転々のレビュー・感想・評価
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転々としてみたくなる作品
三浦友和さんといえば二枚目路線というイメージが強かったんだけど、これは全く違う。
不思議な役柄がとても良かったです。
引き出しの多い役者さんだったのですね。
オダギリジョーさんは良くも悪くもいつもどおりという感じがしました。
(決して嫌いではないんですけどね・・・。)
彼らが回った散歩ルートを同じように転々としてみたいです。
【”幸せは知らないうちに、じんわりとやって来る・・。”寂しさを抱えた年の離れた男二人が、東京をブラブラと散歩する物語。】
ー 今作は、三木聡監督作の中でも、特に好きな映画である。-
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・幼き時に、父親に捨てられた男、竹村(オダギリジョー)は大学生だが、借金を抱えている。彼には、父と遊んだ記憶がない。動物園にも行っていないし、ジェットコースターにも乗った事はない。
・そんな、竹村の所に、ある日、福原(三浦友和)という借金取りの中年男がやってくる。彼は”俺が満足するまで、歩く”ことに、付き合えば借金はチャラにすると言い、二人はオカシナ散歩に出かける。
ー 劇中でも、語られるが福原は、愛した妻が浮気をしていた事に気付き、”殺してしまった”と淡々という。竹村は、
一度だけホテルに誘われた人妻が、福原の妻ではないか・・、と恐れる・・。-
・二人が歩く”想いでの場所巡り”
福原が妻と喧嘩した後に訪れたという”愛玉子(オーギョーチ)の店”のシーンや、思い出の神社を訪れるシーン。
・福原が、以前結婚式の時に”疑似夫婦”を演じたマキコ(小泉今日子)の家に転がり込むシーン。そこにやってきたふふみ(吉高由里子)は、マキコと福原が本当の夫婦だと思っている。
そして、竹村は福原と念願のジェットコースターに一緒に乗り、徐々に彼らは疑似家族の態を成していく。
ある日、福原が”カレーが食べたい”と言い(福原は、霞が関の警視庁に出頭する前にカレーが食べたいと言っている。)、4人で食卓を囲むシーンで竹村は”カレーが辛い”と涙を流す・・。
<今作は、三木監督のシュールな笑いを随所にバラまきながらも、竹村と福原の疑似親子にも見える散歩シーンが、とても良いのである。>
じわる
日本映画の課題としてどやの払拭があると思う。
どやとは承認欲求のようなものだ。
たとえばテレビドラマのSPECはさいしょのころは面白かった。
だが、だんだん疲弊して、やがてあざとさを感じるようになった。
『(中略)一方、今井舞は同じく『週刊文春』のドラマ記事で「今期ワースト」「全てが『これ、面白いでしょ』の押しつけ」などと批判している。』
(ウィキペディア「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」より)
どやとは謂わば「『これ、面白いでしょ』の押しつけ」のことだ。
“奇”をえがくとき、あるいはバイオレンスやSFやはっちゃけたorぶっとんだ設定を表現するばあい、日本映画ではつくりての勝ち誇り=どやがかならず見えてしまう。──ばかりか、それに価値をおいていることさえある。
たとえば北野武のアウトレイジには“威嚇”の目的がある。
北野武はバイオレンス映画の製作をつうじて「おれはこわい奴なんだぞ、なれなれしくすんなや」と言いたいわけ。
北野武のみならず、多くの日本のバイオレンス映画において、作家はかならずしもそれをつくりたかったわけではない。
過剰なバイオレンス描写をつうじて、じぶんの立場に箔をつけることが目的なのだ。とうぜんどやは丸見えになる。
たとえば園子温の映画ではどのカットにもずっと監督の得意顔が見えてしまう。
よってどやの払拭は日本映画の課題といえる──のだが、むろんそれは観衆の側からみた課題であって、つくり手であるほとんどの監督方々はそんなことは考えていないだろう。
ところで三木聡監督の映画にはどやを感じない。
唯一無二のへんな映画をつくる作家だが、“奇”なことを「どやっている」気配がない。
