ブラック・サンデー
解説
ベイルートの地下組織“黒い九月”は元アメリカ軍士官と結託し、マイアミで開催されるスーパーボールのスタジアムの観客8万人を一挙に殺害するというテロ計画を立てていた。その阻止に動き出すイスラエル特殊部隊のカバコフ少佐とFBI。彼らの息詰まる戦いを描いたサスペンス・アクション。「羊たちの沈黙」で知られるトマス・ハリスのベストセラーを映画化。日本では劇場公開が中止になったいわくつきの作品。
1977年製作/143分/G/アメリカ
原題:Black Sunday
ベイルートの地下組織“黒い九月”は元アメリカ軍士官と結託し、マイアミで開催されるスーパーボールのスタジアムの観客8万人を一挙に殺害するというテロ計画を立てていた。その阻止に動き出すイスラエル特殊部隊のカバコフ少佐とFBI。彼らの息詰まる戦いを描いたサスペンス・アクション。「羊たちの沈黙」で知られるトマス・ハリスのベストセラーを映画化。日本では劇場公開が中止になったいわくつきの作品。
1977年製作/143分/G/アメリカ
原題:Black Sunday
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「第二回午前十時の映画祭」劇場ごとに独自の取り組み
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2010年11月17日ジョン・フランケンハイマー監督、急逝
2002年7月9日1977年に日本公開される時の前評判は非常に高かったが、テロリズムの誘因になるとかの理由で急遽上映中止になった曰く付きの映画です。個人的にもその年に観た「フレンチ・コネクション2」と監督のジョン・フランケンハイマーがお気に入りだった為、とても落胆したことを記憶している。内容は第一次中東戦争(1947~1949)で肉親を失ったパレスチナ生まれの女性テロリストとイスラエル諜報特務庁のエース少佐の攻防の末の死闘である。そこにベトナム戦争で捕虜を経験した退役軍人のパイロットが加わり、虚実取りまぜたサスペンスアクションの迫力ある娯楽映画になっていた。つまり、社会的影響度の高いテロ組織の内部描写のリアリティと、そこから想像力を膨らませて恐怖心を煽り映画的な醍醐味にした創作の是非が問われたのであろう。パレスチナ問題を映画にするなら告発的社会派作品に納めるべきなのか。それとも、より多くの人に知ってもらう役目を持つ映画として面白さを追求するのは当然であるから、上質で面白ければ許されるのか。観る人の社会的視野と映画好きが試される難しい題材であり、感想を述べるのに躊躇うのも正直な気持ちです。
しかし、この映画のクライマックスである、テロリストが空からスタジアム襲撃し中東問題に全く関係のないアメリカ市民の大量殺害を企てるようなことを、当時なら荒唐無稽な作戦で終わったかも知れないが、その後2001年にアルカーイダによるアメリカ同時多発テロ事件を経験したことで、この映画の観方が大きく変わってしまう。あの時の深夜ライブ映像の衝撃と、長くアメリカ映画を観てきた経験値からの戦争予見の恐怖まで、けして忘れることはない。その約20年前に一般公開されていれば、テロリズムの恐怖の警告になっていたかも知れない。本国アメリカではどのように捉えていたのか知りたいところでもある。
この大胆にして奇想天外なテロリズムの小説(『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』『ハンニバル』のトマス・ハリス)をよく映画にしたと制作者を調べると、「ゴットファーザー」「チャイナタウン」「マラソンマン」を手掛けたロバート・エヴァンスという人だった。やはり独特の志向がある映画人のようだ。このトマス・ハリスとロバート・エヴァンスによって映画の骨格は決まったと思われる。