時計じかけのオレンジのレビュー・感想・評価
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〝レイプ〟と〝超暴力〟と〝ベートーベン〟を、悪趣味とする青年の冒険を描く。
私の知る限り、『時計じかけのオレンジ』は史上最高の映画のひとつである。この「芸術作品」によって、スタンリー・キューブリックは、映画をミケランジェロの芸術のレベルにまで高めた。
ポルノと芸術の境界で、映画の評価を妨げたり複雑にしたりするのは、いわゆる「性的描写」である。
この点、『時計じかけのオレンジ』は、『愛のコリーダ』とは異なり、一見して著しく性的に露骨であるようには見えない。
しかし、ハイパーセクシャルで煽情的なイメージの連合体であるにもかかわらず、脚本、メイクアップ、ベートーベンの音楽、インテリアや調度品、未来的な家具、プロダクションデザインの完璧さによって、映画そのものはエレガントに見える。そしてそれは、撮影スタッフ全員のテクニックと想像力によって完璧に造形されている。これは、ズームアウトや過激な撮影技術にも起因している。
『時計じかけのオレンジ』は、ポルノ的であり芸術的でもあるが、決して下品ではない。
それにもかかわらず、チャールズ・チャップリンやジャン=リュック・ゴダールの作品と比較すると、この映画は著しく過小評価されているように思える。
しかも、映画は出演者の名演技なくして名作とは言えないにもかかわらず、この映画には「泣き虫」や「感傷的な出演者」がほとんどいない。
これは、「映画は監督のもの」という固定観念を作り出したキューブリックの完璧な自己防衛である。
ため息が出るほど鮮やかで美しく、時に暴力的で、時に狂気に満ちたこの136分の映画は、まるで写真展に足を踏み入れたような気分になる。
キューブリックの優れた写真センスを視覚的に示すものである。すべてのシーン、すべての静止画が、A級写真の集合体である。このような映画は他にない。
未だ時代が追い付いていない
久々の鑑賞ですが今観ても強烈な作品で、未だ時代が追い付いていない印象さえします。
とにかく異様。
この作品を見て「第九」と「雨に唄えば」の印象が裏返りました。
アレックス役マルコムマクダウェルの突き刺すような眼力と溢れる狂気。
デボチカなどの、耳にへばりつく不穏なナッドサット言葉。
視覚を刺激してくる、衣装に色彩にデザイン達。
終始胸くそ悪い展開なのですが、どうしても目が離せない不思議。
そして社会や人々に突きつけた、人間の根元にある消えることのない暴。
名作というには違和感がある、でも映画史では外すことの出来ない作品でしょう。
キューブリックはとんでもない怪物を産み出してしまったのでしょうね。
いやぁな気持ちになれます
見終わった最初の感想は、
なんでこれ名作なの?
でしたが、よくよく思えば映画としては素晴らしいのです。
ただ、いかんせんストーリーがわたしにとっては胸糞悪い…。
この胸糞悪さをアーティスティックに作品として表現しているのが素晴らしい作品なのだと思います。たぶん。
部屋とか衣装はおしゃれだけど、描写が見るに堪えない サイコパス
始めっから、気分が悪くなる映像です。
レイプのシーンや性描写ばっかりで、そういうような描写に触れたくない人は絶対に見ない方がいい!
そして、もちろん子どもは見てはダメだし、青年や若者は思考に影響を与える可能性があるので、みない方が良いと思います。上映禁止になった理由もよくわかります。
私も大人ですし、一線を置いて一つの作品として鑑賞できるくらい客観的に見れるようであれば良いのかも知れませんが、また私の脳みそに余計な画像がインプットされてしまったという気持ちがあります。
暴力が面白いとか言っている人は本当にやばいと思う。
ただ、スタンリーキューブリックの作品は、とにかくサイケでおしゃれ。
非日常の雰囲気を漂わせて、精神世界の話しのような感じにさせますよね。
あと、重厚感のあるBGMもキューブリックだなって思いますし、一つ一つの描写に妥協がないというのが素晴らしいなと思います。
そこが評価が高いポイントかも知れません。
50年も前の作品なのに、全然色褪せないし、斬新で新しいです。
評価が高い作品なので、頑張ってみました。
あんまり繰り返し見ると、精神病になってしまいそうです。
そこまで影響力のある映画だと思います。
精神力が落ちている時や、疲れている時はみない方が良いと思います。
映画に引きずられて病になってしまうと思います。
衝撃
上映が始まって15分で劇場を出ようかと思うほど、嫌悪感を感じました。
とにかく観ていて怖い。恐ろしい。自分の頭がおかしくなりそう。
でも不思議なんです。
見終わってしばらくすると、そんなに悪い映画じゃないような気がする。
なんといっても、オシャレ。主人公の持ち物、ファッション、部屋のインテリア、ドラッグカフェや押し入った屋敷の中のアート感、とても素敵!
