ベルリン・天使の詩のレビュー・感想・評価
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なぜ詩(うた)なのか
私がもっとも好きな映画です。私のようなものでも、具体的な説明抜きで理解したような気分になれるから。もっとも、正しく理解出来ているか、正直怪しいところでは、あるけれど。 それほどに、好きではあるけど、実に難解な映画だと思います。説明がなく、難解だからこそ、思索、考察が止まらない。見るたびに発見がある。何度も見たにもかかわらず、4K版劇場公開と聞いて、新作映画をほったらかして選んでしまった。 手書きで詩が歌われる。ドイツ語だろうか、でも、その節回しで童歌のような詩であるとわかる。まず、子供に帰れということか。 続いて、恐れ気もなくビルの屋上に立つ男。恐れ気もない。つまり、死ぬ恐れはない。見え隠れする翼。映画のタイトルも助けて、天使であると理解する。SFXとして、実に地味な演出だけど、超常的な存在であることは理解出来る。派手な演出は要らない。見るものがそうと理解出来れば、それで良いということか。それ以後も、派手な特撮など行わずに、人混みのなかで誰が天使かを悟らせるのも面白い。 加えて、それを見上げる子供たち。見上げるのは子供だけ。誰もが何処かで聞いたことのある噂。子供だけが見える超常的な存在。その理由は私には判らないけど、子供の頃にしか判らないこと、子供だからこそ感じたこと、子供だから恐れない、苦しみをしらない。 そして大人達の思惑が飛び交う。実質的で、現実的で、物理的な苦しみに苛まれる。大人になればなるほど、その苦しみが積み重なる。生きづらさ。生きるのは実に辛いことだ。 天使達はその合間を巡りながらも、喜びを見出していく。メモに取り、何気ない発見を語り合う。そして、主人公の天使は「見せたいものがある」と誘う。同僚を導いたのは寂れたサーカス。 寂れたサーカスで繰り広げられるささやかな見世物。誘われた同僚がどう感じたのか知らないけれど、誘われた本当の理由が見出される。主人公の天使は、人間の女性に魅せられていた。恋をしたのだ――という理解で正しいでしょうか。サーカスの締めくくりで、子供たちだけが風船を追って舞台に降りるのも印象的。大人はその有様を見守るだけ。 本筋とは外れているかもしれないけれど、特に空中ブランコのシーンが素晴らしい。華麗に宙を舞う彼女を、落ち着かなく見上げる天使。加えて、サーカスの団長でしょうか。タキシードに蝶ネクタイで、ジッと緊張した面持ちで見上げる姿。地面にネットを張らずに行われる曲芸、万一があれば飛びついて受け止める覚悟なのだろう。客にそれを悟らせない。でもブランコの彼女と同様、一瞬でも気を抜けない状況で微動だに出来ない。しかし気持ちは落ち着かなく歩きまわる天使と同じ気持ちだろう。その三人の様。 他にも素晴らしいシーンは多々あります。鏡越しに見つめ合う二人のシーンは、ハリウッド版でもあったんだったか。まるで彼女が天使の存在に気付いているかのような。そんな筈があるはずもないのに。 やがて天使は現実に生きることを選ぶ。多くの大人達が生きづらさを感じつつ生きている人生を選ぶ。「一つずつ学んでいこう」と意気揚々と歩き出す。私たちに、生きる喜びを改めて見出そうよと誘い掛けるかのように。壁の落書き、一杯のコーヒー、空気の冷たさ、傷の痛みですら、生きている実感として喜びとなる。見知らぬ人と交わす言葉、不思議な出遭い、やがては恋をし、愛し合えたなら最高じゃないか――なんて、私たちもそんなに上手くいけば良いのですが。 そして、映画は詩で閉じられる。なぜ、詩で始まり、詩で閉じられるのだろう。判らないけど、様々な言葉で綴られる詩を感じ取るように、様々な出来事で綴られる映画を詩のように感じ取りなさいということなのだろうか。 一番好きな映画だけど、理解出来ているようで、やっぱり難解ですね。童歌で始まり、最後は老人の言葉で締めくくるのも象徴的です。歳をとると子供に還るようなところもありますから。スタッフロールで囁かれる囁くような様々な歌声も印象的だった。うーん・・・難しい。面白い。素晴らしい。
声を紡ぐ
