劇場公開日:1962年1月1日
解説
名作「用心棒」の続編ともいえる作品で、前作では桑畑を名乗った三十郎が椿三十郎として活躍。キャラクターとしてはより人間味が増し、ユーモアと知略を駆使し、上役の不正を暴こうと立ち上がった9人の若侍をその凄腕で助けていく。加山雄三をはじめとした血気にはやる若侍たちをうまく制御し、敵方の用心棒仲代達矢と知恵比べをしつつ、有名なラストの決闘シーンへと物語は導かれていく。
1962年製作/96分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1962年1月1日
劇場公開日:1962年1月1日
名作「用心棒」の続編ともいえる作品で、前作では桑畑を名乗った三十郎が椿三十郎として活躍。キャラクターとしてはより人間味が増し、ユーモアと知略を駆使し、上役の不正を暴こうと立ち上がった9人の若侍をその凄腕で助けていく。加山雄三をはじめとした血気にはやる若侍たちをうまく制御し、敵方の用心棒仲代達矢と知恵比べをしつつ、有名なラストの決闘シーンへと物語は導かれていく。
1962年製作/96分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1962年1月1日
岡田准一の殺陣は史上最速!? 「散り椿」木村大作監督が絶賛「三船敏郎を上回る」
2018年8月27日「午前十時の映画祭9」上映作品決定 「タイタニック」「トップガン」「地獄の黙示録」など27本
2018年3月6日織田裕二主演「椿三十郎」会見で、角川春樹氏が興収60億円宣言!
2007年11月26日ある藩で、上役の不正をただそうと立ち上がった9人の若侍が、悪者たちの策略にはまるところを、偶然知り合って聞きつけた浪人が、剣の腕前と持ち前の知略で、彼らに助太刀し、窮地を救う姿を、豪快に描いた痛快時代劇。
黒澤明監督では、「七人の侍」や「用心棒」あたりに比べると、よりストレートで一直線な作品だね。それだけに、ともすると退屈になりかねないストーリーを、ダイナミックかつ、ユーモアにあふれた展開で、十分に楽しませてくれる。
主演の三船敏郎の存在感がすごいし、悪役側の剣豪を演じた仲代達矢も良い。若侍側のリーダー格が、加山雄三。小林桂樹が、滑稽な見張りの侍・木村役で出てくる。田中邦衛など、他の面々にも注目。
正義と悪が互いに騙しあって、なかなかよく練られた駆け引きと、スリリングな展開で、最後まで魅せてくれる。その一方で、ちょっと間の抜けた、ユーモラスな登場人物が出てきたりして、ほっこりさせられる。
浪人は、権力争いに疎く、お坊ちゃん育ちな若者たちを、機転を利かせて救いながら、最後の対決まで、人間味あふれるその姿を、一気に見せてくれる。これは痛快なアクション時代劇として、最高レベルの傑作だ。
感想
2024.11改編
山本周五郎原作の「日々平安」からキャラクターを全く新しく入れ替えた形で菊島隆三、小國英雄と黒澤自身が脚本を書き上げ、定石の三船、当時東宝の一推し新人加山をフィーチャーしたベテラン人気俳優と新人スター夢の共演であり、一大娯楽作品に仕上がっている。三船の貫禄が映えるまさに抜き身のままの剣捌きと狼の様な殺陣、睦田夫人との掛合いに代表されるユーモラス且つ侍の人柄が滲み出る元々あった獰猛さを借りてきた猫のように抑えてしまう人間心理の会話の妙と活躍に拍手喝采と笑いが溢れる。最後は映画史に残るそれまであった時代劇のシチュエーションを大変革させたと言われる伝説の決闘シーンが展開する。個人的に黒澤時代劇の最高峰と感じ入る作品。生涯ベストスリー作品。
深夜、寺社殿の中で合議を持っている侍達。井坂伊織以下、八名の若き侍達は自藩の藩主出府中に次席家老と国許用人の汚職が発覚した事を井坂の伯父で城代家老を務める睦田弥兵衛に意見書を付け上申したことを話し合っていた。
井坂は他の侍達に語りかける。
井坂「兎に角伯父は判っていない。」
「(睦田)これでもわしは城代家老だ。お前たち
に言われなくともそんな事は既に判っている。」
「それでは汚職を知りながら何故今日まで見逃
してしまったのだ?と訊ねると」
「(睦田はニヤニヤ笑って)おい。俺がその汚職
の黒幕かも知れないぞ。お前たちはこの俺を薄
鈍のお人好と思い案山子代りに担ぎ出すつもり
らしいが、人は御影に拠らないよ。危ない。
危ない。第一、いちばん悪い奴はとんでもない
所にいる。危ない、危ない。」