おまけに、最後はちゃんと制裁を受けていた!めでたし、めでたし。
この作品を上映するにあたって、規制をかけた国もあったことは納得できます。若者には刺激が強いかも。
今から50年前の作品とは思えない斬新さ。鬼才スタンリー・キューブリックの代表作です。
これまた解釈が難しい。
まさにキューブリック作品で解釈の難しい映画だけど、その雰囲気だけでも楽しめる良作。ところどころ挟まれるナッドサット言葉が妙に癖になり、中盤からは理解できるのがまた不思議。
欲望に忠実すぎる主人公たちに共感はできないが、二転三転するアレックスの人生模様が面白かった。
人間の持つ欲望に兎に角忠実なアレックスは友人の中でもリーダーでいたがり、徐々に亀裂が膨らみ、ある夜強盗に入る家で裏切られ、警察に捕らえられる。それまでの行いから当然なのだが、そこからのアレックスは少し可哀想。好きだった音楽すらトラウマになるほど過激な治療を受け、暴力などに吐き気を催すなど、強制的に非行に走れない身体にされる。しかしそれを利用した反政府の圧があり、結局は欲望に忠実なアレックスに逆戻りというバッドエンド。原作はハッピーエンドらしく、そっちも見てみたくなった。
人によって感性は異なるとしても人生最高の一本にはなり得ないし、オススメしづらい映画だが、映画好きなら一度は見ておきたい作品だし、好きな作品の1つにならなり得る、そんな映画。
ヒューマニズムの偽善批判と英国病理への風刺
この映画でキューブリックは二つのことを描いている。
一つは世界を覆うヒューマニズムはウソで、人間は他者に対する攻撃本能があり、バイオレンスは快楽である、ということ。
二つ目は、揺り籠から墓場まで個人の生活に介入し、英国病をもたらした英国福祉政策に対する風刺である。
1)ヒューマニズムのウソについて
一つ目のヒューマニズムのウソという点は、社会のタブーに挑むキューブリックの面目躍如たるところ。
主人公たちが悪ガキグループや安穏に暮らす人々を襲い、破壊し殴り蹴り斬りつけレイプするシーンは、人間にとって暴力がいかに快感かを、これでもかと言わんばかりに観客に見せつけた。
対立する悪ガキグループのリーダーは、主人公からの悪口雑言をニヤニヤ聞き、嬉しそうに飛び出しナイフを取り出して、グループ全員が闘いに突入していく。
今ならヘビメタコンサート会場で、聴衆が喜び勇んでモッシュ(押しくら饅頭)に突入するするさまに似ている。
バイオレンス映画といえばペキンパー監督作品がその代名詞であり、すでにこの頃、「ワイルド・バンチ」などが公開されている。
しかし、そこには暴力は人間にとって快楽であるという自覚的な思想は伺えず、そのような自覚的、思想的「バイオレンス映画」は、この作品から誕生したのだと思われる。
2)英国の社会国家政策の愚かさについて
次に、こうしたバイオレンス男を英国社会は、どのように扱うか。
英国の社会国家政策は「揺り籠から墓場まで」と揶揄されたように、個人の生活に過度に関与し、その財源を国民、企業から重い税負担で徴収したことから景気が低迷。そのさまが英国病と呼ばれたことは有名である。
重い税負担については、ビートルズの「タックスマン」やキンクス「サニーアフタヌーン」などが批判や揶揄をこめて歌っている。
本作の後半は、「揺り籠から墓場まで」への風刺と言え、犯罪者の教育、矯正、果ては人格改造にまで乗り出す、個人への国家の過度な関与への風刺となっている。
多数の専門家と物量と時間で、主人公はバイオレンス男から、見事に暴力のぼの字さえ恐れる哀れな少年に変身してしまう。
しかし、それは逆に本人に対する暴力を呼び込み、その果てに自殺にまで至らせる。
そのドタバタが終わった時、人格改造の呪いが解けると、何が現れるのか…もとのバイオレンス男である。
こんなバカな個人への干渉をやるのは愚の骨頂だ。何故なら暴力は本能なんだから…というのがラストシーンの意味だろう。
3)評価
社会のタブーに対するキューブリックのバイオレンスが、全面的に解放された見事な映画だ。
