劇場公開日 2007年7月21日

「美しい色彩だ。でも立体感がない。」アズールとアスマール kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0美しい色彩だ。でも立体感がない。

2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『キリクと魔女』でフランスアニメ界で成功したミッシェル・オスロ監督の作品。アニメの動きは影絵のパターンで、その上に今までに見たこともないようなカラーで着色。セルに直接彩色していた頃は80色程度で、コンピュータ化した現在では1600万色が可能となっているらしいのですが、その多様な彩色をフルに活用しているといった感じです。しかも面白いことに、人物などは3DCGなのに、衣服が単一色で平坦なイメージ。さらに背景は華麗なアラベスク模様。顔だけは立体感があるという不思議な映像です。

 舞台となるのはヨーロッパのある金持ちの家。アラビア人の乳母ジェナヌによって育てられた青い眼のアズールと実子である黒い瞳のアスマール。仲のよい兄弟のように育つが、ある時期にジェナヌ母子は故郷へ帰る。大人になったアズールは、幼い頃聴いた乳母の子守唄を頼りに“ジンの妖精”を求めて海を渡り、そこがイスラムの地であり、ジェナヌとアスマールは大富豪となっていた・・・というもの。

 ヨーロッパとイスラム世界との文化の違い、そして眼の色が違うことで迫害されるという人種問題が描かれていました。異文化社会に適応するため盲目のフリをするアズールや、アラビア語には一切字幕がないことで、主人公の置かれた異郷の地での感覚が伝わってきます。また、ヨーロッパの封建社会と能力があれば富豪にもなれるイスラムの自由社会との対比、封建的な偏見や迷信的な偏見の対比など、二つの世界の違いも面白い。

 物語は妖精を助けて結婚するという冒険ファンタジー。話は単調だけども、絵が綺麗なのでうっとりしてしまうほど。終盤になっていきなり笑わせてくれるところも印象に残りました。

kossy