そう言うと意見書をビリビリと破り捨ててしまった
という。
井坂の話は続く。
井坂「俺は伯父にははっきり見切りを付け、打合せ
の通り、話を大目付の菊井さんの処に持ち込ん
だ。菊井さんはやっぱり話が解る。初めのうち
は困った顔をして御城代とお話の上でと逃げを
打っていたが、城代にもこの話をしたと言うと
吃驚して、暫く考え込んでいたが、よろしい。
この際若い貴方たちと立ちましょう。次は一遍
貴方達と話し合いたい。早急に仲間を集めてほ
しい。」
井坂の話に喜ぶ侍達。
「やはり菊井さんはすごい。」「薄鈍の案山子代
りとは話が違う。」
と談笑していると、奥の間から呆れた感の大欠伸が聞こえる。侍達は急に立ち上がり、奥の暗闇に一同目を向ける。中から浪人、三十郎が現れる。
「おめえ達の話を聞いていると、まったく。」
守島「何!話を聞いていた?!」
と、次の瞬間、刀に手を掛け抜刀しようとする。
「馬鹿野郎。逃げるつもりなら最初から出てくる
つもりはないわ。」
井坂「しかし、お前なんだってこんなところに?」
「此処だと旅籠賃は取られねえからな。ところで
おい!盗み聴きって言うのはいいものだぜ。傍目
八目、話している奴より話がよく解る。」
躙り寄る九人の侍達。
「まぁ聞きな。俺に言わせりゃ城代家老が本物でそ
の大目付の菊井って奴は眉唾だぜ。」
保川「無礼を申すと唯では置かぬぞ!」
「まぁ、そうとんがるな。俺は其奴ら二人の面を
知らねえ。知らねえから見かけで惑わされる心配
がねえ。なぁ。城代はつまらない顔してんだろ。」と、侍達を見廻す三十郎。
「そうらしいな。しかしな、話から察すると城代は
中々の魂だぜ。手前が馬鹿だと思われているのを気
にしないだけでも大物だ!ところで大目付の菊井だ
か、お前たちはやっぱり話せるやっぱり本物だなん
て言う処を見ると、此奴はまず御影分には申し分は
ねえらしいな。しかし人は御影に依らねえよ。危ね
え、危ねえだぜ!」
保川「黙れっ!素浪人の分際で何を言う!」
「待ちな。それは城代の台詞だぜ。いいか。城代は
もっとはっきりと言っている。一番危ない奴はと
んでもない処にいる。危ねえ、危ねえ。早い話が
よ。大目付の菊井が黒幕かも知れねえぜ。」
侍達「ふざけるな!」
「熱くならねえで聞きな。大目付の役目はなんだ。
は?ゴタゴタを収めるのが役目じやねえか。それ
をよ、お前達を焚き付けやがって。変だと思わね
えのか!」
三十郎の話を聞き届け渋々座り出す侍達。
「それから、お前達と至急話し合いたいから集まれ
というのもおかしい。黒幕だったら集めといて一網
打尽と来らぁ。兎に角この話は乗らないで様子をみ
ておくんだな。」
井坂「大目付と今宵此処で会うと約束したのです」
「なぁぬにい?」
咄嗟に社殿の四方の節穴隙間から外を見る三十郎。
「傍目八目、ずばりだ。見てみな。」
外には大人数の武装した集団が音を立てずに近寄っ
てのが判る。
「ハハハ。見事に取り巻きやがった。蟻の這い出る
隙間もねーや。」
臨戦態勢をとる九人の侍。
「この上まだ馬鹿な真似をしたいのか!刀をしまい
な。戦をやってる場合じゃないぜ。」
関口「五月蝿い。お前の指図は受けん!」
「じゃあ、勝手にしろ。皆くたばってせいぜい菊井
を喜ばせるこったぁ。」
井坂「しかし、こう取り巻かれては、、、」
「まっ。俺に任しな。」
寺社殿の正面に近づく多くの武装した侍の大集団。集団を率いる人物が
「大目付菊井殿の手の者だ、神妙にしろ。表は固め
ておる。手向かうと為にならぬぞ。」
中から一人出てくる三十郎。「五月蝿いな!なんだ!」様子を確認しようと傾れ込む侍達。
「やいやい。いい加減にしろ。人の寝所に土足で踏
み込む奴がいるか!」
と罵声を浴びせ腕っ節強く一気に三人ずつを交互に瞬時に倒し蹴散らす三十郎。瞬く間に十人程が階下に蹴散らされ押し出される。
「面白え。やる気か。だが気を付けな。俺は寝入り
端を起こされて機嫌が悪いんだ!」
と言った途端二、三人の脇に鞘を差し込み叩き付けて次から次へと薙倒していく。外に出ても勢いは収まらず大太刀廻りを繰り返しあっという間に二十人以上を倒す三十郎。そこへ、
室戸「引け。引けい。手立ては他にある道草を食っ
ている場合ではない。」
と、太刀廻りを制止する一人の侍の声。三十郎を睨みながら近づいて来る。
室戸「それにこの男を片付けるためには大分手間が
掛かるぞ。貴公、なかなか出来るな。仕官の
望あるなら大目付の役宅に俺を訪ねてこい!
