インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 : インタビュー
娯楽作から社会派映画まで、数多くの作品を手がけてきたスティーブン・スピルバーグだが、シリーズを一貫して4作品も自らメガホンを握ったのは「インディ・ジョーンズ」だけ。そんな本作にかけた思いを、スピルバーグ本人に聞いた。(取材・文:立田敦子)
スティーブン・スピルバーグ監督インタビュー
「誰も『A.I.』や『フック』の続編のことなんて聞かないんだ(笑)」
シリーズ第4作目となる「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」を完成させたスティーブン・スピルバーグ。19年ぶりにプロデューサーで友人でもあるジョージ・ルーカス、主演ハリソン・フォードというハリウッドのゴールデン・チームが結集した。
「僕としては、3作で終わるつもりでいたんだ。でも、何年もの間、ジョージやハリソンや僕は、続編はいつつくられるのか、という質問を受け続けてきた。ジョージやハリソンでさえ、いつ復活するのか、なんて聞いてきた。そんなことをいわれる映画は、僕の作品では『E.T.』と『インディ・ジョーンズ』シリーズだけだよ。誰も、『A.I.』や『フック』の続編のことなんて聞かないんだ(笑)。だから、観客がこの続編を実現させともいえるね」
シリーズものといえど、新作では新しさが要求させる。何を受け継ぎ、なにを刷新するかは、人気シリーズだけに、完成度や観客の満足度に大きくかかわる問題である。
「これまでの『インディ・ジョーンズ』シリーズでは、どれも悪役がいてインディが求める魔法の超自然的な存在があった。情熱とアクションとアドベンチャー。今回も同様のことをしたかったんだ。クリスタル・スカルのパワーが存在するのと同時に、これまでの作品と似たトーンは残してあるよ。まったく新しい作品ではなく、これは前作を受け継いだ作品だ」
が、インディが休息している約20年の間に、映画技術が発達し、ハリウッド大作におけるアクションや特撮などの質も変化した。
「テクノロジーの進歩により、よりリアルな映画づくりが可能になったことは確かだ。これまでの3作では、まったくリアルに見えないシーンも正直いってあった。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』では、本当にネパールで撮影したワケじゃなくて、アーティストが背景画を描いただけだったし。あの頃は、本物らしく見せるようなデジタル技術がなかったんだ。今回は、実際にロケしていないところでも、本物と区別がつかないようになっているよ。それに、これまでにはないサプライズもある。それが何かはいえないけど! ただ、『インディ・ジョーンズ』のシリーズでは、あえて昔ながらのアクション・アドベンチャーのスタイルにこだわった。最近では、『ボーン・アイデンティティー』のように、アクションシーンは、より洗練されたものになってきているけどね。つまり、この映画では、シーンが変わっても、どこで何が起きているかがわかり、観客がともに旅をすることができるんだ」
第4作目の舞台は、1957年。米国とソ連の冷戦時代を背景にしている。現実と同様に、「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」から19年経っているという設定だ。
「インディ・ジョーンズも歳をとるし、彼を演じている俳優も歳をとる。だから、30年代の設定を踏襲するのでなく、時も前に進めるべきだ思った。それで、50年代の半ば、冷戦真っただ中の時代になったんだ。悪役も、旧ソ連時代の悪役だ。その時代、アメリカ映画において、悪役といえばロシア人だった。『007/ロシアより愛をこめて』などのスパイ映画のようにね。この作品も、その伝統を踏襲したんだよ」