アズールとアスマール 劇場公開日:2007年7月21日
解説 「キリクと魔女」「プリンス&プリンセス」のミッシェル・オスロ監督による冒険ファンタジー・アニメ。中世イスラムを舞台に、人種も身分も違う2人の青年の冒険と成長を描く。領主の子である青い瞳のアズールと彼の乳母の子である黒い瞳のアスマールは、まるで兄弟のように育てられた。やがて成長したアズールは、幼い頃に乳母に聞かされた子守歌の国を訪れるが、そこでは彼の持つ青い瞳は不吉なものとされており……。
2006年製作/99分/フランス 原題:Azur et Asmar 配給:三鷹の森ジブリ美術館
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2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
『キリクと魔女』でフランスアニメ界で成功したミッシェル・オスロ監督の作品。アニメの動きは影絵のパターンで、その上に今までに見たこともないようなカラーで着色。セルに直接彩色していた頃は80色程度で、コンピュータ化した現在では1600万色が可能となっているらしいのですが、その多様な彩色をフルに活用しているといった感じです。しかも面白いことに、人物などは3DCGなのに、衣服が単一色で平坦なイメージ。さらに背景は華麗なアラベスク模様。顔だけは立体感があるという不思議な映像です。 舞台となるのはヨーロッパのある金持ちの家。アラビア人の乳母ジェナヌによって育てられた青い眼のアズールと実子である黒い瞳のアスマール。仲のよい兄弟のように育つが、ある時期にジェナヌ母子は故郷へ帰る。大人になったアズールは、幼い頃聴いた乳母の子守唄を頼りに“ジンの妖精”を求めて海を渡り、そこがイスラムの地であり、ジェナヌとアスマールは大富豪となっていた・・・というもの。 ヨーロッパとイスラム世界との文化の違い、そして眼の色が違うことで迫害されるという人種問題が描かれていました。異文化社会に適応するため盲目のフリをするアズールや、アラビア語には一切字幕がないことで、主人公の置かれた異郷の地での感覚が伝わってきます。また、ヨーロッパの封建社会と能力があれば富豪にもなれるイスラムの自由社会との対比、封建的な偏見や迷信的な偏見の対比など、二つの世界の違いも面白い。 物語は妖精を助けて結婚するという冒険ファンタジー。話は単調だけども、絵が綺麗なのでうっとりしてしまうほど。終盤になっていきなり笑わせてくれるところも印象に残りました。
2010年5月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
「キリク」もそうだったが、美しくエキゾチックな映像に載せて、ミッシェル・オスロはきっちりと問題の解決策を示してくれる。今回は移民問題である。 実はフランスは、移民統合が最も順調に進んでいる先進国である。2005 年に移民暴動が起きたが、この暴動には白人も多数加わった。これは、若年失業問題に対する暴力的抗議という認識が白人の間でも正しく共有されたからである。アメリカの KKK やドイツのネオナチのような、少数派への暴力とは正反対である。しかも、アラブ人は差別されているとはいえ、在仏アラブ人女性の 15.8% がフランス人と結婚する。これをアメリカ黒人女性が白人と結婚する率の 2.3% と比べると、フランスの受け入れ能力は明らかだろう(データはエマニュエル・トッド「移民の運命」より)。法の下の平等が実現しても、必ずしも隔離は解消されない。真に平等の精神があるなら、自由に結婚するはずであるし、結婚するべきである。 この社会学的文脈を知る者にとって、アズールとアスマールが友情を回復し、そして二人がパートナーを入れ替えて(しかも女性主導で!)、ジェナヌが「このほうがもっといい」と喜ぶ結末は、まさに個人間の友情と愛が軽々と集団間の偏見を乗り越えていくフランス的受け入れ能力の賞賛であり、満面の笑みでもって祝福するほかはない。クラプーもヤドアもシャムスサバ姫も、アズールを白人としてではなく一人の人間として受け止めた。むしろ偏見を持っていたのはアズールだったのだ。しかしアズールが目を閉じ心を閉じても、我々観客はアズールが間違っていることを知っている。描かれるアラブ世界もそこに住む人々も美しいからだ。違うから醜いのではなく、また違うから美しいのでもなく、違いを超えて美は普遍的に存在している。心を開けばそれに気付くはずなのだ。 一方、アメリカを見ると、ディズニーの「プリンセスと魔法のキス」ではヒロインが初めてアフリカ系アメリカ人になったが、その相手はやはりアフリカ系と思われる青年であった。いまだ「ジャングル・フィーバー」はアニメですらハッピーエンドの物語になれないのだ。
2010年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
見る前はどうせアニメと思ってましたが、とんでもない!! これは是非みなさんに見てほしいです。 このアニメはまず、映像が素晴らしい!! 妖精や人物、食べ物や花、建物、動物に至るまで描写が素晴らしく、色もすごく綺麗。 一度見たら、忘れられません。 不思議なのは、言葉。 フランス語とアラビア語で展開されています。 フランス語は字幕がふってあるのですが、アラビア語の部分は字幕がなく、何を言っているのかわからないはずなのに、なぜか何を言っているのかわかってしまうのです。 計算しつくされているのでしょう。 続編等があれば、また是非見たい映画です。
日本のドラマのバージョンアップのような映画を10本観るならこれを観た方がどれだけためになるか。 あまり話題にならなかったのが非常に惜しい。 ジブリも、もっと強力にプッシュすれば良いのに、秀作過ぎたのが仇となったか・・。 一言で言えば「移民問題」をズバリ付いた作品。 色彩鮮やかな画像と子供にも楽しめるストーリー展開をベースに監督もメイキングで語っていたように、内包するテーマである現在の欧米先進国が抱える「イスラム系移民」を料理してある恐るべき作品。 あまり、移民問題に関して敏感ではない日本人の心の琴線に触れにくいが、世界全体で考えるべき大切な問題を、このような映画に仕立て上げられるミシェル・オスロ監督に脱帽。 ぜひ、ブルーレイのDVDで観てください。