三木聡映画の特長として、暴力や性や差別的表現のなさがあげられる。というか、登場人物には社会性がまるでない。どうやって生きているのか、解らない。意識的に、人間臭を排除している。その頑なな態度は作家性だと思う。三木聡映画は三木聡がつくったことがわかる意匠をもっている。
とはいえ形容するのはむずかしい。
新劇や小劇場に親しんでいるひとなら演劇的と思うのかもしれない。
ストーリー上に無数の小ネタが展開される。
その小ネタが、陳套なあるあるではなく、ねらっている気配が希薄で、過激/卑猥/差別がなく、どやがない──から安心して面白い。
亀は意外と速く泳ぐ(2005)、インスタント沼(2009)、なんど見ても楽しい。
本作も同等に楽しいが、たわいもないストーリー上を小ネタが波状に連射される亀やインスタントにくらべて、“家族”という比較的どっしりしたテーマが(転々には)あった。──ような気がしている。
『ジャンル分類は困難な作品で、非常に深刻な背景を持つ物語が、明るく淡々としたコメディ風味で綴られる。』──と転々のウィキペディアには書いてあるが、あらためて思い返すと転々は是枝裕和のような“家族”のはなしだったと思う。
家で集ってカレーを食べるほどなのに、オダギリジョーも三浦友和も小泉今日子も吉高由里子も、みんな赤の他人。なのに四人は家族のように温かかった。
それが狙ったペーソスなのか、ぐうぜんに醸し出されたペーソスなのかは解らないが、転々には万引き家族やベイビーブローカーとおなじ、お互いを思いやる仮家族の姿があった。
だから終局で三浦友和が去っていくところはさびしい。
たとえ短いあいだでも家族のふりをした者どうしは、ばあいによっては本物の家族よりも居心地がいい“家族”のぬくもりをおぼえてしまう──。
とはいえ転々には感動へもっていきたい気配がなかったし“どや”もなかった。にもかかわらず、じわりときた、とてもめずらしく、きわめて大人な映画だった。
クズ男達の間に芽生える愛しき感情
オダギリジョーと三浦友和という、ダメ男を演じさせたらトップ2の二人が、まさにいい味を出してくれています。
特に三浦友和。『台風クラブ』で観たクズ男ぶりとは、またひと味違うクズっぷりがたまらない。
他にもクズ男で何本か出演してましたね。
すぐに思い出せないけれど。
オダギリジョーも、ドラマ『おかしの家』につながるクズ男ぶりが素敵すぎます。
このドラマ『おかしの家』は傑作だと思うのだけど、今はParaviでしか観れないのね。
いずれにせよ、僕はクズ男を観るのが好きなのです。
また、脇を固める小泉今日子、吉高由里子、ふせえりら共演陣もコミカルで素晴らしい。
おまけに僕の大好物の、ロードムービー。
ああ、濃密な100分間であった。
私は、岩松了が出てる映画を全て観るタチなのだ‼️❓
独特の雰囲気で、演技を楽しむ映画なんでしょうね。
三浦友和や吉高由里子とか家にいたら面白いでしょうね。
スーパーの面々もクスッと笑える人ばかり。
すき焼きにマヨネーズとかカレーとか、不味そうだけど、楽しそうでした。
楽しそうだけど、寂しそうで、笑えるけど、物悲しくて、麻生久美子を観たら時効警察で、小泉今日子が家庭的で、妙な違和感がクセになる映画でした。
暇なら、どうぞ。
ぶらぶら
むかしむかし、私は板橋区で生まれ、叔母達が住む荒川区と豊島区に良く遊びに行ってました。私が幼き時の東京は、自然も多くてぶらぶらふらふらと楽しい散歩が出来たのですが、今は車も人も多いし、春や秋の様な気持ちの良い季節が少なくなってしまったからなあ。文哉の散歩は、知らなかった場所に行って沢山の人達との出会いがあって、その結果過去の自分を慰める事が出来たのだと思います。人は人の縁に助けられるという事を示唆しているようでした。
仕事から帰宅後の疲れた時に鑑賞したので、作品の持つ昭和的な緩い空気感に癒されました。私も下町や杉並や世田谷を季節の良い時にぶらぶらしたいです。
笑えるし、しっぽりする
日本映画ならではなの、淡々と、何気ない会話と、散歩しながら街並みが変わっていく。そういう面白い映画。
オダジョーが相変わらず、めちゃくちゃかっこいいし、サブストーリーの3人が最高に面白い。
三木聡監督の長編映画の中ではまっとうなというか、よどみがない作品。...