さらに英国的形式主義を揶揄したシーンもたっぷり盛り込まれ、例えば主人公が刑務所に収監されるとき、白線の前に踏み出さないよう脅されるところなど、「ああ、英国病だなw」と感じる。
自業自得
スタイリッシュでセンスも良いが、何か物足りない作品。
正直、政治の道具で終わって欲しくなかったな。
洗脳や暗示が解けて盛大な復讐が始まるかと思ったが、そういうのは特に無し。
完璧に治った?
オチとしてそれはちょっと、、、。
それはともかく、時代を考えると母親のファッションセンスが先取りし過ぎ感あるかな。
約50年前の映画なのにハイセンスな作品。
ブルーレイの字幕で観賞したが
もう少し翻訳を頑張って欲しかったかな。
下線部のカタカナはパッと見で理解するにはちょっと難しい。
【暴力思想矯正映画かと思いきや、非人道的行為の数々を最後には許容してしまう、極北のエロティック&シニカル映画。ホラー映画と言っても、良いのではないかと思う作品である。】
ー 誰でも知っている、この映画で、キーとして使われる「雨に唄えば」と「第九」。大昔にこの映画を観てから、「雨に唄えば」のメロディを聞くと、あの、作家の奥さんのレイプシーンを思い出すようになってしまった・・。ー
◆感想<初見時に、強烈に記憶に残っているシーン&内容に触れています。>
・アレックス達4人の悪童どころではない、暴力思想に支配された青年達”ドルーグ”がホームレスを棍棒で叩きのめした後に、作家夫婦の瀟洒な家に、”嘘を付いて入り込み”作家夫婦に「雨に唄えば」を歌いながら、悪逆非道の振舞いをするシーン。
奥さんの身体にフィットした赤い服を鋏で切り取り、夫を棍棒で殴りつける。
トンデモナイシーンが冒頭から続くが、瀟洒な作家の家の、白を基調にしたインテリアと、エロティック&バイオレンスシーンは、強烈である。
更に、彼らは翌日、再びある瀟洒な一軒家に忍び込み、白いペニス上のオブジェを老婦人に叩きつける。
ー 悪趣味な美術品と、アレックス達の悪逆非道振りが、妙にマッチして、独特の世界観を作り出している。ー
・アレックスのみが、逮捕され、”ルドヴィコ療法”を受けるシーン。眼を構成的に開かされ、定期的に目薬を差されながら、只管に残虐描写を見せられるシーン。
ー 大音量で流れる、アレックスの好きなベートーヴェンの「第九」。故に彼は、暴力シーンや、「第九」を聞くと、吐き気を覚えるようになるのだが、彼から本当に暴力思想が無くなったのであろうか・・。ー
・出所し、且つて暴力を振るったホームレスに会ったり、”ドルーグ”の仲間二人が、警官になっていて・・。
酷い暴力を受けたアレックスが逃げ込んだ家。そこは、且つて悪逆非道を働いた作家の家だった。車いす生活の作家(妻は、死亡している)からのベートーヴェンの「第九」による強烈な復讐。
ー この時点までは、アレックスへの因果応報映画として観ていた。だが・・。ー
・病院に収容されたアレックスは、一夜にして政府の”ルドヴィコ療法”の犠牲者として、祭り上げられ、大臣が詫びに来て、記者たちが多数訪れ、フラッシュを浴びせる中、大きなスピーカーが二つ持ち込まれ、大音量で流れるベートーヴェンの「第九」。
ー だが、アレックスは、「第九」に拒絶感も示さず、且つての悪逆な眼に戻り、大臣と肩を組んで、写真に写るのであった。そして、セックスシーン・・。ー
<スタンリー・キューブリック監督の
”人間の悪性は、簡単には変わらない”
と言う思想と、独特の美術が印象的な、エロティック&バイオレンスが横溢する、今から半世紀前の映画とは思えない、強烈なインパクトを持った作品である。>
吐き気を覚える胸糞
何度見ても、その良さは分からず。
暴力、性衝動、それらの描写が、
良くも悪くも気持ち悪い。
強烈な胸糞映画だからこそ、影響力のある作品。
監督の訴えたかったことは何なのか分からんけど、家族を危険に晒すくらい暴力性をかきたてる作品作りに成功したのだから、やりたかったことはできてるんじゃない?
