パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド : 特集

2007年5月31日更新

来日記者会見レポート(2)

ベテランの余裕を見せたジェフリー・ラッシュ&ビル・ナイ

シリーズに復帰を遂げた ジェフリー・ラッシュ
シリーズに復帰を遂げた ジェフリー・ラッシュ

1作目ではジャックと敵対し死滅したかと思われたが、2作目のラストで劇的な復活を遂げ、ジャックやウィルらと共闘する海賊キャプテン・バルボッサと、2作目から本作に続いて強大な力を見せ付ける深海の亡霊デイヴィ・ジョーンズに扮するのは、それぞれオーストラリアとイギリスが誇る名優ジェフリー・ラッシュ(バルボッサ)とビル・ナイ(デイヴィ・ジョーンズ)。ともに今回が初来日(ジェフリー・ラッシュは、過去にメルボルンからモスクワに向かう飛行機の乗り換えで、成田のホテルに1泊したことはあるそうだが)となった2人だが、偉大な俳優である彼らは常に余裕の表情で、決してでしゃばることもなく、適度におどけてみえて和やかな会場のムードを引っ張った。

ジャック・スパロウの千鳥足を真似て笑いをとったジェフリー・ラッシュは(デップから「それは違うと思うよ」と突っ込まれたが)、バルボッサの復活とともに表舞台に舞い戻ったことに喜んでいた。

「自分が映っているシーンはすべてお気に入りだよ。死んだと思ったのに、また出られたからね。ただ立っているだけでセリフのないシーンでも、すべて好きだ」

復活したバルボッサのキャラクターについては次のように分析。

「今作では海賊版の“G8”ともいえる、海賊の長たちが集合する場面があるから、バルボッサにも少し政治家的な要素をもたせた。バルボッサ自身には立派な理由があって行動しているわけだが、つきつめれば彼も利己的な人間だ。ただ、それは登場キャラクターすべての言えることだと思う。それぞれの利己的な面が出て、お互いに誰も信じられなくなる。そんな中で誰がチェックメイトするか……という状況が生まれるんだよ」

本作で“素顔”を少し見せる ビル・ナイ
本作で“素顔”を少し見せる ビル・ナイ

前作「デッドマンズ・チェスト」から登場したデイヴィ・ジョーンズのイカを模した面構えは、メイクではなくVFXで描かれていて、今年のアカデミー賞では「デッドマンズ・チェスト」が視覚効果賞を受賞した一端を担っているのは間違いない。何時間もかけてメイクをする必要がないと聞けば、演じる側は楽ではないかと思うことなかれ。ビル・ナイには憂鬱な撮影だった!?

「顔中に(表情や筋肉の動きを読み取る)白い点々をつけて撮影するんだよ。最初はそんな格好でセットに入るのがつらかったね(笑)。まあ、みんなにその変な格好を茶化されるのは2~3日で終わったけど、そんな悲しい気持ちでいたとき、同じ白い点々をつけた5~6人の男たちに出会ったんだ。彼らがフライング・ダッチマン号(デイヴィ・ジョーンズが率いる海賊船)の乗組員を演じる人たちだとすぐにわかった。私たちはその場で、何も言わずに互いを抱きしめ合ったんだよ(笑)」

ただ、今作ではデイヴィ・ジョーンズが何故あのような姿になったのかも明かされる。それは過去のデイヴィ・ジョーンズの恋物語にも関連してくるとか。「意外なラブストーリーが用意されていたので、嬉しかったね」

3部作の苦労とシリーズの今後

また、本作にはジャック・スパロウの父親役として、ジョニー・デップがジャックの役作りの参考にしたと公言するキース・リチャーズが出演しているが、監督はキースの撮影シーンの苦労話も含め、この3部作の撮影を振り返った。

「このシリーズは海上のシーンが多いけど、海の上の撮影で大変なのは、潮流や風で常に物が動くこと。でも、地上でキース・リチャーズを撮影したときも、彼はすぐにカメラのフレームからはずれてしまったりして、立ち位置がまったく定まらない。地上にいるのに、まるで海上での撮影のようだったよ(笑)。これだけの大作を3本撮るのは疲れたけど、スタッフは家族のようになれた。『これが最後かもしれない』という思いを抱きながら、最後の一滴まで、みんな目を輝かながら作り上げていったよ」

スタッフ、キャストの皆が本当に楽しそうに作品作りに参加していたことが伺える会見だったが、やはり気になるのはシリーズが本当にこれで終わるのかということだ。「僕たちを守り、あらゆることをやり遂げてくれた」(デップ)、「現場ではカメラを片手に気楽にフラフラしているけど、実は裏でスゴイことをしている。クルーの士気を高める重要な役割を果たしてくれた」(ユンファ)と、キャストからの信頼も厚いプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、4作目について次のようにコメントした。

「とりあえずは、この3作目がシリーズの最終章だ。今はまず、5年半働きづめだった監督に家族と過ごす時間を与えないとね。彼が子供たちから顔を忘れられてしまう前にね(笑)」

ハリウッドきっての稼ぎ手ブラッカイマーが、果たしてこのフランチャイズ・ムービーをこれで終わらせるかどうか。いまだ正式な発表はされないものの、ビジネス的な成功が続けば、シリーズの継続もない話ではないかもしれない。今はまず、「ワールド・エンド」で3部作の締めくくりを楽しんでみよう。

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