何が起こるかわからない理不尽さをメインとした現代的なホラー映画に慣れ親しんでしまうと、日本特有の愛憎劇を中心とした怪談には恐怖以外のモノを感じ取ってしまう。これは、男に尽くすタイプの女性を振ってしまう男が味わう恐怖なのかもしれないし、男女とも愛しすぎると憎しみに変化してしまう恐れがあるのかもしれない。
しかし、怖くなかった・・・現実に恋人と別れようとしている人にとっては怖い内容なのかもしれないけど、どこかで興ざめしてしまったに違いないのです。親の代の因果応報については、登場人物たちにはわかっていないこと、浮気性なわけでもない基本的には真面目な主人公新吉だけに、たまたま不慮の事故が引き起こした愛憎劇でしかなかったためかもしれません。むしろ、男の醜い欲が原因であったりすると、違った恐怖心が感じられたのでしょう。
ストーリーそのものには不満ながら、新吉(尾上菊之助)を好きになってしまう5人の女性のそれぞれの愛情表現が楽しめました。直情的であったり、控えめであったり、強引で強迫めいたものだったり・・・演技の面はさておいて、男性視点でいくと、好みの愛情表現タイプで差が生まれそうなところも興味深いところです。
世界各国でも上映されることが決まってるらしいですけど、欧米人の目に日本女性の愛情表現がどう映るのか。「死んでも尚愛し続ける」とか、「死んでから、他の女性と結婚するのは許せない」などといったストーリーはあるだろうから、それほどの評価を受けないのか・・・それとも、「日本人は未だに丁髷をしている」などと勘違いされるのか。