アイズワイドシャットでも同じ様な胸糞を感じたから、やっぱこの人、反省してないんだよね。
主人公と一緒。
やべーのをみた
面白かった〜!!
何も前知識ないまま雨に唄えばの後にこれをみました。
くっそわろ
2021/03/04
見返しました。
ああ、この時はこうだったんだ
そうだね、と思いつつ見返したら見返したらで新たな発見があって面白かった
狂喜ではあるが
犯罪者をどうやって減らせるのか。罰則を厳しくすればいいの?
罪を犯した人を更生させるには?
前半は犯罪のオンパレード。どうなる事かと思ったが、創り手の思いがわかってきて、見入りました。
R指定はいくつだろうか、かなり高めですよね。
暴力と官能に満ち悪が元気で栄える世界
1回目見た時は何が主題なのかさっぱり分からなかったが、2回見てようやく解った様な気がした。ただ、見誤ってる可能性もなきにしもあらずだが。
老作家は神的なものを象徴するかの様に赤ワインを主人公に熱心に勧める。その結果、自殺衝動に駆られ死にかけたものの、最終的には、主人公アレックスは良い子からまた悪に舞い戻る。あれだけ酷いことを老作家や金持ち老婦人等にしたにもかかわらず。アレックスを嵌めた連中も警官になっていて更生したアレックスに暴行を加える。ラストではアレックスはずるい政治家と組み生活を保証され、善なはずの老作家の方が処分されたらしい。近未来らしいこの世界では、神が不在であり、どうやらこれが主題の一つであるらしい。
ただ、神の存在は無くても、ベートーヴェンの芸術、暴力と官能に満ちたその音楽は素晴らしく、政治家もアレックスもかつての仲間達、復讐する老人も活力に溢れ、輝いている様にも見える。暴力にエロは、清く正しく教条的なものより芸術的で、圧倒的に魅力もあり、神の不在こそが、そういったヒトを惹きつける芸術性を創り出す。キューブリックの挑戦的なメッセージを聞いた気がした。
記憶には残る、それが傑作と言う事なのか?
シャイニングに続き、未鑑賞の過去の有名映画。
若者特有の特殊な造語、暴力、セックス、サイケデリックな美術や衣装、時代を特定させない前衛的かつ退廃的な不思議な世界観。
音楽を印象的に使用し、ミュージカルのようなオペラのような雰囲気を醸し出しす、エキセントリックな前半。
いつの世にも存在するだろう若者の無軌道な暴走犯罪。胸糞悪くなる。
非人道的な矯正治療後に世に放たれた主人公の扱いには、因果応報、同情の余地無し。
当然の報いだ、と胸がすく。
凶悪犯罪者の更生の割合はどれだけなのか知らないが、被害者とその関係者にしてみたら非人道的とは全く思わないのでは?
作家が、主人公が呑気に唄う「singing the rain」で、妻を死に追いやった犯人に結び付いた時の狂わしい程の感情は、ローアングル演出も相まって、観ているコチラまで伝わってきました。
非人道的な扱いを受けた主人公は、結果的に政府の保身の為に厚遇を受けるという、皮肉なラストと解釈しましたが、何とも胸糞悪い。
好きか嫌いかは別として、記憶には残る。
それが傑作と言う事なのか?
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