実在のテロリストグループの“黒い九月(1970年~1988年)”のメンバーである優秀な女性闘志、且つ冷酷無比の殺人鬼ダリア・イヤッドの背景のリアリティは、パレスチナ問題で天涯孤独の復讐の鬼。この集団が1972年にミュンヘン・オリンピック事件の犯行で世界を震撼された歴史的事実。映画冒頭のベイルートのアジトにオガワという日本人が出入りしているシーンには、日本人としてどう表現したらいいものか。主犯格のアメリカ人マイケル・J・ランダーはベトナム戦争で何度も叙勲を受けるも、捕虜から生還後は軍から邪魔者扱いされ、それに妻の裏切りが重なり自暴自棄の孤立無援の人。毎週通う復員局傷病軍人更生センターのシーンでは、受付嬢が酷く冷たい対応をする。そして、時は1976年1月18日の第10回スーパーボール、場所はフロリダ州マイアミのマイアミ・オレンジボウル。レバノンのベイルートからカリフォルニアのロングビーチ、遂に最後の舞台と、ふたりのテロリストを追跡する殺し屋デイヴィッド・カバコフ少佐とFBIのサム・コリーが協力して闘う迫力満点の場面が繰り広げられる。
監督のジョン・フランケンハイマーについては、実は殆ど観ていない。30代で頭角を現した「明日なき十代」「終身犯」「影なき狙撃者」「五月の七日間」が未見のままで心苦しいが、監督35歳の時の「大列車作戦」には興奮した記憶がある。政治色の濃い題材を得意としていたようだが、映画の基本的な演出力の高さは、45歳の時の「フレンチ・コネクション2」でも充分知ることが出来る。そのスケール・アップしたのがこの作品といえるだろう。冒頭の“黒い九月”のアジト奇襲の緊迫感の演出、香港から密輸した爆薬をボートに積んで逃走する湾岸シーンの可動橋を使ったスリル、入院したカバコフ少佐を暗殺するために忍び込んだ末の強行(ここはヒッチコック監督のサスペンス演出を彷彿とさせる)、ダーツが放射状に拡散する試験爆発を強行するモハベ砂漠のクライマックス序章、アメリカ大統領のワシントン記念塔をバックにパレスチナ解放機構(PLO)のリアット大佐とカバコフ少佐が対峙する印象的な交渉場面、“黒い九月”の幹部を追い詰めるFBIの市民を巻き込んだ銃撃戦の荒々しい凄み、そして気球とヘリコプターがバトルを展開するサスペンスの頂点へと盛り上げるまでの様々な局面を構築する脚本の雄弁さと演出の簡潔にして的確なカメラワークの見事さ。実際のスーパーボールの競技場にカメラを入れて撮影した臨場感は素晴らしく、主演のロバート・ショウが観客席やフィールドを警戒巡回するシーンのリアリティはこの上なしだ。8万人の観衆と映画エキストラのモンタージュも上手く編集している。これらアクション映画の見所を結末まで持続し最後に爆発させた、フランケンハイマー監督の傑作と言っていいと思う。
カバコフ少佐のロバート・ショウは、「わが命つきるとも」でヘンリー8世を演じてその演劇素養を発揮したが、出世作の「007ロシアより愛を込めて」のアクション演技の方が買われたのか、「バルジ大作戦」「カスター将軍」「空軍大作戦」と軍人役が多く、「ジョーズ」の大ヒット作で更に有名になったイギリスの俳優。個人的には「スティング」のマフィアのボス役が好印象だ。この演技も身体を使ったアクションシーンを熱演していて、亡くなる前年の50歳とは思えない活躍振り。もっと長生きしていれば深みある演技の代表作を残せたと思われる。飛行船の操縦士を演じたブルース・ダーンは今も活躍するベテラン俳優で、個人的に好きなアメリカ男優。顔が個性的で演技も上手い。キャリア後半は殆ど観ていないが、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の時は久し振りに嬉しくなった。ここでは傷痍軍人の精神的な苦痛を好演している。スイス出身のマルト・ケラーはビリー・ワイルダーの「悲愁」と並んで、この女性闘士ダリヤ役が代表作になるのだろうか。殺人鬼の怖さと復讐の為なら何でもありの強引なテロリストの内面をすんなり演じている。振り切れた女性は怖いです。
