鍵(1959)

劇場公開日:

解説

谷崎潤一郎の同名小説を映画化したもの。「炎上」のコンビ和田夏十と長谷部慶次に市川崑が加わって脚色し、「さよなら、こんにちわ」の市川崑が監督した。撮影は「女と海賊」の宮川一夫。

1959年製作/107分/日本
原題:Odd Obsession
配給:大映
劇場公開日:1959年6月23日

ストーリー

不毛の土地での不毛の物語。京都T大の内科に、この頃、剣持は通っている。古美術の鑑定家だ。近頃トミに衰えた。その注射をするのである。妻には内証だ。インターンの木村を娘・敏子の婿にと思っている。剣持の妻・郁子が内科を訪ね、夫の通院を知った。夫には黙っていた。彼女は少しビッコの夫をきらっていた。でも、夜は……。木村が訪ねてき、皆でブランデーを飲んだ。郁子は酔い、風呂場で眠ってしまう。剣持は木村に手伝わせ、裸身を寝室へ運んだ。翌朝、彼は木村に診療を乞い、自分は姿を消した。嫉妬という奴は大変、気持が若くなる。木村をネタに郁子をあおろうというのだ。その夜も酒になり、剣持は盛んに妻にすすめた。郁子は酔い、風呂場へ消えた。--翌日木村は呼ばれ、フィルムの現像を頼まれた。昨夜、木村の貸したポーラロイドのである。敏子はその撮影の現場を見た。剣持が眼鏡を妻の腹の上に落したのも。郁子がかすかに“木村さん……”と叫んだのも。--木村は敏子とすでに関係を持っていた。--彼女は家を出、間借りすることにした。彼女の下宿で、郁子は酔ってまた風呂場で倒れた。敏子が剣持に知らせにきたとき、一時間ほど木村と郁子は二人きりだった。帰りの車の中で、二人はそっとバックミラーで見合うのだ。その夜、剣持はめまいで倒れた。血圧が高かった。郁子がどこかへ出かけた。敏子がやってき、父娘は久しぶりに夕食を共にした。木村と郁子はたびたび会っている。彼女の貞操が、不潔な方法で、ある満足を……と敏子はいいかけた。剣持は怒り、彼女を追い帰した。--彼は妻には黙って、木村と敏子を大切な用だと呼び寄せた。いきなり、あんた方の結婚の日取りを決めようといった。敏子は父が降参したと解釈した。さらに“母は父が具合が悪いのを前から知っていて、父を興奮させて殺すために貴方を利用していたのかも知れません”と木村にいった。貞節な郁子は晴々としていた。婚約が整った故だ。剣持は映画に三人で行けと小遣いをくれた。郁子が用をこさえた。木村も用事があるといった。敏子が一人、残された。--夜。郁子が帰ってきた。彼女は木村のところへいってきたといった。すべて結着をつけてきた。木村との間には何もなかったといった。深夜、郁子の顔の上へ、剣持の頭がグラリと崩れ落ちた。郁子はテキパキと処置した。木村も来た。郁子は彼に鍵を渡した。裏口の鍵。今夜、十一時にね。女中部屋で、二人は抱き合う。郁子は彼に敏子と結婚して、ここに一緒に住み、開業すればという。木村はそれに従うつもりだ。間もなく、剣持は、その眼を見開いたまま死んだ。--葬式が終った。立派な骨董品は古美術商が争って持って行った。家も抵当に入っているらしい。木村はこの一家から足を抜きたいと思い始めていた。敏子は台所の農薬を郁子の紅茶に入れた。平然としている。婆やのはなが色盲で、ミガキ粉の罐とまちがうといけぬと中身を入れかえていたのだ。そのはなが三人用のサラダに農薬をふりかけた。薬がきき始めた。敏子が倒れた。郁子が眼を閉じた。木村は驚きの眼を見張った。なぜ、自分が殺されねばならぬのかわからなかった。--警察では、夫人は主人の後を追い、それを娘とその婚約者が同情したと解釈した。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第13回 カンヌ国際映画祭(1960年)

受賞

審査員賞 市川崑

出品

出品作品 市川崑
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映画レビュー

4.0変態エロスがとぼけた味わい

2023年2月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

昭和の昔はこんなエロさというものがあったなあと懐かしく思い出していた。
局部をそのまま出さずに貝になってたりヤカンになってたり。
それに似た表現を汽車で思わず笑ってしまったり。

それにしてもおっとりととぼけた味わいでありながら、百戦錬磨感漂う京マチ子と、変態えろジジイだが妻大好きすぎる鴈治郎の夫婦は、なんとも濃い。
若さ、美しさ等をそれぞれ対極に配置された人物の混線が面白い。

カメラワークも随所に覗き見をしてるような錯覚を覚えるもので、上品で金のありそうな家の実態をこっそり見る、そんな面白みもある。皮1枚剥いでしまえばどいつもこいつも大差ないだろうと言わんばかり。
泥臭く下品にも料理出来る内容を、ケロリと軽妙に味付けした監督の手腕だった。

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こまめぞう

4.0品がある

2022年1月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

知的

1997の川島なお美の作品より、品がある。
昔の広い家での距離感のある抑えた人間関係、会話がジワジワと秘めた欲望と対比して、ボディブローのように効いてくる。

鍵の意味合いが原作と同じで、よく表現されているのは1997の作品だが。

川島なお美より、京マチ子の方が抑えた大人の色気を感じる。市川鴈治郎の剣持も性欲むき出しの1997の作品より受け入れやすい。

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あみ

4.0鍵の意味が違う

2020年8月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

日記は終盤の最後の最後にでてきて、婆さんが無実になるというだけの存在です
鍵はというと日記の入っている引き出しの鍵ではなくて、家の鍵です
なので原作の鍵のもつ大きな意味が、本作では良く分からない結果となってしまっています
それでもお互いが観察しあい、だましあい、どこまで分かっているのやらという骨格は失われていません

郁子と敏子
京マチ子の極めて細いつり上がった眉、
それに対して叶順子の太い眉
年増女と処女との性的魅力と木村への積極性の差の表現を強調するための表現で、メイクさんへの監督からの演出指示だと思います

剣持と木村
内実は高価な古美術品は借り物、屋敷は抵当
内実は空っぽの男
木村もまた、倫理感も金もコネも失い空っぽ
違いは年齢でしかなかったことを、中村鴈治郎と仲代達矢との対比を整理して映像化してあります

その手腕はやはり凄い監督だと思います

一番感嘆したのは、はな婆さんの北林谷栄
彼女撮影時48歳です
日本一の老け役だと思います

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あき240

2.5汽車シーンは漫画でパクってるの見たことある

2019年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

谷崎潤一郎原作・市川崑監督・1959年製作。

原作は未読だがまたフェチ的世界を描く話だろうと思ったがやはりそう。市川崑らしいタッチは随所にあったが、かなり谷崎世界に寄せていた印象を受けた。夫婦や家族間の会話やムードがまるで異世界の物語のように感じるほど独特で隠微。そして全員気味が悪い。それを見事なカラー映像で撮ってる。

気になり過ぎる眉角度の京マチ子(豊満ボディのチラリズム)
底意地の悪い若き仲代達矢は始終目をギョロギョロさせて丁寧な言葉。
始終じっとりした目で見ている中村鴈治郎。
みな変だ。

やや薄味だが、モダンさと毒っ気と気味悪さで味付けした映画でした(隠し味に笑い)

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散歩男
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