ヴィム・ヴェンダース監督作品。 なぜ今まで観てなかったんだろうと思うぐらいいい映画でした。 映画の可能性に満ちた作品。 天使のダミエルとカシエルには人々の内なる声が聴こえる。 その声は様々だ。他愛無い思いから悲惨な心情、愛の希求など。 そんな彼らの声が天使を媒介にして映画で語られる。 声が語られることは重要である。ベルリンの壁が今なお存立し、戦争の痕跡が残り続ける現在に、生を語り絶えず現前させること。それが歴史を堆積させることに繋がるのである。 だが天使は媒介者として、永遠の者として、言葉それ自体として、存在するがために、自らの声を語ることができないのである。なぜなら生き続け存在し続けるのだから声として自らの生の痕跡を語る必要がないからである。 だから天使のダミエルは人間になることを決心する。音楽を奏でるミュージシャンのように、そして恋するマリオンのように、自らの「声」で語る存在になろうとするのである。 また終盤のダミエルとマリオンの出会いのシーンでは、決断することが人間たらしめることをマリオンが語る。 「先の運命が分からなくても決断する時…」 「私達の決断は、この街のーすべての世界の決断なの。」 「今しか 時はないわ。」 過去でも未来でもなく、今しか生きることが私たち人間は、絶えず決断し、声を紡がなくてはいけないだろう。そしてその声が語られるためにも、天使を信じなくてはいけないだろう。見えない天使に触れるP・フォークのように。
1000年の監視者
1000年の監視者はただ見てる 人の愛し憎む姿を (筋肉少女帯「1000年の監視者」) --- 散文詩のような脚本と、モノクロとカラーの対比が印象的な演出が魅力的な映画。物言わぬ天使たちが人間に寄り添う姿には、優しさと物悲しさが同居しているように感じられます。天使たちは人間社会を否定しているわけではなく、むしろその深い愛情をもって、人々の心に触れているようでした。 特に、「天使の視点を通して人間の心を覗き見る」というアイデアが非常に面白く、哲学的な問いを投げかけていると感じました。孤独を抱えた人々の思考や感情をモノローグで描写するシーンは、人間の弱さや儚さを繊細に映し出していました。 唯一、自殺した人に対して天使が抱いた「残念な気持ち」を表す場面は、とても強烈でした。あのシーンでは、救いの手を差し伸べられなかったことへの無力感が、観ている側にもひしひしと伝わります。人間の孤独がこの映画の大きなテーマであることが象徴されているようでした。 それでも、この映画には希望がありました。ダミエルが「人間として生きる」ことを選び、愛や喜びを見出そうとする姿勢は、私たち自身が人生の素晴らしさを再発見するきっかけを与えてくれます。孤独の中にも、希望や愛、そして生きることの喜びを見つけられる素晴らしい作品だと思います。
空中ブランコ乗りの舞姫に恋して人間戻る守護天使‼️
《即興的な映画だったとは?》 1987年(西ドイツ・アメリカ合作) ヴィム・ヴェンダース監督作品。 以前に観た時は、美しい映像詩に衝撃を受けました。 しかし台詞が詩篇の断片でできているためか意味不明で、 美しいけれど不可解な映画だと感じました。 Wikipediaを読むと少し合点がいきます。 ヴェンダース監督は次回作の撮影開始が遅れたため、 その合間の時間で、ペルリンを舞台にすると言う気条件で、 この映画に着手したそうです。 ドイツ語の美しさを引き出すために脚本を書かず、 詩人のペーター・ハントケさんの 書いた詩の断片を集めて、それをつなぎ合わせるとにしたのです。 撮影は映像監督の名匠アンリ・アルカン(ローマの休日の撮影)さんを、 説き伏せることにより、幻想的な映像美と荘厳さを併せ持つ 作品となりました。 登場人物は2人の天使、 黒いコートに髪を後ろで束ねたおじさん2人。 ブルーノ・ガンツと細面のオットー・ザンダー (彼は、ほぼ喋らない) そして守護天使のダニエル(ガンツ)が好きになってしまう サーカスのブランコ乗りの舞姫マリオン(ソルベェーダ・ドマルタン) 彼女に恋して天使をやめて人間に生まれ変わるのです。 ピーター・フォークが「コロンボ」撮影に来ている設定で、 軽妙な雰囲気を醸し出しています。 ライブハウスが2度登場します。 その場面、当時流行りのオーストリア出身のバンドで、 ヴェンダースはロック・ミュージックが大好きだったそうです。 「PERFECT DAYS」でも古いカセットテープを宝物のように 大事にしていましたね。 この映画も色々な軌跡が重なって、ドキュメンタリーとも詩劇とも つかない素敵な芸術作品。 ヴェンダース監督らしく、敷居は高くありません、 時期はベルリンの壁の崩壊の頃。 まだ東西に隔てられた「壁」があります。 「ベルリンの壁」が崩壊するのは、映画撮影から2年後のこと だったそうです。
ヴィムベンダースの天使
・中年の男女 ・モノクロの世界に生きる ・嗅覚、味覚など感覚がない ・こどもには見えて時には会話もする ・図書館が溜まり場 ・人間が生まれる前からの存在 ・人の心の声を聴いてよりそう ・天使を辞めて人になる事もできる ・この世界には、『元天使』が沢山いる ・翼のある銅像に親しみを覚える 豆知識 主演のダミエルのコートはヨウジヤマモト 人々の嘆きに耳を傾け、無表情によりそう前半と一転 人間にになってはじめて色を覚え キッチンカーでコーヒーを買ってその温度と味と香り楽しむ姿が可愛い
ベルリンが舞台と思いますが、ドイツのベルリンが荒廃した都市と一般意...
