マグノリア

トム・クルーズの演じたキャラクターに終始笑わされてそれだけで三時間もった感じ。ハンサムがまじめに馬鹿なことをしゃべるほど面白い絵はないな。冒頭の偶然のエピソードほど本編の物語にすごい偶然性は感じられなかった。
ただ、終盤のオチは知ってたけど、アレがパラパラと降る程度だと想像していたのでまさかの大雨には驚いた。竜巻などにより巻き上げられた魚が空から降ってくる現象はあるけどそれとは比べようもないくらいのまさに奇跡の様な旧約聖書の世界。

先日鑑賞した「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も同じ出エジプト記をモチーフにしてたけど、監督は本作の脚本書いてる時点ではそれに気づいてなくて、劇中のセリフとの偶然の一致で旧約聖書の内容と気づいたそうだ。まさに偶然の物語を製作する上での嬉しい偶然の一致。

本作は長らく見損なっていて、ようやく見れたけどトム・クルーズとラストの土砂降りで全部持ってかれてしまった。すでに多くの人により考察がなされていてもはや解釈の余地はないけど、まあ長丁場の割には退屈せず楽しめた。

トムクルーズは「ワルキューレ」も良かったけれど、「マグノリア」は最高。
本当にいい役者ですね。見た目も演技力も抜群！

人生悲喜交々だから、何かに囚われないように生きよう。
良い日が来ることを信じよう。
何が起きるかは、誰にも予想できないのだから。

公開当時から大好きな作品。Blu-ray化されたら購入しようとずっと待っているが、なかなか実現せず（ベルリンでグランプリ受賞してるのになぜだ！）、テレビ放映も滅多にされず、しばらく観る機会が得られなかったが…とある配信サービスで観れることが分かり、久方ぶりに観ることができたのを機に、これを書いている。

複数の主人公が織り成す群像劇で、3時間超の大長編のドラマだが、緻密なシナリオとスリリングなカメラワーク、見事な編集のおかげで全く退屈する瞬間がない。

主人公の全員がクライマックスに向けてどんどん人生のどん底に追い込まれていくが、各々がそのどん底において自分の身の丈がどれほどのものであるのかに直面することになり、それを受け入れざるをえなくなったことで、かえっていくばくかの開放感を味わうことになるという、マイナスの極点において天地がひっくり返るかのようにプラスへの鮮やかな逆転が生じるわけである。

その逆転の境目に、ある“天変地異”が起こる。公開当時、随分と話題になったし、観ていてギョッとするのは間違いないし、これでなければいけない必然性がよく分からない。私はきっと、物語に区切りをつけるために、突拍子もないものであればなんでも良かったのだろうと勝手に理解しているが、とにかくインパクトが半端ない。あんなものが文字通り土砂降りになるとは誰も思わないだろう。

映画の最後のシーンにカメラ目線で放たれる、涙目の微笑みが、焼き付いて離れない。この瞬間、人間なら誰もが弱さを持っていて、そういう部分も含めて誰かに受け入れて欲しいと思っていること、そうしてもらえることがどれほど喜ばしいことかということを象徴する瞬間だ。この作品が語りたいことがこの一瞬に凝縮されていると私は思う。