紅いコーリャン

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劇場公開日:

紅いコーリャン

解説・あらすじ

撮影監督出身のチャン・イーモウの初監督作品で、デビュー作にしてベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞を受賞するという快挙を成し遂げた一作。

1920年代末の中国山東省の小さな村。貧しい農家の娘である九児(チウアル)は、困窮する家を救うため、半ば売られるような形で造り酒屋の主人のもとに嫁ぐことになる。嫁入りの途中、コーリャン(モロコシ)畑で強盗に襲われるが、それを助けたのが余占鰲(ユイ・チャンアオ)だった。嫁入り後、九児はコーリャン畑で余と再会し、2人は結ばれる。やがて九児は、夫が行方不明となったことで未亡人となり、酒屋を自らの手で切り盛りすることに。そして余と結婚し、子どもにも恵まれ、幸せな日々を送るが……。

九児がまとう花嫁衣装や夕陽に照り返る大地、コーリャン酒など、「紅」を効果的に配した画面構成と映像で鮮烈な印象を残した。主演は、本作がデビュー作で、以降もイーモウ監督とのタッグが続くコン・リー。2024年12月、「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」と題した特集上映にて、HDレストア版でリバイバル公開。

1987年製作/91分/中国
原題または英題:紅高梁 Red Sorghum
配給:AMGエンタテインメント
劇場公開日:2024年12月27日

その他の公開日:1989年1月27日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)1988, Xi'an Film Studio, All rights reserved

映画レビュー

5.0中国映画の歴史的傑作

2025年4月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

斬新

公開時に初めて観た時は途方もないホラ話を含む寓話的な語り口と、赤を基調とした鮮烈な色彩感覚の映像美、原初的な音楽の数々にとにかく圧倒された。それまで観ていた米国映画とも香港映画とも日本映画とも違う映画の質感が強く印象に残り、興奮しながら帰ったことをよく覚えている。理屈抜きの凄まじいパワーを持った作品だった。

それまで撮影監督だったチャン・イーモウの監督デビュー作で、まだ中央戯劇学院演劇学科の学生でこれがデビュー作だった主演のコン・リーは歯並びを治す前だし、今ではすっかり恰幅の良くなったチアン・ウェンもまだこの頃は細かった。原作は後にノーベル文学賞を取る莫言の『赤い高粱』で、莫言自身も脚本に参加している。今になって改めて振り返ると皆まだほんとに若かったんだな。莫言はフォークナーやガルシア・マルケスに影響を受けたマジック・リアリズムの手法を使う小説家とのことだが映画も同様で、泥酔した輿担ぎが嫌がらせで新しいコーリャン酒の甕に小便をしたら、一晩経つとどういうわけかそれまでにない美酒になっていたなどという人を食ったようなエピソードが挿入される。しかしあくまで昔の人から聞いた昔話という外枠が、そのようなホラ話をウソかホントかわからない話として面白く語ることを可能にしているのだ。

真っ赤なコーリャン酒も印象的だがどうやらこれも創作のようで、実際には無色透明らしい。大地の紅、衣服や布の紅、太陽の紅、血の紅などと対比する映像表現としてコーリャン酒の色も紅く染められたんだろう。かなり長くコーリャン酒というのは紅いものなんだと思っていたのだが、すっかり騙されていたわけだ(いい意味で)。チャン・イーモウはその後も『菊豆(チュイトウ)』や『紅夢』でもいかにもホントっぽいウソで楽しく騙してくれた。風にたなびく大量のコーリャン群や夜空に浮かぶ満月、唐突に始まる日食などの映像も美しく、ある意味表現主義的とも言える映画であり、そんな映画の中では終盤に登場する日本軍もリアリズムというよりおとぎ話に出てくる鬼のような存在に近い。今観れば隊長以外のその他大勢の日本兵は日本語が片言だが、それさえも「お話」として受け入れられる構造になっている。やはり何度観ても圧倒的な力を持った映画だと思う。

また公開時は映画そのものの力に圧倒されて、映画の構成要素の一部という記憶だったコン・リー。今になって改めて観ると、やはり彼女の存在感はこのデビュー作から出色である。1920~30年代の田舎の造り酒屋の女性を演じてるからか、今となっては珍しく日焼けしてるのも眩しい。芸術学校の学生たちからこの輝きを見出だしたチャン・イーモウの目はやはり確かだったのだ。以後、90年代前半の2人は公私ともに二人三脚となって中国映画を世界へと押し上げていく。

今振り返ってもデビュー作にしてチャン・イーモウの代表作であり最高傑作というばかりでなく、中国映画の歴史に残る記念碑的な作品と言っていいだろう。

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バラージ

5.0「紅(赤)」に対するこだわりは服装、酒の色から肌の色まで「これでもか!」と徹底されていますね

2025年2月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

『紅いコーリャン』 (1987/中国/91分)
チャン・イーモウ(張芸謀)監督、コン・リー(鞏俐)のお互いのデビュー作であり、初コンビ作品。

1930年代末。ラバ1頭で親子ほど年の離れたハンセン病患者の造り酒屋の主に売られ、嫁ぐことになる若い娘(コン・リー)が、御輿での嫁入りの道中に強盗に襲われるが、御輿の担ぎ手の男(チアン・ウェン)に救われ、互いに惹かれ合う。
その後、造り酒屋の主が行方不明、娘は造り酒屋を継ぎ、担ぎ手の男と結婚。子を産み幸せな日々が続くが、そこに日本軍が侵攻、平和を脅かす…という話。

一面荒涼とした砂漠とコーリャン畑の緑のなかに鮮烈な印象を残す数々の「紅(赤)」の色彩を強調した映像と人間の本能と情念の発露が実に見事に融合されています。
「紅(赤)」に対するこだわりは服装、酒の色から肌の色まで「これでもか!」と徹底されています。
大まかなストーリー設定、人間の情念の描かれ方、艶やかな色彩感覚は次作『菊豆(チュイトウ)』(1990)でさらに洗練されて昇華されますね。

本作がデビュー作のコン・リーはデビュー作と思えない貞淑な少女から頑健な酒屋の主まで振り幅の広い演技を披露。
『宋家の三姉妹』(1997)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のチアン・ウェンも粗野で野性味溢れる演技が実に魅力的でしたね。

公開当時(1987)はまだハンセン病に対する誤った知識や偏見、差別もずいぶん残っており、また不穏分子の皮を生きたままはぐことを指示する旧日本軍の鬼畜な描かれ方など目を覆いたくなるシーンも多々ありますが、公開当時の時代の空気感は大事なので、ぜひとも配信などでも気楽に観られるようにして欲しい作品の一本ですね。

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矢萩久登

3.5無国籍映画

2025年1月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

悲しい

前からチャン・イーモウ監督は気になっていたが観る機会が無かったので新文芸坐で鑑賞。砂漠にある酒造所。嫁ぐ娘に姿を見せないままの主人に働き手
盗賊と不思議な人間が集まりいつの時代か不明なまま日本軍が現れ残虐非道の限りを尽くす。現実味がないのと日本軍がインチキなので抗日やプロパガンダ色は感じない。先に菊豆を観たせいか紅いコーリャンの抽象さ摩訶不思議さに驚いた。

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MOVIE FUN MAMIKO

3.0日本人としては観るのが辛い

2025年1月19日
iPhoneアプリから投稿

日本人として観るのが辛い映画で、作品自体としても後味は良くなかった。

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ジョニーデブ