ベルリンが舞台と思いますが、ドイツのベルリンが荒廃した都市と一般意見と思いますが、ドイツの敗戦直後の内地の銃後を守る瓦礫の中での女性達や老人達のぶつくさ言う話し声が音声になってますが、地下のライブハウスでのロックバンドの演奏もあり、その演奏しているのがnick cave and the bad seedsは知ってましたが、もう一つの方が分からなかったが、ネットから知りましたが、crime and the city solutionというバンドでsix bells chimeという曲だそうで、何方もオーストラリア出身だそうです。
やっぱり「この世」(人間界)が佳境か。
浮世に生きている評論子らにしてみれば、食べるためには働かなければならないなど、何かにつけて苦労の多い人間界ですけれども。 実際、ブランコ乗りのマリオンにしてみても、戦争が終わったばかりの不安定な経済下で、サーカスの破産や、季節雇用の不安定さが、評論子の印象には残りました。 しかし、天使ダニエルは、モノクロで生活実感のなく、そして「天使」とは言いつつも自殺者の一人も止めることができなかった自分の無力さから、天使界よりも人間界を選んだということになりそうです。 加えて、「そういう者はたくさんいるよ。」というピーター・フォーク役で出演しているピーター・フォークのセリフも、妙に沁みました。 十分な佳作であったと思います。 評論子は。 (追記) 作中で言及されるように、子供の頃は、自分が何者であるかすら意識していなかったはずで、そういう意味では母親の胎内から生まれてきたという確証すら、本人にその記憶がない以上、どこにもないことになりそうです。 そういう「何者か分からない」まま長じた今の自分は、自らの意識で「何者であるか」を求めていかなければ、いつまでも「何者か分からない」ままなのかも知れません。
「ベルリン」モノトーンの街
「ベルリン」と聞くと 僕はどうしても冷戦時代の恐怖のイメージが拭えない。 「暗い印象がその街の名に染み付いてしまった例」は・・、そうだ、僕らは世界の各地にいくつも思い浮かぶのではないか。 あの壁を越えようとして幾千が命を失い、あの壁を越えることを幾万の人間が諦めた。 諦めの街ゆえに、 絶望と沈黙のあるところに、 哲学と希望の文学は生まれ出るようだ。 ・ ・ ところで、話は変わるが、 あのイブ・サンローランのブティックには「CINEMA」というパフュームがある。ご存じだろうか。 映画好き、そして香水好きの自分としては、どんなものかと思い、サンプルを求めてみた。 「映画祭」といえば、世界各国には名だたるアワードがあるのだけれど、メゾン・ド・サンローランはいったい何処の街を、そしてどの映画祭をイメージしたのだろうか? この「CINEMA」は、はたして、リゾート地に咲き誇るピンクの夾竹桃の花びらと、オレンジママレードを一緒に煮詰めたような、甘ったるい、むせ返る香りがした。 つまりパフューム「CINEMA」は、海辺の街、陽光満ちる南国、シャンパンとパーティードレスのさんざめきを想わせる香りで 南欧フランスの港街、カンヌの映画祭をイメージしたものだったわけだ。 カンヌと、そして、一方はベルリン。 かたや北緯52゜北の国ドイツの、陸の監獄だったあの地=「ベルリン国際映画祭」の“臭い"とはまったく異なる香り、 ・・サンローランの「CINEMA」はたいへん華やかなしろものだった。 ・ ・ 本作、西独・仏共作だが この邦題『ベルリン・天使の詩』(べるりん・てんしのうた) は、ドイツ語題の直訳。 独: Der Himmel über Berlin. しかし 英: Wings of Desire. 仏: Les Ailes du désir. つまりフランス語と英語での原題が「欲望の翼」となっていることは少し意表を突く。 ブルーノ・ガンツ演じる天使の、その後の彼の動向に重きを置いた着題だろう。 モノクロームの画面。 モノローグの天使。 DVDを観ながら、そして週に一回のアルコールをやりながら、夜食をつまむ。 