俺の名は室戸半兵衛。」
と名乗り翻し去って行くと他の侍達も追随しその場を去っていった。
「もういいぜ。出て来な。」
床板を捲り出でてくる九人の若侍。
三十郎に丁寧にお辞儀をする九人の若侍達。
井坂「何と礼を言って良いか、、、」 間髪入れず、
「礼なんかいらねから少し金をくれないか。」
この一言に驚く若侍達。
「このところほとんど水腹でな。なぁーに一杯飲っ
て飯が食えればいい。」
井坂が自分の財布を怪訝に差し出す。三十郎は必要分の銭だけを取り、
「これだけもらうぜ。じゃあ、あばよ。」
とその場を去ろうとする。それを最敬礼で見送る九人の侍達。その一礼をあらためて見つめる三十郎。
「しかしお前達これからどうする気だ?」
井坂「貴方の話で目が覚めました。早速城代家老
の伯父の処に戻り、不義を詫びその指図に従う
つもりです」
「なかなか聞き分けが良いな。いい子だ。」と子供扱
の三十郎。
「待てよ。いけねえ。こうなるとその城代家老が危
ないぞ。俺がもし菊井なら城代を捕まえるね。
一番悪い奴はとんでもない処に居るなんて図星刺さ
れちゃ放って置けねえ。」
急ぎ立ち上がり去ろうとする井坂と侍達。
「何処に行くんだ。」
井坂「伯父の家に。」
「捕まりに行くのか。お前は正体が暴露ている。
うっかり面みせたらそれっきりだぞ」
井坂「しかしみんな私から、私の間抜けでこんな事に。」
寺田「お前だけの責任ではない。ひとりの勝手な
行動は許さん」
守島「こうなったら死ぬも生きるも我々九人。」
「十人だ!手前らのやる事は危なっかしくて見ちゃ
いられねぇ!」
こうして三十郎を含めた十人の侍達が睦田邸を密かに訪ねると三十郎の言う通り、菊井の手の者により睦田弥兵衛は拉致され別場所に匿われている事がわかる。最初に居場所が判明した睦田夫人(奥方)と許嫁の千鳥を助け出し、弥兵衛拘束の口上を確認、城代家老に罪をなすり付け、詰め腹を切らす算段である事が判明。城代を無事救出すれば、悪事は白日の元にさらされ、城代の名誉は回復すると確信。汚職の黒幕の一味である次席家老黒藤邸の隣に屋敷を構える九人の侍の一人、寺田文治の邸宅を避難場所とし活動を開始する。
黒藤、菊井ら汚職一味は大目付の役職を利用して城代家老不穏の嘘の高札を立て、各方面に囮を出して井坂達の捕縛を狙うが、罠である事が井坂達に判ることになり危く難を逃れる。
藩の世論は菊井達に傾き、策が尽き掛けた時に三十郎は菊井邸に行ってくると言い残して九人の前から居なくなる。残された九人は三十郎を信じる者疑う者に其々別れる。寺田の提案により、公平を期するため信疑者其々二人に任せて三十郎の後を追う。
菊井邸の室戸半兵衛を訪ねた三十郎は室戸の藩乗っ取りの野望を聞かされる。室戸は菊井に三十郎を引き合わせようとして黒藤邸に出かける。その時、三十郎を追ってきた井坂達に遭遇。三十郎の計画は崩れ、四人は捕縛される。四人助け出すために室戸が不在の時に屋敷に残る手勢を全員切り倒す。
室戸が黒藤邸から帰ってきた時に捕縛されたまま残された三十郎を発見する。室戸には菊井に推挙は出来ないと言われその場を去る。
ある日寺田邸の庭で千鳥が黒藤邸から流れてきたと思われる、かつて井坂達が睦田に渡した意見書の紙片を発見する。それは黒藤邸の蔵に監禁されている睦田が隙を見て破った紙片を小川に流したものであった。
