転々 : 映画評論・批評
2007年11月6日更新
2007年11月10日よりアミューズCQN、テアトル新宿にてロードショー
ついに本気を出した三木監督の最高傑作
三木監督の前作「図鑑に載ってない虫」と同じく、ロードムービーとして始まる本作。とはいえ、妻を殺した借金取りと借金まみれの大学8年生がテクテク東京散歩。前作のように、アメ車をブッ飛ばすようなグルーブ感は……ない。ちなみに、このダメ男2人のゴールは桜田門にある警視庁。三浦友和扮する借金取りの自首が目的だが、いつもゴール(=着地点)が見えない三木作品では考えられないことだ。だが、これが定まったことで、ショート・コントの集合体にも見える、これまでの作品に比べ、映画としてのクオリティが一気に高まった。
さらに、後半には小泉今日子扮する場末のバーのママも巻き込んだ擬似家族による、偽ホームドラマに突入。そこで、監督お得意の小ネタにしか見えなかった前半のセリフやギャグがここに至る伏線だったことに驚かされる。さらに、遺体が第三者に発見されては自首にならないという、プチ・サスペンスも同時進行しながら、ラストではまたも三木作品に無縁だった、しんみり感動のサプライズが用意。「時効警察」でのコラボも記憶に新しいオダジョーを主演に迎えるだけでなく、あの相棒も登場させるなど、ファンサービスも忘れない三木監督。ついに本気を出したか、「時効」の存在も知らない観客も唸らせると同時に、岸部一徳を探したくなる最高傑作を生み出した。
(くれい響)