無性に腹の立つ上司のことや、会社の不躾な若造たちのことを考えると、大変な一週間だったけれど、 ベルリンの天使は、焦点の合わない外斜視の目で、ボソボソと呟いているので、老人特有のこの怒りの感情も だんだんと落ち着いてくると云うものです。 ・ ・ 「パリ、テキサス」では、電話ごし、ガラスごし、背中合わせでしか想いを交わせない、そのような人間の哀しみを描いたヴィム・ヴェンダース。 本作ではベルリンの壁ごしに、 姿は見えないが、どこからか囁やき聞こえる「声」に人格を与えている。 「声」への受肉を監督は試みている。 ・ ・ うちのどら息子は、 「アバウト・タイム」のDVDを僕にくれた子。 どういうことだか、何年にも渡って、彼は父親である僕になんの連絡も寄越さないのだが、風の便りで、まさかの今、 そのベルリンに、彼は起業して住んでいるらしい。 冷戦時代の、まだ暗く冷えた空気が、通りの石畳や家並みの壁に染み付いているのなら、 また家々の壁に銃創や、舗道のシミや、涙の痕跡がまだその街に残るのなら、 ベルリンにはまだ天使がいてくれるのだろうか。 心を病まずに穏やかに暮らせるように、優しい天使には、あの子のそばに付いていてもらいたいものだ。 劇中、子供には天使が見えている。 天使も子供たちには直接に語りかける。 たとえ齡三十を超えても、それでも誰かの子供であるその息子たち、娘たちよ、 苦難に遭遇しているのなら、フワリ 舞い降りる心やさしい守護天使に、そばにいて守ってもらいなさい。 僕もきみのために、遠く壁の外からではあるが、言霊をもって語ろう。
それでも「生」を肯定する映画
あの「壁」がまだ存在していた時代のベルリン。
人が容易に入れないであろう高層ビルの上に
1人の男が立っている。
小さい子供たちにはその姿が見えるらしく
何人かの子供は指を刺して、立ち止まる。
よく観るとその男の背中には大きな羽があった。
彼は、人間社会を見守る天使。
人間の心の声が手の取るように聞こえるけれど
人間に直接、手を触れたり言葉をかける事は出来ないが
人間のすぐそばに寄り添うことで、
少しだけ人間の心に小さな「何か」を芽生えさせる事はできる。
そんな天使のダミエルはある日、
サーカス団の花形、空中ブランコ乗りの
美しい女性マリオンに恋をする。
それと同時に、これまでの長い間、
ただ人間を見守るだけで、
人間が五感で感じる喜びを感じることの出来ないことに
物足りなさを感じて来た事を
天使仲間のカシエルに告白してある行動に出る!
前半はモノクロのシーンも多く静かな内容ですが、
人間の苦しみ、悲しみを知り尽くした天使が起こす
ある行動に「生」への肯定感を感じる良作だと思います。
刑事コロンボを演じるピーター・フォークが
本人役でキーパーソンとして出演しているのも
なかなか面白いです。
で、月に8回ほど映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
公開してしばらく経ってから衛星放送で鑑賞。
なんかいい映画だったと言う印象で、
昨年、神戸、新開地のパルシネマしんこうえんで久々に鑑賞。
今年「午前10時の映画祭14」で三度目の鑑賞。
天使たちが感じ取る人間の心の声。
親や子供や恋人といった人間関係の不安や
お金や健康や先行きの心配。
様々な苦しみ悲しみ不安を抱えて生きる人間たちを
見守ることしか出来ない天使達は
やがて人間達が争いを始めたり、
絶望のあまり自死してしまう姿に
実は深く傷ついていることが明かされる。
人間の苦しみ悲しみ不安を嫌と言う程観ていた
不老不死の天使でありながら
限りある人間の「生」に惹かれていく主人公。
人間の「生」を丸ごと肯定する結末が私は好きだな〜
主人公の後半の大転換後にこの世界を丸ごと、
身体中で受け止める喜びに満ち溢れた表情が最高です。
作中、天使は人間とは会話が出来ないので
人間の心の声はたくさん出てくるけど
出演者同士の会話はあまり多く無いので
そこに拘らなくても良いかもしれない。
って言うか、
最後のマリオンの言葉が意味が不明だったです。
(私の理解不足かしら??)
