乱のレビュー・感想・評価
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あまりの酷さに勝新太郎が降板した映画です
最低な演出をする監督に反発して主役が降板するなど、様々なアクシデントに見舞われながら、見事、最低最悪の作品が完成した訳です。
これほど、良いところが皆無に成し遂げる、黒澤明は天才バカボンである、のだ。
期待していなかったんですが非常に感動しました、発表当時あまりに評判...
期待していなかったんですが非常に感動しました、発表当時あまりに評判が悪くて黒澤明が好きな故に敬遠してきました。確かに血糊や主人公のメーキャップが如何かというのはありますが、その時観たらまだ学生まがいでしたので「なんだこの暗さは!」で反発したはずですが歳とったので「あぁ絶望していたんだなぁこの頃の黒澤は」「この世はもう終わりだ家族も人間も世の中も全く希望が持てない、そんな気持ちになっていたらこの映画はズッと観入れる映画だなぁ」「今の自分にはなんとなくだがシックリくるなぁ」という流れで大好きです。※『天国と地獄』以降の黒澤映画は、偏見ですが50歳過ぎて子供が成人し親が老いぼれ栄達も叶わぬぐらいの境遇になってから観た方がいいような気がしました。
映像は確かに凄いが中身が薄い。私は黒沢明は余り評価していない。娯楽...
映像は確かに凄いが中身が薄い。私は黒沢明は余り評価していない。娯楽映画は良いが、深刻な材材になると描き方が途端に青臭くなるから。女の描き方も下手だし。本作でも原田美枝子のシーンはこちらが恥ずかしくなるくらいの演出の下手さ。原田美枝子もこの頃はまだまだで「蜘蛛巣城」の山田五十鈴の凄さには到底及ばない。草原でピーターが踊るシーンもぎこちない。もっとどろどろした人間ドラマに出来たのに、絵としての美しさを優先したのかな。まあ、それも映画の一つのあり方ではあるけど、私には燃える城を背景に虚ろに歩く仲代達矢よ映像しか目に残っていない。
骨肉の悲劇…巨匠黒澤のライフワーク!
Blu-ray(4Kデジタル修復版)で2回目の鑑賞。
初めて観たのは高校生の頃。DVDを購入しました。仲代達矢のふとすると吸い込まれそうな目力に抵抗出来なくなり、狂ったまま荒野を彷徨する秀虎の姿に呆気に取られました。
一文字三兄弟の血で血を洗う後継者争いは、戦国時代の習いとは言え、結局誰も報われななかった結末に、虚しさとやるせなさを感じて、現代にも通じるような内容なだけに、人間社会の無情に呆然としてしまったことを覚えています。
終始、熱量に圧倒されっぱなしでした。大規模なセットを組んで撮影された合戦シーンはもちろん、一族の骨肉の争いの果てに訪れた凄惨な悲劇に息を呑みました。スペクタクルシーンがもたらす迫力と、登場人物たちが繰り広げるドラマがもたらす人間的な迫力に満ちていました。心を鷲掴みにされました。
楓の方の情念に震え上がりました。
一文字家への恨みを胸に秘め、秀虎引退をこれ幸いと、その息子たちを巧みに操縦し、一族を滅亡へと導きました…。最期のセリフが頭から離れません…(泣)
「怖い女だな」と思うと同時に、もしかすると歴史は、女が動かしているのかもしれないなと思いました。女の強い想いほど、恐ろしいものは無いのかもなぁ…。
黒澤明監督が10年以上の歳月を掛けてつくり上げた執念の成せる業、渾身のライフワーク…。監督のフィルモグラフィーを総括し、これまで語られて来たテーマの全てが籠められている、集大成のような作品だなと感じました。
※修正(2021/09/11)
規格外
ロケにしろセットにしろ何もかんもがぶっ飛んでてとにかく凄い。あの城つくってしかも炎上させんのかよと。
シェイクスピアをベースにした舞台仕様の大袈裟な演技だけがどうも馴染めない。
しかし、あの音はすごく効果的でした。
20世紀を代表する名画
黒沢映画が世界的に高い評価を得ていることは勿論知っていた。しかし敢えてDVDを借りて観るほどでもないだろうと高を括っていたのが正直なところだ。それが大きな間違いであったことがこの映画を観てよくわかった。
4Kデジタル修復版で仲代の凄みのある表情を余さず観ることができたのは非常にラッキーだと思う。
俳優陣はいずれも達者な演技振りで、寺尾聰の太郎、根津甚八の次郎は、気の弱い凡人が強烈なエゴイストたちに振り廻される情けない姿を遺憾なく演じきっていた。井川比佐志が演じた次郎の筆頭家臣の鉄(くろがね)修理は豪胆な武将の存在感にとても重味があった。
凄かったのはやはり主演の仲代達也と原田美枝子だ。ふたりとも怪演という言葉が相応しい大迫力の演技だった。この二人が演じた秀虎と楓の方の強烈な思いがストーリーをぐいぐいと引っ張っていく。歴史は構造的に作られる面もあるが、こういった強烈な個性によって動かされることもあるということを改めて感じた。
そしてピーターが演じた道化師の狂阿彌。権力に縛られない恐れ知らずのこういう存在を登場させることで、権威を相対化し、物語に奥行きを与えている。ピーターはほぼ出ずっぱりの大活躍だった。
性格悲劇という考え方を16世紀末の演劇の世界に持ち込んだシェークスピアは、性格の齎す益と害が、権力者においては多くの人々の命にかかわる一大事であることを数々の作品で表現した。
黒沢監督はそのひとつ、リア王をさらに大きなスケールで演出し、必然と偶然、同盟と裏切り、誠実と欺瞞を対比させつつ、壮大な人間ドラマに仕立て上げた。いま観てもまったく古臭さを感じさせない。人類普遍のテーマを表現した映画はいつまでも新しいのだ。
音楽は武満徹。私には「死んだ男の残したものは」(詞:谷川俊太郎)の作曲家として胸に刻まれている天才である。ティンパニと小太鼓大太鼓を効果的に使って場面ごとに迫力のある印象を残す。武満の曲の指揮が岩城宏之で、いまとなってはビッグネームばかりのキャストとスタッフだ。
20世紀を代表する名画のひとつである。
今となってはもう作れない映画
劇場で見たかった映画を観られたことに感謝したい。
面白く、素晴らしい映画である。黒澤明の良さに気付くまで、随分時間が掛かったが漸く理解出来る時期に至った。残念ながら、この先、これほど予算と時間を費やして作る邦画は無いだろう。巨匠に対する世界からのリスペクトがあってこそ、製作出来た最後の大作の一つだろう。テレビで培われた感性はどれだけのモノを作れるか?もはや何も期待しない。ミニマルな佳作は出るだろうが、資本を必要とする大作を作るには時代が余りにもロマンを排し、現実的になり過ぎている。old days,but good daysってところか…
馬鹿な親鳥だよ
映画「乱」(黒澤明監督)から。
作品のラストシーン、こんな台詞がある。
「神や仏は、泣いているのだ!何時の世にも繰り返す、
この人間の悪行。殺し合わねば生きていけぬ。
この人間の愚かさは、神や仏も救う術はないのだ!
