「これがそこまでの傑作なの?と正直な印象。」天国の日々 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
これがそこまでの傑作なの?と正直な印象。
入館時に特典としてもらったフライヤーには、「あまりにも美しく、情感あふれる永遠の名作」とのキャッチフレーズ。岩井俊二が「最初から最後まで隅々まで愛してやまない」とコメントしているし。
でもそーかー?これがそんなに傑作なのか?
確かにカメラは美しい。特に冒頭30分、列車の屋根から麦の収穫にかけてのシーン群はショットとしても凝りに凝っていて確かに非凡だと思う。そして情感溢れる、ってとこについても、まあ最初から最後まで作品のトーンとしてはエモーショナルであるってことは確かだ。
でも悪口としては自分でも常套句だとは思うけど、人間が描けていないんですね。
全般にセリフは少なく、説明的でないことはいいんだけど、リチャード・ギア演ずるビル、サム・シェパード演ずるチャック、ブルック・アダムス演ずるアビー、この主役3人の苦しみ、喜び、葛藤といったあたりが突っ込んて表現できていない。これは役者のせいではなく、演出のせいだと思う。タメがなくショットがブツギレなんですね。つまり演技がはじまる前にカットしちゃっている。ビルの妹のリンダなんてほとんど芝居をする機会を与えられていない。三角関係を見守る視点者として重要な役割だと思うんだけどね。映画の最後、ビルもチャックも死んでしまったあと、寄宿舎のある学校にリンダが預けられ、そこを脱走するエピソードがくっつくのだけど、全く無意味。そんなもの撮るのならばもっと前からリンダの出番を増やしておけよと思うのです。
結論的にいうと、この作品は、下手な演出の三角関係のドラマに、分不相応なカメラと音楽がくっついた体です。「バッドランド」に引き続いてこの再上映によってテレンス・マリック神話は崩れたと私は思うけどね。
カット割りについて、まったく同じ印象を持ちました。
恐らくマジックアワーでの撮影に拘ったことで、細切れになったんじゃないかなぁ、と邪推します。
妹は監督の視点、あるいは観客の窓になるべき立ち位置なのに、半端でしたね。