天使の時の様に無言で寄り添うダミエルの方が
逆に心に伝わってくるところが
言葉って実は空虚なもの〜そんな風に感じました。
野心作ではあるものの面白くはない
日本公開は1988年。当時、結婚したばかりの妻と2人で日比谷シャンテで観た。ミニシアターブームに乗っかった配給で雑誌や新聞では絶賛の嵐。大いに期待していたのだが、なんじゃこれはっていうのが当時の感想。ミニシアターといってもロードショー館と料金は同じ。何の割引もないため正直、若い我々にはこの出費は痛かった。それだけにとても損をした印象が残っている。 個人的な遺恨はさておき、36年ぶりに劇場で観た印象はやっぱり面白くはないということにつきる。この監督はユーモアセンスはほぼゼロの人なのでなんのくすぐりもなく単調に2時間を超えるフィルムをみせられるとかなりキツイ。 無理に意味をもとめるとこの映画もヴィム・ヴェンダースのお家芸のロードムービーってことになるのでしょうね。誰も旅行してないじゃないかって言われそうですが、ヴィム・ヴェンダースのロードムービーっていうのは初期作品を除けば、監督自ら旅行者、エトランジェの視点で街や街道やそこを行き交う人々を描くところに特徴がある。 この映画も前半部分(モノクロ)は2人の天使が降り立ってベルリンの人々の心の声を聞いたり若干の人助けをしたりしていますが、これは天使視点=ヴェンダース視点で街の記憶を見聞きしているっていうことでしょうね。当時のベルリンは壁が崩壊する直前で長い冷戦期を経て街は荒廃、一方で戦災の名残も色濃く残っていたようです。そのあたりの感じがなんとなくは伝わります。 さて後半(カラー)に入って、天使ダニエルとサーカスの空中ブランコ芸人のマリオンは結ばれハッピーエンディングっぽい幕切れとなります。 これは街の再生と希望を、エトランジェであるところのこの2人に仮託したっていう意味なのでしょう。ほら終盤のマリオンの長台詞(何言ってるか分かんないと評判の悪い)で「私たちが世界だ」っていってるじゃないですか。世界はともかくとして、少なくともベルリンという街は、彼らや、この映画に出てくる他の人々、なかでも子どもたち、が主体となって再生させ、変貌させ、新たな記憶を創り出していくんだ、ということを言いたかったんだとは思います。映画的ファンタジーの構築という観点からして野心的な映画だと思いますが、やや我田引水の面は否めません。 この方法論ははるか後年の「PERFECT DAYS」でも踏襲されてますね。役所広司の演じる平山という人物が、東京の記憶や個性を代表する人物として描かれているところ。ああ、あの映画に対して私が抱いた反感の源流が、ベルリンにあったんだと今回、思い当たりました。
退屈すぎて何度も寝落ち、自分には全く合わなかった
午前十時の映画祭14で生涯初鑑賞 1988年に東京シャンテシネで公開され、30週のロングランを記録するほどのヒットとなり、当時のミニシアターブームを牽引したビッグタイトルの1つというのを覚えていますが、当時簡単に観られる環境になかったこともあり縁がなく、以来あえてVHSやDVDでの鑑賞を避け、劇場で観られる機会が来るまで牽制し36年後の今 初鑑賞 したものの、冒頭での感想となりました 納得いかず、鑑賞後にネットで他者の解説や考察を読んで、ふ〜ん、って感じ ここまで教えてもらわないとわからない作品はしんどいですね、大ヒットさせた当時の観客の方々は研ぎ澄まされた感性を持たれていたんですね、羨ましいです そして、その時代に既に映画ばかり観ていたのにもかかわらず、2024年の今の私ですらまだこの作品を受け止める大きな懐は無いようで非常に残念です また10年後ぐらいに観てみようと思います しいての感想を残すとしたら、ただ1つ筋とは関係ありませんが、マリオン役のソルヴェイグ・ドマルタンさんがすごくスタイルもよくて綺麗な人で印象的でした
刑事コロンボ
あまり理解できませんでした。自分にとっては、白黒のサーカス以降とカラーの場面だけで充分な感じでした。
ただ、刑事コロンボが出てきたのはとてもうれしかったです。ピーター・フォークさん。いいですね。
天使の詩
