと言っても、宮内國郎の音楽だろう
東宝マークがでていきなり例の音楽が鳴り渡る
そう、6年後にウルトラQ に使われる音楽だ
もちろんウルトラマンにも使われるそれだ
特撮ファンなら、もうその瞬間でノックアウト間違いなしだ
劇中にもウルトラQ で使われる事になる劇伴が数多く使用される
爆発状のギザギザのワイプアウト、ワイプインもウルトラQ に引き継がれていくスタイルだ
透明人間からはじまった怪人のシリーズは本作にてようやく完成をみたといえよう
独特の雰囲気、世界観が確立されたのだ
事実、怪人映画シリーズは本作をもって終了となる
怪人シリーズが復活するのは、今度はテレビを舞台をしてのことになるのだ
本作からウルトラQ に直接バトンが渡されたといえる
つまり、本作はウルトラQ の原形なのだ
その意味で本作は重要な作品といえる
脚本はいろいろ突っ込み所はあれど、液体人間のように雑な物語でなく、伝送人間のように感情移入しづらいものでもない
その反省がよくいきていて、興味が尽きることなく、ぐいぐいラストシーンまで引っ張ってくれるほど極めて面白い
それだけでなく八千草薫の美貌と、彼女の宝塚出身を活かした舞踊をもって、この物語を悲しくも美しい格調高いものに仕上げているのだ
八千草薫29歳、彼女の起用は見事につきる
台詞にあるまま、この世のものでないほどの美しさだ
その美しい彼女が舞い踊り、衣に隠れて顔を上げた時、般若の面をつけている
美の化身が鬼に化身するのだ
情の為に鬼に化す
それは藤千代の行動であり、ガス人間に変わる水野の姿でもあるのだ
左卜膳もまたいい味だった
黒澤明監督のどん底は本作の3年前1957年の作品だった
それを思い出すほど
主人である藤千代と運命を共にする事に一切の疑問を持たない滅びの美学がそこにある
藤千代もまた、水野と抱き合って恍惚の表情を浮かべており、そのまま二人で死に行く陶酔に浸ってそのまま着火しようとするのだが、その刹那、爺のことを思いだす
次の一瞬、彼女は爺が従容として運命を受け入れようとしている佇まいを感じとり、涙が一筋流れてそれで良いのだと言う表情にかわるのだ
この演技は特撮映画にはその後60年を経ても、これを超えるようなものは未だにない
それほどの名演技だった
というか、これが本作を日本映画オールタイムベストのリスト入りにまで押し上げている理由だろう
犯人が煙の如く消え去る訳が無かろうという常套句からここまでの映画に仕上げた腕前は見事につきる
ガス化シーンも液体人間からは格段の進歩を見せている
出来はなかなか良いと思う
八千草薫さんが先日亡くなったことで、
この作品を井の一番に思い出した。
子供の頃を含め、何度か観ている。
なかなかいい作品ではないか。
大人になってからも、そして子供心にも
ホラーと言うより、もの悲しさが残る。
愛と哀しみのガス人間
変身人間シリーズ第3作。
DVDで2回目の鑑賞。
“特撮映画”だからと云って、敬遠するのはお止めいただきたい。確かにガス人間なんて荒唐無稽でございます。しかし、それだけの作品ではないのです…。
特撮映画史上類を見ない、濃密なメロドラマが展開され、ガス人間を表現する演出技術の高さも相まって、今なお出色の完成度を誇っている傑作なのだから。
ガス人間・水野と、零落した日本舞踊の家元・藤千代が織り成す、悲しい愛の物語がとてもエモーショナル。本多猪四郎監督ならではなタッチで、悲劇的な物語を淡々と描いているからこそ、その輪郭が残酷に浮かび上がって来ました。
絶望の淵にいた自分を救ってくれた藤千代への深い愛故に、犯罪に走ってしまった水野…。その想いを受け止めて、戸惑いながらも拒絶しようとしない藤千代…。身を焦がすような純愛に、心震えました。嗚呼、なんて切ないんだ!
手に入れた能力に溺れ、次第に追い詰められて滅亡していく姿に、“滅びの美学”を感じました。シリーズに共通した“異形の者が背負う悲哀”が、胸に刺さって来ました。
藤千代も、ガス人間事件を通して世間から批判される立場となり、云わば“異端者”となってしまいました。世間から疎外された者同士、惹かれ合って当然だったのかも…。
情愛は善悪を軽々と超越してしまうのか? ―しかしその行方には、物悲しい結末しか待っていないような気もして、めちゃくちゃ考えさせられました…。
――
“特撮の神様”円谷英二特技監督が創意工夫の末に編み出した、ガス人間の描写が秀逸の極み! CGなんて便利なものが存在しない時代に、如何にしてガス人間を創造するか…。試行錯誤の末に誕生したのであろう特撮場面に息を呑みました。
肉体だけが気化し、服だけがだんだんと崩折れていって、袖口や裾、襟から蒸気を放出しながら萎んでいく様がとてもリアルで不気味でした。実際目の前で見たら、絶対気絶する(笑)
※鑑賞記録
2020/09/14:Amazonプライム・ビデオ(3回目)
情炎の如く
東宝特撮1960年の作品。
変身人間シリーズ第3弾で、最高作。
連続銀行ギャング事件が発生、警察は犯人を追うが、逃げられてしまう。
乗り捨てられた犯人の車の近くに、日本舞踊家元・藤千代の家が。
不審に感じた岡本警部補は彼女をマーク、やがて犯人との接点と思われる証拠も見つかり、彼女を逮捕。
そこへ、水野という男が真犯人と名乗り出る。彼は、肉体をガス化出来る“ガス人間”だった…!
先駆的な「透明人間」、同シリーズの「美女と液体人間」「電送人間」と凝った特撮や映像表現を見せてくれるが、この“ガス人間”は他の追随を許さない。
CG無き時代、“ガス人間”をどう演出するか。
本物のガス、ドライアイス、作画、合成、ゴム人形などあらゆる方法を駆使して表現。
円谷英二は本当に、映画界きってのアイデアマン、それを形にするエンターテイナーだ。
本作初見はもう十何年も前。
それでも結構印象深く覚えていた。
とてもとても特撮映画とは思えないアダルトな雰囲気。
本作はガス人間・水野の悲劇であり、藤千代との悲恋である。
あるマッドサイエンティストの生体実験でガス人間になった水野。
水野の人生は日陰の人生。パイロットの夢破れ、図書館員として黙々と勤め、挙げ句の果てに騙されガス人間に。
そんな中出会った藤千代。
水野の一方的な偏愛だが、彼にとって何物にも変え難い存在。
日本舞踊の名家でありながら今は落ちぶれた彼女の為に銀行を襲撃。
全ては彼女の為に。彼女を再び、舞台で踊らせる為に。
「地球防衛軍」のミステリアン、「怪獣大戦争」のX星人統制官など東宝特撮で印象的な役を演じてきた土屋嘉男にとってガス人間は最大の当たり役。
その後海外からも土屋氏主演での続編の話が企画されたほど。
残念ながらその話は消滅してしまったが、是非見てみたかったものだ。
三橋達也、八千草薫の出演も東宝特撮異色のキャスティング。
若き日の八千草薫の美しさ、日本舞踊を披露するシーンは必見モノ。
かくして藤千代の舞台は開かれ、客席で水野は満足そうにそれを見つめる。
警察は燃焼ガスを用いて水野の息の根を止めようとするが、アクシデントが。
水野と藤千代の悲恋の末路。
情炎とでも言うべき、荘厳ですらあった。
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