三木聡監督の長編映画の中ではまっとうなというか、よどみがない作品。そして非常に良かったです。
一瞬だけれど時効警察の一番カワイイ頃の麻生久美子がみられるのも○
深夜ドラマの美味しいトコロ
10回も観たという方に薦められて鑑賞した。
監督は『時効警察』の演出をした三木監督。ということはもしかしら深夜番組のテイストが観られるのかと期待したのだが、実際それを裏切らずいい塩梅に“ゆるゆる”なペーストに仕上がっていた。それでいて泣ける要素も織込み、素敵な作品になっている。
小ネタも満載で、1回きりだけでは分からないシーンが、後になって回収されるところもきっちりしていてこれも又深夜テイストに華を添えるようで小気味いい。やはり邦画はこういうカテゴリを大事にすべきだということを再確認させられる内容である。
冒頭シーンの歯磨き粉を尻で押しつぶしてしまったところ、そしてラスト前のチューブ入りのチャズネを吐き出してしまおうか逡巡する妄想シーン。
登場人物も又個性派揃いで、それぞれがいい味とおとぼけを醸しだし、プロトしての仕事をきちっと魅せてくれている。
皆が皆、何かを埋め合うように、暖かく包んでいく表現が観る者を優しく溶かしていくような心地にさせてくれる。
三木節全開
大学8年になったオレは三色の歯磨きを買えば人生がどうにかなると思っていた
もう冒頭から三木節全開!この訳の分からないワードチョイス、最初のセリフであ、三木映画だって感じた笑。
三木映画の特徴である画面の外の小ネタが面白いも健在。駅の伝言板に大きな字でお願いです探さないでください!や長すぎるラーメン屋の行列とシュールさ全開。
麻生久美子扮する三日月しずかがカメオ出演してたり、スナックの名前が時効と時効警察ファンにはたまらない演出もアリ。
本編は2人の男が東京を散歩するというホントに面白いのかその映画みたいなあらすじだけど役者がやはり上手い。散歩の目的に自首という重いものがあるのにどこかゆるい笑。お互い家族の思い出を巡りながら、いつの間にや仮の家族を演じることに。しかしそれがまた温かい。オダジョーと三浦友和がホントの親子のような描写が描かれていたけどそれはお客の想像に任せるといった感じ。吉高のテンションがすごすぎてかわいいけどちょっとアレな人にも見えた笑。キョンキョンは変わらずキレイなおばさんいい老け方だと思う。
ラストのあっさり感は異常笑。もう少し余韻持たせてくれてもいんじゃないかなと思った笑。
歩けばわかる。やさしくなれる。
映画「転々」(三木聡監督)から。
久しぶりに、私の感性にはまって、クスッと笑い続けた作品である。
ストーリーは、俳優・オダギリジョーさんと三浦友和さんが、
あるきっかけで、都内を歩くという単純なものなのだが、
「歩くことで気付くこと」が盛り沢山。
街中に溢れている「変な名前の店名」(「時効」という「スナック」とか
「正確時計店」という時計店、「アワヤマンション」というマンション等)
また「喫茶」と書かれた暖簾がかかっている
「愛玉子」(オーギョーチイ)という食べ物が自慢の食堂など、
街には、よく分からないけれど、思わず「クスっ」と笑ってしまう
そんな風景が溢れている。まさしく「トリビア満載」である。
気になる一言は、溢れたメモから選択が難しく、
予告編で流れた「歩けばわかる。やさしくなれる。」という
キャッチコピーを採用した。
エンドロールで流れた、岸部一徳役の「岸部一徳」という文字にも
観た人は忘れることが出来ない可笑しさが、詰まっていたし、
「あはは」ではない「クスっ」という感覚、とにかく一度、観て欲しい。
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