三十郎は自ら黒藤邸に乗り込み、自身が街外れにある光明寺の山門で寝ていると多勢で黒藤邸に乗り込む侍達を見たと嘘を吹聴し、応戦の為黒藤の軍勢が光明寺に向かっている間に囚われの睦田を救出する策を考え実行する。九人の黒藤邸への斬込み救出の合図は椿御殿と呼ばれる程に咲いている庭の椿を寺田邸に繋がる小川へ流す事とする。
三十郎は大目付菊井、国許竹林、次席家老黒藤そして室戸が揃う黒藤邸へ。室戸に光明寺の山門の話を伝えた。その頃寺田邸では捕虜の立場にある木村が光明寺には山門が無い事に気づく。三十郎の報を信じた菊井は光明寺へ自ら軍勢と共に向う。
同じ頃竹林も光明寺には山門が無い事を気づき嘘である事が明るみになる。室戸は庭に三十郎を縛り付け、光明寺へ。三十郎は黒藤達にカマをかけ、合図の椿を川に流す事に成功。寺田邸より井坂達が乱入する。菊井、室戸が大軍勢と黒藤邸に戻った時は蔵の中に黒藤と竹林が押し込められ、睦田と三十郎は立ち去っていた。室戸は菊井に「これまでですな。」と声を掛けその場を立ち去る。
睦田は解放後、職務に復帰して今回の事件の処断を行う。黒藤、高井は家名断絶、お家追放となった。菊井は自ら切腹し果てた。室戸は浪人となったが同じく藩を飛び出してきた三十郎と街外れで再び出会い室戸の申し出から果し合いとなる。
そこに三十郎を追ってきた井坂達九人の侍の眼の前で室戸が切られた瞬間!大量の血を吹き出し倒れる室戸とその返り血を浴びた三十郎を目撃する。驚愕し立ち尽くす九人。
三十郎は井坂達に
「気を付けろ。俺は機嫌がわるいんだ。」
そして室戸の遺骸を見つめて、
「此奴は俺にそっくりだ。抜き身だ。此奴も俺も鞘
に入ってない刀だ。あの奥方が言った通り本当に良
い刀は鞘に入っている。おい!お前達も大人しく鞘
に入ってろよ。」
そう言い残し三十郎は去って行く。
追う井坂達。「来るな!追いて来たら叩き斬るぞ!」
土下座し御礼をして見送る井坂達。その姿を見て
一言。「あばよ!」
何処かへ立ち去る三十郎。
⭐️5
黒澤明の作品はまだ数作品しか観ていませんが、他の作品同様とにかくキャラクターの作り方が素晴らしいです。この人はこういう性格で、この人はこういう立ち位置で…という人間関係が非常に分かりやすい上に、それがストーリーに見事にハマる。役者の名演もあって非常に見応えのある作品となっています。
ところどころ挟み込まれるユーモアに富んだ笑えるシーンが面白い!三船敏郎があの渋い顔でお茶目なセリフや演技(やり過ぎず、本当に自然にさりげなく)を観せてくれます。若侍達とのやり取りは時にコントのようなおかしさがありますが、それでいて決して緊張感を崩すことはなく、このバランス感覚が素晴らしいです。
なんと言ってもラストシーン!度肝抜かれます。日本映画史に残る名シーンですね。しかし、後に物議を醸したこのシーン。黒澤明のその後の作品にも影響を及ぼすほどのものだったとか。私は「映画なんだから、このくらいド派手に、大袈裟なくらいの方が…」と思うのですが、だめなん?(・ิω・ิ)
分かりやすいストーリー、個性豊かなキャラクター達、随所に散りばめられたユーモアセンス溢れる演出、圧巻のラストシーン。これぞエンターテイメント映画!
椿三十郎
2007年椿三十郎(1962)
1962年用心棒
1961年