帰らざる日々

劇場公開日:

解説

作家を志しながら、キャバレーのボーイをしている青年の現在と故郷の高校時代の青春を描く、中岡京平の第三回城戸賞受賞作「夏の栄光」の映画化。脚本は「危険な関係(1978)」の藤田敏八と中岡京平、監督も同作の藤田敏八、撮影は「黒薔薇夫人」の前田米造がそれぞれ担当。

1978年製作/99分/日本
原題または英題:Bittersweet
配給:にっかつ
劇場公開日:1978年8月19日

ストーリー

早朝の新宿駅。飯田行き急行に乗りこむ野崎辰雄の姿があった。父・文雄の突然の死が作家を志していた辰雄に六年振りの帰郷を促したのである。一九七二年、夏、辰雄の母、加代は若い女のもとに走った夫、文雄と別居し母一人子一人の生活を送っていた。高校三年だった辰雄は溜り場の喫茶店の真紀子に思いをよせていた。そんな辰雄の前に真紀子と親しげな同じ高校の隆三が現われた。マラソン大会があった日、辰雄は隆三に挑んだが、デッドヒートのすえ、かわされてしまう。数日後、辰雄の気持を知った隆三は、辰雄をからかうが、隆三と真紀子がいとこ同志とも知らず、むきになる辰雄に隆三は次第に好意を持つのである。卒業後、東京に出ようと思う辰雄、学校をやめて競輪学校に入る夢を持つ隆三、そして真紀子の三人は徐々に友情を深めていく。夏休み、盆踊りのあった晩、辰雄と隆三は真紀子が中村という妻のいる男と交際しており、既に子供を宿していると知らされ、裏切られた気持で夜の街を彷徨い歩くのであった。翌日、二日酔でアルバイトをしていると、隆三が足に大怪我を負ってしまった。競輪への夢も終りである……。飯田に近づくと、辰雄は見送りに来ていた螢子が列車に乗っているのを見つけた。それは彼の母に会いたい一心の行為であり結局辰雄は螢子を連れていくことに決める。飯田に着くと、父は、隆三の運転する車で轢死したことを知らされる。隆三も重傷を負っており、昏睡状態の彼を前に、辰雄は六年前の苦い思い出を噛締めるのである。父の葬儀の夜、真紀子が北海道に渡ったことを知らされる。翌朝、かつて隆三と走った道を歯を食い締って走る辰雄と、その後を自転車で追う螢子の姿があった。

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映画レビュー

3.0練られた創作の脚本が命の感傷的青春映画

2021年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

結婚を控えた青年の青春回顧を感傷的に描いた藤田敏八作品。練られた創作の脚本が命の映画。良く出来ているし、琴線に触れるセンチメンタルな内容を持っている。甘さと切なさが適度にミックスされたストーリーで完結している。ただ個人的には甘すぎた。話としては嫌いではないが、藤田演出に雑な映像処理が目立ってしまい、感動とは別に醒めてしまうところもあった。オーソドックスな青春映画としては良作。

  1978年 10月12日  ギンレイホール

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Gustav

4.5何やってんだ、俺

2020年2月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

そんな思いにとらわれて暗澹たる気分に沈んでしまう
そんなことは誰にだってあるはず

物語は1978年26歳の現在から、1972年18歳の高校3年の夏を振り返りつつ、舞台も現在の東京から高校時代の長野県飯田に向かいそこで終わる

26歳はもはや青春は終わろうとしている歳だ
否応もなく大人になってしまう

18歳の頃はこんな大人になるとは思いもしなかった
18歳の頃の思い出は、大人になる自分を形作っている
振り返ってみればああすべきであった
もっと努力すべきだった
他にやるべきことがあったはずなのに、なぜやらなったんだろう

みんなみんな帰らざる日々のこと
今更とりもどせも、やり直しもできない
あの時そう過ごした結果が、26歳の自分だ
そしてそのまま大人になりきってしまい、もうどうしようもないのだ

いや、まだあがいてみればなんとかなるかもしれない
そんなことは幻想だと本人も分かっているのに、主人公の永島敏行が演じる野崎辰夫はラストシーンでレース用自転車を懸命に漕いで峠道を登っていく
江藤潤が演じた競輪選手を目指していた黒岩の代わりに
あいつはもう足掻くこともできない
俺があいつの代わりにあがいてやらないでどうする

なんとなく小説家を目指すといいつつ、自堕落な生活を続けていただけだ
なにやってんだ、俺

帰らざる日々はもう残ってはいない
夕日の最後の光のようなものだ

青春が終わる、閉じられようとしている
その焦燥感が見事に表現された傑作だ

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あき240

5.0グッとくる。

2015年8月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

幸せ

東京から長野県飯田に向かう26才の男、その現在の姿と、18才の夏の出来事。甘酸っぱさ、ほろ苦さ、大人に近づきたい背伸び感、個と友のバランス。誰もが通り過ぎてきた10代と、置いてきた過去と向き合う20代の主人公の有り様は、胸にビシバシくる。
現在とあの夏の交錯するクライマックスは痺れた。永島敏行、とてもイイです。

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Nori