感想 久しぶりに映画館で鑑賞したい と急に思い立ち、急いで予約を入れた。 映画館での鑑賞は36年ぶり。 頭の中を空っぽにして、 なにも考えずにスクリーンを見つめていると、 様々な世界の言語と共に、人間の想いや考え、 行動が、また、さまざまな音や、騒音が、 川のせせらぎのように流れて心に染みていく のを感じる。 そのような人間の近くにいつも寄り添う 天使達がいる。 壁がまだ残るベルリン。その壁はただ物理的 に存在するだけではなく、国としての制度や 同一民族でありながら文化や歴史をも障壁と して分けてしまっている世界であった。 天使達は見つめている。天使達の視点に 観客を誘う演出。一見、触れ合えるように 感じられるが、決して触れ合う事はできない。 人の意思を感じる事は出来るが、その事に コミット出来ない、自由意思を束縛できない 立場であることがわかってくる。 そんな天使が人間に恋をする。 自由意思を貫くことにより、不自由が生まれる こともあるが、その壁を超えて目的を達成する 事の方が幸せなのだ。 あれから随分と長い刻が過ぎた。今も不自由さ の壁を、葛藤し、打ち破りながら進んでいる。 そんな気持ちに邂逅する映画である。 4Kレストア版のクリアな画面で鑑賞出来た。 関係者の方々、監督にあらためて、 素晴らしい映画をありがとうございます! ⭐️4.5
言葉であろう
初めて観てから30年くらい。当時何度も観たのに、ぜんぜん違うものに思えた。しばらく映画は観るばかりだったのに、思わずレビューしてしまう。 日々の小さな呟きは消えてしまうものだけど、もし天使か、それにかわる何かが、記憶して図書館に保存していてくれたなら、誰かが語り部としていてくれたなら、時間や歴史に意味があるのかもしれない。 こう言っているそばから日常の忙しなさに消えていく感情にも、(あんな素敵なカシエルみたいな笑)天使が寄り添っていてくれると思えるなら… 我々は言葉でいよう、と選択するカシエル側の立場にわたしは今は救われる。 映画なのでドラマティックに人間に変わるダミエルのストーリーも必要だけれど、そして昔はそこに惹かれたのだけれど、随分観え方が変わったものだ、何があったのか自分笑 図書館に、街角に、ふといる天使たちがとても美しい。 全然違うけどコンスタンティンの天使も思い出した。 すっかり忘れていたピーターフォークに感激! コロンボ世代特権の萌えですね!
大人のお伽話
「タイトルだけは以前から知っていたが実は観たことない映画」シリーズ。
4Kリマスター版公開の機に劇場で観た。
『PERFECT DAYS』でも思ったが、ビム・ベンダースは
おっさんを撮るのが抜群に上手いな。
我々日本人からしたら「天使」と聞いてイメージするのは子供だったり
若い女性だったりするのだが、本作で登場する天使は何と中年の男性。
でもこの中年男性天使が見ているうちに実に愛おしく思えてくるマジック。
東西に分断された冷戦時代のベルリンを舞台に、
市井の人々の想いをそれこそ「詩」のように紡ぎ、モノクロームの映像で描いていく。
そして傍観者であった天使が一人の女性に恋をしたのをきっかけに、
人間となり人と関わっていく人生を選択する様子をフルカラーで見せる。
ストーリーはシンプルながらほっこりした。
37年経って初鑑賞
学生時代にバイト先の女の子が大絶賛していたのを思い出した。
結局、当時は鑑賞しなかったので、37年経って初鑑賞。
当時、テレビでこの作品のことが話題になっていたが、そのことを色々と思い出しながらの鑑賞。
ピーター・フォークが本人役で出演していることもその一つ。
こんな役だったのね。
この世界は、天使の眼ではモノクロに見え、人の眼ではカラーで見える
人は様々に思い悩み暮らしているが、楽しみや温かさもある。
そのことに憧れた天使は、天上界から地上界に降りて来て人になる。
味気ない天上の世界で永遠に暮らすか、限りある命でも鮮やかに彩られた人生をおくるか。
空中ブランコの女性がとても美しく、アクロバティックな演技もこなす。
この女性は誰?と思ったら、既に亡くなってたんですね。
この作品に出演が決まってからサーカスのアクロバットを習得し、スタントなしで撮影に臨んだらしい。演技だけでなく、監督助手や脚本も書ける多彩な人だったようで残念です。
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