小学校6年の夏美(菅野莉央)は塾でも特進クラスで1番の成績だ。算数の問題は一桁の四則演算ばかりだったけど、すごいと思ったのは“塾”という漢字をスラスラ書けることです。姉の愛ちゃん(加藤ローサ)の看病もそつなくこなし、両親だって安心して留守番をまかせることができる優等生。だけど、留守中にお姉ちゃんが目覚めたという異常事態に病院へ連絡しなかったのは手抜かりでした。中身が8才の姉に振り回されることだって避けることができたのに・・・
最も心配していた加藤ローサの小学生になりきる演技も無難にこなしていたようだし、ストーリーだってしっかりしたファンタジーでしたが、台詞と台詞の行間を埋めるような演出が物足りない感じ。それに、いい表情を出して演技していたのは妹夏美だけだったかもしれません。しかし、それらの不満を全てカバーしてくれる綺麗な水の映像。そして、一見して怪しげな外国人に対しても、素直な心で接する愛ちゃんのピュアな心が水に溶け込んでしまうかのようでした。
メガネフェチが流行した反動なのでしょうか、「メガネを取ったほうが可愛いよ」・・・といった映画が『ただ、君を愛している』『7月24日通りのクリスマス』と、なぜか最近続いている。何かが変化する女性心理を上手く描いているとは思うのですが、「もしかするとコンタクトメーカーが資金援助しているんじゃないか」と疑ってしまうのはピュアな心が欠けている証拠です。
叔母の真理子(カヒミ・カリィ)も怪しげなカメラマンでしたが、「犠牲になってもいい」などと言ったときにはドキリとさせられました。彼女の優しい心がほんの少しの奇跡をおこしてくれたところにホロリ・・・ブラジルまで行って、ほんとに死んでしまったんじゃないかと誰でも考えてしまうところにストーリーの面白さがあった。
愛ちゃんが起きていた3日間。きっと真理子さんが起こした奇跡。冒頭に出てきた工場の廃材をバックに写した小さな手。ダイヤモンドリングも光っていたけど、こんなに深い意味があったとは。