カバコフ少佐がテロリスト・ダリアの経歴調査を依頼するシーンの台詞が心に残る。敵対するリアット大佐に語りかける言葉。
(時には勝ち、時には負けた。だが、今度は共通の敗北になる)
テロリズムはそうかも知れないが、結局戦争はどちらも敗北の結果しか残せない。勝ったと思っているのは政治家や軍人の自己満足でしかないのではないか。もし、このようなテロが完遂していたら、第三次世界大戦に及んでしまうだろう。その恐怖を持って見るべき映画である。
テロリスト側なのか警察側なのか、どっち側に主眼を置いているのかわからない。本当はテロリスト側に思いいれしたような描き方がしたかったんだけど、どこかから圧力がかかってこうなってしまったんじゃないだろうか?ネタが面白くサスペンス・クライマックスにもたっぷり時間かけて盛り上がったんだが、人間ドラマ的に盛り上がってないので残念なことになってると思う。クライマックスは脚本の粗っぽさも目立つ。そんなんで上手く行くんなら何でも全部うまくいくんじゃない?って気がする。
これを見て思い出した映画は高倉健の「新幹線大爆破」だ。あっちの方がそこんとこの完成度が高くて良かったな。
製作直後はテロ対策上等の理由から
長く非公開となった有名な作品でしたので、
私にとっても幻の映画でしたが、
ついにレンタルして観ることか出来た。
この映画は、製作から34年後に
キネマ旬報ベストテンでの洋画部門34位との
不幸な歴史を背負わされてしまったが、
本来の公開時に上映が禁止されたことが
ある意味納得も出来る
リアリティ感溢れる優れた作品だった。
私は少し前の「グラン・プリ」のレビューで、
ジョン・フランケンハイマー監督は
「大列車作戦」と合わせ、本物の香りのする
映画作家と評価させていただいたが、
この作品でも同じ印象を持った。
特にスーパーボウルの大競技場での大群衆の
映像は、CGの無い時代の映像としては、
本物の香りが漂ってくるフランケンハイマー
監督らしいシーンだった。
私が思うに、彼の作品は
“大人のサスペンス”と形容出来るような、
落ち着いたリアリティ感に溢れており、
この作品でも特に前半は、
緊張感漂う納得の描写が続いた。
私の特に好きシーンは、
モサドの少佐が体力的に、更には
自らの行為自体にも疑問が生ずるという
精神的な限界を感じながらも、
同僚の死を契機に
再び気力を取り戻し、自ら点滴を外して
テロリストへの対峙を決意するシーンだ。
繰り返される中東悲劇の象徴的場面でも
あると理解しつつ。
ただ残念なのは、後半になって女テロリスト
の仲間が海岸線で射殺されるシーンからは
リアリティ不足を感じてしまい、
機長が交代する経緯や、
機関銃を撃ちまくっての特殊爆弾を積み込む
展開には流石に無理栗さを感じた。
飛行船が満席の大競技場に降りてくるとの
余りにも有名な驚愕のパニックシーン
を描くためとはいえ、
原作がどうなのかは私には分からないが、
少し強引ではなかったか。
果たしてモサドとFBIはテロを防げたと
言えるのかどうか。
テロリストはその結末を見届けることは
出来なかったが、
大統領が臨席のスーパーボウルでの
大パニックは、テロリストの目的を充分に
達成したようなもので、
こんな解釈だけでも、
治安維持機構の側からは
この映画を上映禁止にしたくなる理由に
充分なり得ていたのだろうと想像した。
評価は、前半🌟4.5で、後半🌟3.5の、
合わせ🌟4とさせていただきました。
原作既読。公開中止になった当時のことはよく知らないが、この出来ならもっと早く上映されててもよかったように思う。今見るとちょっと古臭く見えるところもあるが、警察側とテロリスト側を並行して描写することで止められるのか/逃げ切れるのか、のハラハラ二重になるのがいい。
原作表紙でおなじみ飛行船が出てくると、待ってましたーとテンション上がりました。
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