愛と希望の街

解説

ある小都市の駅前。靴磨きの女たちに混じって一人の少年が鳩を売っていた。そこへ会社役員の令嬢京子が通りかかり、その鳩を七百円で買う。少年はお金が要るから鳩を売るのだと言う。京子は同情するが、実は鳩の帰巣本能を利用した巧みな金儲けだった……。「鳩を売る少年」のタイトルで書かれた大島オリジナルのシナリオで、若干27歳で監督に抜擢された大島渚監督の記念すべき長編デビュー作。

1959年製作/62分/日本

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映画レビュー

3.0ずれた価値観

2023年4月20日
Androidアプリから投稿

貧しさからの工夫より根拠の無い取り繕った社会正義が、貧富の差より行き過ぎた倫理観が世の中を狂わせていると気付かせた作品、それが大島監督の狙いかは分からないが。

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なんてこった

0.5長い

2023年4月3日
PCから投稿

何てクソ真面目な事をクソ真面目に書いてる映画なんだ。これだから頭がいい人が書いた作品は面白くない。それともこれは社会問題を扱ってるのでなくて男と女の優位な立場を獲得するための争いを描いているのか?どっちにしても頭がいいやつの書く話は面白くないわ。

と思った。

ついでに書くと、この少年は甘い。先生も高望みしすぎ。母親が病気で働けないなら学校から帰ったらすぐに工場で働くべきだ。俺のいとこはそうしていた。家で1分も勉強することなく学校の成績は常にトップクラス。しかし中学卒業と同時に小さな町工場に就職。高校は当然のごとく夜学だった。

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タンバラライ

4.0愛でも希望でも埋められない溝

2022年12月23日
iPhoneアプリから投稿

1時間ほどの短くまとまった中編だが、質はかなり高い。言ってしまえばよくある山の手文化と下町文化のメロドラマ的交通事故なのだが、モチーフの運用が巧い。特にベランダから鳩を撃ち抜くラストシーンは白眉の出来だ。山の手の裕福な邸宅のベランダから投げかけられる兄と妹の視線の先には灰色の煙を吐き出す北千住の工場群が立ち並ぶ。そこにはかつて妹の愛したあの貧乏な青年が暮らしている。しかしその二つの世界の中間で、妹と青年の間を繋ぐ絆しであった鳩は、あるいは平和と平等の象徴であった鳩は撃ち抜かれ、地に墜ちていく。鮮烈すぎる破綻。そこには一切の再生の兆しもない。

しかしまあこの悲愴きわまる映画のタイトルが『愛と希望の街』というのは何とも皮肉というか、もはや山野一的な露悪性すら感じるのだが、どうやらこれは大島ではなく松竹の意向だったらしい。処女作の頃からして既に松竹と大島の間には決別の予兆が潜んでいたということなのかもしれない。

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因果

4.5大島渚のデビュー作がこんなに凄かったとは…

2022年11月13日
スマートフォンから投稿

今年、久々に「戦メリ」を観たが、
振り返ってみれば大島渚の初期作品には
ほとんど接していなかった。
しかし、偶然にも近くの図書館に
「青春残酷物語」が置いてあり鑑賞。
その勢いでこの作品も含め
大島作品を4作品まとめてレンタル。
この作品は「青春…」の1年前のデビュー作の
ようだが、「愛と悲しみの街」とのタイトルが
本人の知らないうちに
「愛と希望…」に変えられたとの話は
商業映画のエピソードとして興味深い。

1時間強の短い作品だが、
社会格差の問題点を重層的に描いた見事な
脚本・演出に感じた。

そして、その重層的に織り込まれた
各ラストシーンの中のラスト、
既に鳩小屋は壊されていて、
鳩が撃ち殺されようが撃ち殺されまいが、
上流階級の兄妹は、
貧しい家族のよる鳩の帰巣本能を使った
詐欺犯罪がもう行われないことを知らない。
お互いを思い遣りながらも
両者の意識はすれ違う。

生活のための小さな犯罪をも生んでしまう
社会を正しいとは言えない。
高度成長期の一断面を描いたこの作品に、
あたかも現在の格差社会をも
彷彿させるようなイメージが湧いてきて、
今後の社会に不安を覚える。

この作品を観ただけでも
大島渚の非凡さを感じとることが出来た。
あと3作品が控えている大島作品に、
益々期待が高まるばかりとなった。

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