泣くな、これが人の世だ。人間は幸せよりも悲しみを、
安らぎよりも苦しみを、追い求めているのだ!」
たぶん、監督が伝えたかったことの一つだろう。
しかし私のアンテナには、途中、ピーター演じる「狂阿弥」の
こんな台詞が妙に引っかかった。
「蛇の卵は白くて綺麗だ。小鳥の卵は、シミがあって汚ない。
鳥は汚ない卵を捨てて、白い卵を抱いた。
孵った卵から蛇が出て来た。鳥は蛇を育てて、蛇に呑まれた」
我が子を信じ、捨てられ、殺されそうになった父親(秀虎)が、
狂った挙句に「ここはどこだ? 俺は誰だ?」と叫ぶと、
「狂阿弥」は「馬鹿な親鳥だよ」の言葉を投げ捨てる。
この例え話が、私は気に入った。
世の中には「うちの子に限って・・」と声高に叫ぶ親がいるが、
親バカも甚だしいケースを良くみかける。
子どもを育てるということは、楽しいことであるが、
非常に難しいということも、理解しておいて欲しい。
一番信じていた者に裏切られることほど、辛いことはない。
いつの世も、親子の関係は、切っても切れない課題なんだろうなぁ。
心の失明
権力への欲望と執着、逆心、猜疑心、虚栄心など、真価を曇らせる人間の愚かさを、壮大な時代劇で描いております。騎馬隊は迫力ありました。
繰り返し大量に流された血の上に成り立つ権威という点は、戦国時代という設定故に特に強調されていたように思えます。
太郎(黄色・一)、次郎(赤色・二)、三郎(青色・三)と衣装と旗で色分けしているので、とても分かりやすいです。
残念なのは、大殿がゾンビにしか見えなくて何度も吹き出しそうになったこと、血液がペンキのように赤過ぎること、核心を突く台詞を放つ道化師役が、戦国時代としてはあまりに無礼で浮いてしまったことでした。
ストーリーはリア王なので、詳細は省くとして、とにかく画像というか、...
ストーリーはリア王なので、詳細は省くとして、とにかく画像というか、色の美しい映画だった。シェイクスピアの救いの無い物語を、色彩鮮やかに描く。仲代達矢も凄いが、原田美枝子の演技はマジ怖かった…。あ、ちなみに僕はピーターの演技が鼻につきました(笑)。これさえなければ…。
黒澤映画。キレイ
2〜3回くらい見たかな。
ストーリーもわかりやすい。赤青黄色。出演者も豪華で時代劇好きにはナイス。
かなりの大作だが、舞台は戦国時代の中部地方の山間かな。馬や騎馬が沢山出てくるので迫力が凄い。 今じゃここまで本格的な時代劇を作る人がいないんじゃ無いか?
イマイチなイメージの寺尾聡を使う以前の作品だと思う。良い。
『影武者』よりは断然こっち
黒澤明カラー期の時代劇ということでどうしても直前の『影武者』と比較してしまうけど、僕はこの『乱』の方が断然好きです。メッセージは少し説教臭いけれど、『影武者』では余り描かれなかった、『蜘蛛巣城』に勝るとも劣らない大規模な合戦、城攻めのシーンは圧巻です。話も面白い。『乱』は脇を固める俳優陣が良かったのですが、特に今回は『乱』から続投している井川比佐志さんが良い。『夢』や『まあだだよ』、『八月の狂詩曲』にも出演しており、黒澤カラー期の柱と言って良いでしょう。
大掛かりな哲学的舞台芸術のよう
総合80点 ( ストーリー:90点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:80点|音楽:70点 )
かなり金のかかった大掛かりな作品である。脚本も洗練されていて、哲学的・芸術的な香りがする。戦国乱世の厳しい世の中に浮かび上がる人間の性(さが)を切り出して、愚かさや野望や恨みが引き起こす乱とその悲劇を美しく物悲しく虚しく描いている。
だが映画作品なのに何か説教くさいというか説明っぽい科白回しが気にかかる。シェイクスピアの「リア王」を基本にしているというせいだろうか、演出が映画というよりも舞台芸術のようなのである。私は科白をしっかりと覚えて今情感を込めてしゃべっていますよ、そんな印象を受けてしまって、映画としてはそこが気にかかって入り込めないことがあった。
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